涙というのは感情が高まったときに、人が体内から流すモノだ。
それは喜びであったり悲しみであったり、人の悲喜こもごもを表現している。
当然それだけではなく、表情筋を使って様々な表情を作ることが可能だ。
私は人よりも出来が悪く、部活やバイトなどで失敗して強い口調で指導されたりもする。
強い口調で指導されたら「何で私はこんな事も出来ないのだろう」と、すぐに涙が出てしまう。
それを見て、周りは「このぐらいで泣くな」と良い、気勢が削がれてしまうようだ。
私だって別に好きで泣いている訳じゃない。ただ人より涙腺が弱いだけなのだ。
その日もレジ打ちのバイトで五千円札を受け取っておきながら、千円をもらった時と同額のお釣りをお客様に返してしまった。私がそれに気づいたのはレジの千円札を入れる場所に五千円札が混ざっていたからだ。見つけたときは退勤まで時間が有ったので、入れ間違えただけだろうと思っていた。
レジの引き継ぎの際にレジに入っているお金を計算していたら、四千五百円も誤差が出ていた。
私は「あの時には既に間違えて居たんだ」と理解した。
その後は店長にこっぴどく叱られた。私が一生懸命やっていても「やる気がない」ように見えるそうだ。「ボーっとしてるから誤差が出るんよ」とか言われたが、「レジが混でいて頭が追いつかなかったんだ」と反論出来なかった。
それが悔しくて私は泣いてしまった。それを見た店長は呆れた口調で「今日はもう良いから帰りなさい、始末書は渡すから」と、一枚の紙を渡してくれた。似たような理由で始末書を書くのは今回で三度目だったので「次は無いよ」と言われた。私は悔しくて家に着くまで涙を流していた。
こんな調子じゃ「おしゃれな雑貨屋さん」を経営したいという私の夢は一生叶わない気がしてきた。
「夢が叶わないなら生きていても意味がないんじゃないか」と思うと、私は近所のビルの屋上に出た。
綺麗な夕陽だなと思うと同時に、この空を飛んでこの気持ちを鎮めたいと思った。
私は……跳んだ。
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文字数832文字
投稿日2010年07月02日 10:45
レス番573