金融庁は、今年4月から導入される内部統制報告制度に対して、実務の現場で一部に過度に保守的な対応が行われているという指摘を踏まえ、「内部統制報告制度に関する11の誤解」という説明資料を、2008年3月11日に公表しました。
11の誤解として取り上げられているのは、以下の事項です。金融庁にいわせると、これらはみな誤解だそうです。金融庁が考えるところの正解は金融庁資料をご覧下さい。(こちらのサイトの記事がよくまとまっています。→世間は誤解している~金融庁が日本版SOX法に関する11の誤解を指摘)
1.米国の企業改革法(SOX法)のような制度が導入される。
2.フローチャートの作成など、内部統制のため新たに特別な文書化等を行わなければならない。
3.どんなに小さな業務(プロセス)でも内部統制を整備・評価しなければならない。
4.米国では、中小企業に配慮する動きがあるが、日本では、中小企業も大企業と同様の内部統制の仕組みが必要である。
5.内部統制報告書の評価結果に問題がある場合、上場廃止になったり、罰則の対象となる。
6.内部統制の整備・評価は、監査法人やコンサルティング会社の言うとおりに行わなくてはならない。
7.財務諸表監査に加え、新たに内部統制監査を受けるため、監査コストは倍増する。
8.上場会社と取引すると、非上場会社でも、内部統制を整備・評価しなければならない。
9.内部統制報告制度に対応するためのプロジェクトチームがない場合や専門の担当者がいない場合は、問題(重要な欠陥)である。
10.平成20年4月から内部統制報告制度が適用されるので、もう間に合わない。
11.内部統制の評価のために、期末に予定していたシステム変更や合併等の再編を延期しなければならない。
また、これとあわせて、「内部統制報告制度の円滑な実施に向けた対応」という資料も公表されています。これによると、以下のような対応策をとるとのことです(資料より一部抜粋)。
・「内部統制報告制度Q&A」を追加公表
・日本経団連、日本公認会計士協会、金融庁の間で共同の相談・照会窓口を設置
・(制度導入後)必要に応じ、評価・監査の基準・実施基準の見直しや更なる明確化等を検討
・指導中心の行政対応
内部統制:金融庁が運用例公表 報告制度08年度導入前に
内部統制報告制度に誤解続出… 金融庁、HPに解説 相談窓口も
「・・・金融庁は「SOX法への批判を踏まえて、日本にあわせた制度を設計した」と強調。企業に過度のコスト負担をかけないようリスクが懸念される範囲を経営陣自ら絞り込むことができるようにしたほか、既存記録の活用が可能で、内部統制の欠陥だけでは罰則対象にならないなど、誤解の多い11のポイントを解説している。」
金融庁は、制度導入がうまくいかない、新規上場が減ってしまった、監査報酬が高騰するといったという批判に対して、制度は悪くない、悪いのは間違ったことを指導している監査法人やコンサル会社だという予防線を張っているのでしょうか。それほど負担が大きいのなら、せめて監査だけでも適用を延期してはどうなのでしょうか。「6.内部統制の整備・評価は、監査法人やコンサルティング会社の言うとおりに行わなくてはならない」というのが誤解だとしても、監督当局がわざわざ企業に対して監査法人のいうとおりにしなくてもいいという必要はないのでは・・・。
最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る
『業種別支援の着眼点』(試行版)に係る ご意見等のお伺いについて(介護業・宿泊業追加案)(金融庁)
「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項(VCRHs)」の策定について(金融庁ほか)
「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表(サステナビリティに関する考え方及び取組の開示①)(金融庁)
気候変動リスク産官学連携ネットワーク公開シンポジウム~サステナビリティ情報開示における気候関連データの活用と「リスクと機会」への実践~の開催について(金融庁)
「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(「有価証券報告書等の提出期限の承認の取扱い」)(金融庁)
「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」公表(金融庁)
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事