金融庁の公認会計士・監査審査会の事務局長へのインタビュー記事。審査会には外部から会長や委員を迎えていますが、実質的には金融庁がお膳立てしており、その責任者ということになります。
監査人と監査役の連携について語っています。
「――そもそもこれまで会計監査人と監査役の連携は十分だったのでしょうか。
佐々木氏: 我々はそれは不十分だと言ってきた。審査会の立場から見ると、監査法人は監査役と十分なコミュニケーションを取っていない。監査法人は、監査役に対して会計監査の状況を十分に説明してこなかった可能性がある。一方、金融庁の立場で金融機関の監査役から聞いてみても、コミュニケーションが十分ではないことが分かった。・・・」
監査役とのコミュニケーションが強調されることが多いのですが、少し違和感があります。国際監査基準で「ガバナンスの責任を負う者」という文言になっている箇所を、会計士協会が大胆にも「監査役等」と意訳したのが、実態と合わない面があると思われます。万一の場合に社長のクビを斬れるのは、原則として、取締役会ですから、「ガバナンスの責任を負う者」に取締役会が含まれていないのはおかしいといえます。もちろん、監査役は取締役にない独特の権限をもっているので、重要な役割です。「取締役会+監査役」が日本の会社の「ガバナンスの責任を負う者」でしょう。
たまたま法制度上、監査に関しては、「ガバナンスの責任を負う者」のうち監査役が窓口になっているだけであり、監査人は、本来「取締役会+監査役」とのコミュニケーション、連携を図るべきでしょう。(監査役とのコミュニケーションが不十分だということは、「ガバナンスの責任を負う者」全体とのコミュニケーションも不十分だということになりますが・・・)
「――会計監査人は、監査役のことを信用していない気がします。経営者と監査役が一体だと受け止めている監査人が多い気がします。
佐々木氏: 会計士にとって、企業側のカウンターパート(窓口役)は監査役だ。ただ、実際に監査役がその機能を果たしているのかが問われている。確かに、会計監査人が不信感を持っている事例もあるようだ。・・・」
監査人は、財務情報が集約されて集まってくる経理部門をカウンターパートとしなければ、有効な監査は実施できません。監査役は、監査人が「ガバナンスの責任を負う者」とのコミュニケーションを行う場合の窓口にすぎないと思われます。
監査役との連携から話は変わりますが、審査会では「不良会計士」のブラックリストを作っているそうです。
「――企業不祥事などに出てくる「不良会計士」のリストを作っていると聞いていますが、どんなものでしょうか。
佐々木氏: 公表資料や金融庁の検査等から、問題となる特定の会計士を抽出している。制度としては、5人いれば監査法人をつくれる。設立後に届け出ればいい。処分されるとすぐに解散して別の法人をつくる。こんな中で、共通して出てくる人(会計士)がいる。そういった人たちが、どこの企業を監査しているのか、フォローしている。・・・」
いずれにしても、審査会のお世話にならないようにしたいものです。
(注)現行の監査基準委員会報告書の用語集では、「統治責任者 Those charged with governance」という言葉が載っています。
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