試合は早々に動き出す。4分、川崎のパスワークのミスを突いてセンターサークル付近で田邉がボールを奪って前線のネイサン・バーンズへのカウンター。ネイサン・バーンズがそのままゴールへ向かって独走し、きっちりとゴールへ流し込んで先制したFC東京。だが、東京のスルーパスを最後方で奪った中村がすぐに東京の最終ラインの裏へロングパス。このボールに反応した大久保に小川が競ろうとするも大久保の突破を止めることが出来ず、そのまま大久保にゴールを決められて10分も経たないうちに同点に。その後は全体的にFC東京が主導権を握るものの、決定機を決め切れずに同点で後半へ突入。
後半は大久保のループ気味のミドルがクロスバー、小林がGK秋元が飛び出てがら空きとなったゴールへ流し込めずのミスキックなどで川崎が得点を奪えずにいると、逆に東京が攻勢に。東京がエリア外左でFKを得ると、小川の低い弾道のクロスに前田が足で合わせてゴールに突き刺して東京が勝ち越し。その後も東京のペースが続き、前田、バーンズと決定機を迎えるが、ことごとく枠を捉えることが出来ない。すると、後半32分にエリア内でシュートを放とうとした大久保の足を米本が引っかけたという判定でPKに。これを大久保がど真ん中に決めて、再び同点とされる。東京はその後もチャンスを作るものの得点出来ずにいると、後半36分にエウシーニョのスルーパスを受けた小林に決められて、東京は二度のリードも虚しく逆転されてしまう。その後、ムリキを投入するもあまり連係がとれず、絶好の決定機も枠外へ外してしまうと、逆にアディショナルタイムに中村がサイドラインへ時間稼ぎで持ち込むと思いきやエリア奥からセンタリングをファーに送ると、フリーで待ち受けたエウシーニョに決められ万事休す。多摩川クラシコはホームで屈辱的な敗戦となってしまった。
シュート数はFC東京の11に対して川崎は6。オフサイドは東京が6、川崎が0と数字だけを見れば、攻守ともに東京がゲームを支配していたといえそうだ。だが、PKで同点とされる前の東京は、2対1で守るのか、3点目を奪うのかの判断が明確につかないままプレイを続けたところで同点にされ、ピッチ上での意思統一がなされないまま川崎の勢いにとどめをさされた感じだ。
そのあたりのゲームプランを提示出来なかった城福監督には、選手起用も含めて疑問が残るところ。ネイサン・バーンズの交代は疲労を考えると妥当だと思うが、イエローカードをもらい、バタバタしていたハ・デソンを残して田邉を替えたのは勿体なかった。交代で入った橋本はあまり貢献出来ずに終わるばかりか、米本が足を引っかけて与えたPKは、その前の大久保のシュートフェイントに引っ掛かった橋本が倒れたことで慌てて米本が止めに行ったために生まれてしまったものともいえる。
平山を入れた後に前田を下げてムリキを投入するも、ムリキは左サイドに収まってしまい、平山にボールが収まらなかったこともあってか、最前線にいるからこその脅威を発揮出来なかった。
一番問題なのは守備が破たんしているということ。多摩川クラシコは点が入る試合ではあるが、それはやはり守備における精神面を含めた負の連鎖が止まらないことに帰結する。それをストップさせるべくメッセージを込めた選手交代や指示を出すべきだが、その意味では城福監督は冷静な対応が出来なかった。
だからといって、「前任のマッシモだったら……」と単純に比較するのはナンセンスだが、ACLと兼ね合いながらのチーム構築の難しさはあるにせよ、城福サッカーの基盤を作りつつあって、結果は伴わないが内容は積み上げているという訳でもない。一見、今季のJリーグでの試合を振り返って攻撃としては一番良かったのではないかと思う人もいるかもしれないが、それは川崎のディフェンス陣の質が低いだけであって、決して東京の攻撃の質が高まっていることではない。守備が破たんし、攻撃も決定機を外し続ける(さらにはシュートチャンスがあっても打たない)ならば、相手に結果をもたらしてしまうのも当然の結果なのだ。そして、「マッシモだったら…」と少なからず思う人がいるのは、勝てないにせよ引き分けることが出来ていたからだろう。城福東京は今季これまで3勝4敗と一度も引き分けがない。勝ち点ゲームであるJリーグにおいて、これは非常に厳しい。
森重は疲労が見え、丸山はパスミスが散見(川崎の3点目は丸山のヘディングクリアがエウシーニョへと渡ったことに始まる)、小川は終始対応や戻りが遅く翻弄され続け、徳永は持ち上がってもパスの球離れが遅くカウンターを殺すだけでなく、エリア内に侵入してもシュートを打たずに弱いパスを送って決定機を失うなど、ディフェンス陣は反省材料や課題が多過ぎた。秋元もキック、セーヴ、飛び出しといずれも不安定なプレーが続いている。心身どちらもの疲労回復も含めて、一度他の選手をスタメン起用するという手も考えていい時期にも来ているはずだ。
これで負け越し。首位の川崎に敗れたことで、1stステージの優勝はかなり厳しいものになったといえる。ポジティヴに考えるなら、1stステージはチームの基盤構築に当ててもらって、ACLを重視するスタンスでも構わない。どちらも追って二兎をえずどころかチームの混乱を招きかねない状態だけは避けなければならない。
まずは失点をなくすこと。そしてチャンスには果敢に枠内にシュートを打つこと。当たり前のことを当たり前に実践することを、続けていってもらいたい。
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【J1リーグ戦 第7節】
2016年04月16日/味の素スタジアム/15:03キックオフ
観衆:29,208人
天候:晴、弱風
気温:22.0度/湿度:42%
主審:西村雄一/副審:唐紙学志、西橋勲
FC東京 2(1-1、1-3)4 川 崎
得点:
(東):ネイサン・バーンズ(4分)、前田遼一(56分)
(川):大久保嘉人(11分)、大久保嘉人(77分、PK)、小林悠(81分)、エウシーニョ(90+2分)
≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
02 DF 徳永悠平
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
25 DF 小川諒也
07 MF 米本拓司
14 MF ハ・デソン
27 MF 田邉草民 → 橋本拳人(68分)
44 FW 阿部拓馬
16 FW ネイサン・バーンズ → 平山相太(74分)
20 FW 前田遼一 → ムリキ(78分)
≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太朗
50 DF 駒野友一
10 MF 梶山陽平
37 MF 橋本拳人
48 MF 水沼宏太
09 FW 平山相太
11 FW ムリキ
≪マネージャー≫
城福浩
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【J1リーグ】
≪1stステージ≫
第01節 2016/02/27(土)19:00✕FC東京 0-1 大 宮(H・味スタ)
第02節 2016/03/06(日)15:30〇FC東京 2-1 仙 台(A・ユアスタ)
第03節 2016/03/11(金)19:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ)
第04節 2016/03/19(土)15:00✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第05節 2016/04/02(土)16:00〇FC東京 3-2 名古屋(H・味スタ)
第06節 2016/04/10(日)19:00✕FC東京 0-1 柏 (A・ 柏 )
第07節 2016/04/16(土)15:00✕FC東京 2-4 川 崎(H・味スタ)
第08節 2016/04/24(日)14:00 FC東京×甲 府(A・中銀スタ)
第09節 2106/04/29(金)17:00 FC東京×福 岡(H・味スタ)
第11節 2016/05/08(日)16:00 FC東京×湘 南(A・BMWス)
第12節 2016/05/13(金)19:00 FC東京×鳥 栖(H・味スタ)
第13節 2106/05/21(土)14:00 FC東京×浦 和(A・埼 玉)※ ACLラウンド16進出 → 2016/06/22(水)に変更あり
第14節 2016/05/29(日)17:00 FC東京×G大阪(H・味スタ)
第15節 2016/06/11(土) FC東京×磐 田(A・エコパ)
第10節 2016/06/15(水)19:00 FC東京×広 島(H・味スタ)
第16節 2016/06/18(土) FC東京×新 潟(H・味スタ)
第17節 2016/06/25(土) FC東京×横浜FM(A・日産ス)
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