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「内部統制報告書の訂正報告書」の提出に関するお知らせ(日立物流)

「内部統制報告書の訂正報告書」の提出に関するお知らせ(PDFファイル)

東証1部上場の日立物流のプレスリリース。過年度有報等の訂正に関連して内部統制報告書の訂正報告書を提出したとのことです。

2015年3月期から2018年3月期までの内部統制報告書を訂正して、「当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した」としています。

訂正後の文言より。

「当社は、第56期(2015年3月期)の有価証券報告書より国際財務報告基準(以下、IFRS)に準拠した連結財務諸表等を作成しているが、2019年3月期第3四半期の要約四半期連結財務諸表等に係る決算手続きを進める中で、M&A等の一部会計処理がIFRSに準拠していないとの指摘を監査法人より受け、当指摘を踏まえ、当社にて上記会計処理を再検討した結果、第56期以降のIFRSに準拠した連結財務諸表等を修正することとし、第56期、第57期、第58期、第59期の有価証券報告書及び第58期第1四半期から第60期第2四半期までの四半期報告書の訂正報告書を提出した。具体的には、国際会計基準(IAS)第32号第23項の定めに従い、非支配持分の所有者に付与している売建プット・オプションに係る金融負債を計上し、その金額相当を資本から差引く等の修正を行った。

本件は、M&Aに関連する非定型の見積項目に関するIFRS特有の会計論点について網羅的な情報収集が不十分であったこと、売建プット・オプションに関連する非定型のIFRS特有の会計処理に関する知見が不十分であったことに起因する決算・財務報告プロセスに関する内部統制の不備であり、財務報告に重要な影響を及ぼすことから、開示すべき重要な不備に該当すると判断した。

上記の財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備については、訂正事項の判明が当該事業年度の末日以降であったため、当該事業年度の末日までに是正することができなかった。なお、上記の開示すべき重要な不備に起因する必要な修正事項は、M&A等に関連して発生した売建プット・オプションに関連する見積項目を再度検証することにより、すべて連結財務諸表に反映している。(以下省略)」

この書き方からすると、売建プット・オプションの契約の存在自体は把握していたが、会計処理を間違えてしまったのでしょう。

有価証券報告書等及び決算短信等の訂正に関するお知らせ(2月14日)(日立物流)


(プレスリリースより)

他の年度も同じような負債・資本の入り繰りです。損益計算書への影響はないそうです。

監査人である新日本は、オリンパス事件の検証で、株式を資本とするか負債とするかの会計基準にふれていて、M&Aの際の特殊な取引に対する意識は高かったはずですが、それでも見落としてしまったということになります。

新日本の検証委、オリンパス監査で「法的責任認められず」(2012年)(ロイター)

「報告書では、制度面の見直しを通じた再発防止も主張した。例えば、オリンパスが損失隠しの過程で利用した配当優先株について、資本扱いする日本の会計基準を、負債扱いとする英国基準や国際会計基準(IFRS)と同等の制度に見直せば、時価評価による損失計上を通じて不正が露見した可能性がある、などとした。」
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