会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

誰かが流行らせようとしている“ROE教”を「こっそり」嗤え(ダイヤモンドより)

誰かが流行らせようとしている“ROE教”を「こっそり」嗤え

(日経の「目覚める資本」という特集でもROEを取り上げていましたが)ROE(自己資本利益率)を流行らせようという動きを批判した記事。

「・・・近年、大袈裟に言うと、誰かがROEを流行らせようとしているようだ。たとえば、ROEを重視した銘柄選択を行うJPX日経400といった株価指数の作成や、公的年金積立金などによる性急な同指数への投資(年金運用の常識に外れている)、さらには「日本版スチュワードシップ・コード」の制定などによる「物言う株主」の後押し運動などにあっても、ROEを企業経営が「優良」であることの重要な指標として取り入れようとしているようだ。

今や企業側が投資家に評価されるためには、ROEを高めることを目標とする“ROE教”に帰依しなければならないようなムードが醸し出されている。」

上場会社の経営者の対応は・・・

「・・・ROEは純利益が分子で、株主資本が分母となる分数の値である。ビジネスのリスクや従業員の満足度などの「諸事情」を一定に保って、分子である利益が増えるような方策があるならこれは好ましいし、ぜひ実行すべきだ。ただ、これは「言われなくてもわかっている」話だろう。

 他方、そのように利益を増やすことができない場合に、配当、自社株買い、借り入れの増大による高レバレッジ経営などで、分母である自己資本を小さくするのであれば、これは企業経営として必ずしも望ましいものではない公算が大きい。

・・・

 ROEを計算する分数の分子が増えることはいいことなのだし、株主が喜ぶことなのだから、留保条件を付けるとしても、「より高いROEの実現を目指して頑張ります」というくらいのことを述べても、上場会社の社長ならバチは当たらない。空気を読み、無駄な空気抵抗を避けるのだ。」

「企業の長期的成長(日本版スチュワードシップ・コードでも意識している「正義」だ)のためには、ROE向上を金科玉条とする経営は不適切だ。ROEばかりを本気で意識している経営者が他社にいたら、「こっそりと」嗤ってやるのがいい。」

分母の自己資本を減らすだけなら、例えば、税効果会計において、繰延税金資産の回収可能性の判断を厳しくするようなルール見直しをすることでも達成できます。分子の当期純利益は各年度を平均すれば変わらないはずなので、繰延税金資産減少による自己資本低下効果だけが効きます(金融機関などでは効果がありそうです)。

積み立て不足をBSに即時反映させる退職給付会計基準改正も、多くの場合、ROE向上に貢献したことでしょう。(実態は変わらないわけですが)

この報告書でもROEを強調しています。

当サイトの関連記事(経産省の「伊藤レポート」について)

投入される資本の金額との対比で利益を考えなければならない、経営意思決定を行わなければならないというのは基本的には正しいのですが、それだけではだめなのでしょう。伊藤レポートでも「持続的価値創造」ということをいっています。
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