会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について(金融庁)

みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について

金融庁は、2021年9月22日、みずほ銀行とみずほフィナンシャルグループに対して、業務改善命令を発出しました。

このうち、みずほ銀行に対する業務改善命令の内容と、処分理由は以下のとおりです。

業務改善命令の内容

1.当面のシステム更改及び更新等(顧客影響を生ずる機器の更改及び更新並びに保守作業を含む。以下同じ。)の計画について、これまでのシステム障害、システム更改及び更新等を行う必要性及び緊急性並びに銀行業務に及ぼすリスクを踏まえた、再検証及び見直しを行うこと。

2.上記1.により再検証及び見直しを行った上で実行すべきシステム更改及び更新等がある場合には、当該システム更改及び更新等に係る適切な管理態勢(障害発生時の顧客対応に係る態勢を含む。以下同じ。)を確保すること。

3.当面のシステム更改及び更新等の計画について、上記1.に基づく再検証及び見直しの結果並びに上記2.に基づく適切な管理態勢の確保のための計画を10月29日(金)まで(10月末までの計画については、10月6日(水)まで)に提出し、速やかに実行すること。なお、当該計画の変更又は追加等を行った場合には、速やかに追加報告を行うこと。

処分の理由

1.当行は、令和3年2月から9月の間に合計7回のシステム障害を発生させ、個人・法人の利用者に大きな影響を及ぼしている。これを受け、金融庁は検査において、当行及び当社のシステム面及びガバナンス面について全般的な検証を進めている。

2.一方、当行においては、今後、業務継続上必要なシステム更改及び更新等の実施が見込まれており、これらが新たなシステム障害の発生を招くことのないよう、システム更改及び更新等に係る適切な管理態勢を確保する必要があると認められる。

みずほ銀、金融庁がシステム管理(日経)(記事冒頭のみ)

「金融庁は週内にも、ATMなどの障害が多発するみずほフィナンシャルグループとみずほ銀行に対し、異例の行政処分となるシステムの「管理命令」を発動する方針だ。年内いっぱいをメドに、同行が進めるシステムの更新作業や保守業務を共同で管理し、必要に応じて運営体制の見直しも命じる。金融当局がシステム運営を直接監督することで障害再発を最小限にとどめ、金融システム不安への波及を防ぐ。」

別報道によれば、金融庁は、一応、共同管理は否定しています。

みずほのシステム「金融庁が管理」報道を否定 改善命令で麻生金融相(朝日)

「みずほ銀行の相次ぐシステム障害を受けて金融庁が業務改善命令を出したことについて、麻生太郎金融相は24日、「みずほ銀行が自らシステム更改などを適切に管理することを求めている」と、システムを管理する主体や責任はあくまでみずほ側にあると強調した。

閣議後の記者会見で答えた。金融庁がみずほのシステムを「共同管理」するなどと一部で報じられたことについて、麻生氏は「一緒にやる事実はない」と否定した。」

ITの専門家が大勢いるわけでもない金融庁が管理することによって、システム障害がなくなるのなら、みずほ銀行はよほど無能だということでしょう。さすがにそれはないようです。

開発担当は異動…みずほ派閥争いでシステム複雑化(産経)

「金融庁は22日、障害が多発するみずほ銀行のシステム運営を事実上管理する異例の方針を打ち出した。前身の旧3行の主導権争いを背景に複数の業者がかかわり、複雑化したシステムをみずほは掌握しきれず、原因究明に時間がかかる中で金融庁の関与を招くことになった。みずほは従来、システム自体に問題はないとの認識を示してきたが、金融庁は検証する方針だ。

「金融庁の措置は、金融機関として1人前ではないという烙印(らくいん)を押すような厳しい内容。旧3行が融合できず、過去の障害で適切な対策を講じなかったツケだ」。大手銀行の関係者は、こう突き放した。」

「「システムが巨大で、全体像を完全に把握することは容易ではない」。今年6月にはシステム障害に関する第三者委員会は報告書でこう指摘し、開発段階から関与していた担当者の人事異動などでシステムの中身が外から見えない〝ブラックボックス化〟を懸念した。8月20日に発覚した今年5回目の障害では原因を特定できないまま金融庁に報告書を提出しており、みずほがシステムを掌握しきれていない状況も浮かぶ。」

「企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「システムを運用、管理できない体制は歴代の上層部の負の遺産となって引き継がれてきた。みずほが出直し、信頼を取り戻すにはみのりを再構築するぐらいの覚悟で原因究明を進める必要がある」と指摘する。」

みずほ、検査の最中に「行政処分」をくらう異例
システムトラブル続発で金融庁の検査が長期化
(東洋経済)

「第三者委員会の報告書ではみずほの基幹系システム「MINORI(みのり)」について、「システムとして巨大であるがゆえにその全体像を完全に把握するのは容易ではなく、不測の障害がシステムの別の箇所に影響して大きな影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。再発防止策を講じてもなお障害が続く以上、金融庁の検査が長引くのは避けられない。

しかも、検査が終了するまでに、新たな障害が起こる可能性も否定できない。そこで今回、障害につながりうる更改や更新作業に対して行政処分を出し、トラブル発生のリスクをできるだけ抑えようとした。異例の措置は金融庁の危機感を示すものといえるだろう。」

内部統制報告・監査上はどうなるのでしょう。

システム障害により、顧客から依頼された取引が適時に行われなかったという不備があったわけですが、行われた取引を記録するという場面では、不備があったとは聞きません。その意味では、財務報告に係る内部統制に不備はなかったともいえますが、同じシステムを使っているわけですから、無関係ともいえないでしょう。そもそも、会社がシステムの全体像を把握していなければ、財務報告に影響しないと言い切ることはできないでしょう。
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