新たな起用と戦術が奏功し、4試合ぶりの勝ち星。勝ち点で鹿島に並ぶ。
最終的には神戸の14本のシュートに対してFC東京は6本と、神戸がボールを保持していたゲームだったが、FC東京は前半に3点を挙げたことで最後まで優勢を崩さずに勝ち点3を獲得。前日で鹿島が松本に引き分けたため、首位奪還こそ逃したが、勝ち点で鹿島に並んだ。
前半は圧巻のゴールショーだった。6分、リーグ初先発となったアルトゥール・シルバが右からゴール前へ送ったクロスを、この日トップ下で起用された高萩が頭ですらして走り込んできた東へ。東は胸トラップ後に迫ってきた神戸DJ陣の頭をふわりと越すパスを倒れ込みながら出すと、それに反応した高萩が神戸GK・飯倉が詰めてくる寸前にシュート。右ポストを弾いたボールがそのままゴール左に吸い込まれてFC東京が先制に成功。すると、10分には左サイドのスローインの流れから、アルトゥール・シルバがペナルティエリア角の外側から山口蛍の寄せがやや甘かったところを突いてファーサイドへシュート。これが右上角に見事に吸い込まれて、FC東京が10分で2得点目をゲット。20分にはディエゴ・オリヴェイラの折り返しをボックス内で受けた三田が左脚で狙うが、ここはGK・飯倉のセーヴに阻まれる。それでも、34分、中盤で橋本からボールを受けたディエゴ・オリヴェイラが渡部を背にしながら反転してかわすと、ドリブル開始。中央へ橋本が駆け込み、左に高萩がフリーで走る中でどちらのケアもしなければならないと考えた神戸DF陣が寄せきれないうちに、ディエゴ・オリヴェイラが中央へパスを送ると、神戸DF陣の間を抜けてきた橋本がスライディングシュート。これがネットを揺らして、FC東京が前半で早々と3点を挙げるワンサイドゲームの展開に。
神戸はイニエスタほか怪我人やミッドウィークの天皇杯・準々決勝(大分戦)のことも考慮してか、ジョアン・オマリ、渡部、酒井という未知数なバックラインを含め、ターンオーヴァーと言っていいかはわからないが、スターティングメンバーを代えてきたのがやや誤算となったか。特に高萩がパスの供給元となるサンペールを執拗にマークし、サンペールが思い通りにいかずにイライラして警告をもらうと、神戸首脳陣は2枚目での退場を恐れてか、前半のうちにサンペールを小川慶治朗と交代。古橋のシュートなどもあったが、FC東京の攻勢が衰えないまま、前半を終えた。
だが、後半は一転して神戸ペースに。サンペールを下げて小川を入れた際、アンカーのポジションに山口を移して対策を講じていたが、それが次第に神戸のバランスが好転するきっかけに。ボールロストの率が増えるなか、FC東京は57分に自陣の森重が前線へロングフィード。これに反応したディエゴ・オリヴェイラが競り合いのなかでボールを収め、ペナルティエリアラインを越えたあたりで飯倉の足元を狙ったシュートを放つが、飯倉に阻まれて4点目はならず。命拾いをした神戸は、60分にダビド・ビジャに代えて5月以来の試合となるルーカス・ポドルスキを投入すると、だんだんと息を吹き返し、66分に田中順也のCKからジョアン・オマリがヘディングシュートを決めて2点差に。その後もポゼッションを高めながら、次第に重心が自陣ゴールへと近くなるFC東京を尻目に、神戸が攻勢を仕掛けていく。CKやFKなどセットプレイの回数も増え、77分には田中順也のゴール前中央へのクロスに渡部がヘディングシュート。ゴールかと思われたが、高萩がゴールマウスへ駆け込みながら頭でクリアしたかと思えば、その1分後に右サイドから中央へカットインしたルーカス・ポドルスキが強烈なミドルシュートを放つが、これもFC東京のGK・林彰洋が好セーヴによって得点を許さず。
押し込まれる時間が続く中で2点のリードを保っていたFC東京は、先にディエゴ・オリヴェイラに代わって永井を投入し、前に重心を掛けて反撃する神戸の裏のスペースへの抜け出しを狙う一方、76分に三田に代えて岡崎、88分に東に代えて内田をピッチに送り、試合を締めるための対策を講じる。87分に神戸はDFの渡部を下げて、大分から移籍した藤本を前線で起用。さらに前からの圧力を高める策に出るが、FC東京が中央を最後までこじ開けさせず。また、5分のアディショナルタイムを相手陣内のサイドで、内田と岡崎を中心にボールをキープ。巧みなパス交換などで相手DFをかわしてシュートを狙えるタイミングもいくつかあったが、ダメを押しに行くよりも時間を進めるための安全策を選択したか。早くボールを相手陣内へ動かしたい神戸の自由にさせず、FC東京が誤審の影響で勝ち点を奪えなかった前節・鳥栖戦の流れを払拭し、勝ち点3を積み上げることに成功した。
大幅に選手を交代してきた神戸、後半は押し込まれっぱなしということを考えると、決して点差ほどの快勝という訳ではないが、トップ下に配した高萩やアルトゥール・シルバの躍動、僅かの時間ながら内田や岡崎がスルスルと相手をいなすプレイなど、これまでにあまり見られなかった良さが生まれてきたのは好材料だ。先手を奪うと陣形の重心が後退してやや受けてしまう傾向はこの試合でも出てしまい、しばらくの間、なかなか修正にも手間取った感じもするが、これまでの永井、ディエゴ・オリヴェイラがピッチから離れた後の、特に攻撃においての閉塞感を打ち破る形が少しは見えたのではないか。終盤での足の速い永井は相手にとって脅威だし、これまで低い位置でチャレンジしたパスを出してミスになり、反撃を喰らうという高萩の長所と紙一重のところも、前線に置くことでそのリスクも軽減されていた。
あと、気になるのは不用意なパスや判断の遅さからくるボールロストか。ビッグセーヴもあったGK林だが、前半には自陣で味方に余裕をもってパス出来ず、奪われて失点のピンチを迎える場面もあった。ラグビーW杯で使用され、湿度も高いなか、足を取られる選手が多かったのをみると、芝の状態が影響を与えていたことは確かだが、そのあたりの状況も即座に察知して、セーフティでいくところはセーフティにと、失点へのリスク管理をさらに高めていく必要はあるだろう。
アウェイ8連戦も6戦を終えて2勝2敗2分けとイーヴンに戻してきた。残りは大分と磐田。11月の湘南戦には首位となってホームに戻るためには、負けは許されない。一戦必勝の意気込みをもちながらも、頭は冷静に。リーグ残り5戦を悔いなく戦える準備を万全にして臨みたい。
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【明治安田生命J1リーグ 第29節】
2019年10月19日(土)13:04試合開始 ノエビアスタジアム神戸
入場者数 20,413人
天候 曇 / 気温 24.9℃ / 湿度 70%
主審 荒木友輔 / 副審 聳城巧、野村修 / 4審 小屋幸栄
神 戸 1(0-3 / 1-0)3 FC東京
≪得点≫
(神): ジョアン・オマリ(66分)
(東): 高萩洋次郎(6分)、アルトゥール・シルバ(10分)、橋本拳人(34分)
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【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 32 渡辺 剛
DF 03 森重真人
DF 14 オ・ジェソク
MF 07 三田啓貴 → 岡崎 慎(76分)
MF 45 アルトゥール・シルバ
MF 18 橋本拳人
MF 10 東 慶悟 → 内田宅哉(88分)
MF 08 高萩洋次郎
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ → 永井謙佑(69分)
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 29 岡崎 慎
DF 42 バングーナガンデ佳史扶
MF 21 ユ・インス
MF 28 内田宅哉
FW 11 永井謙佑
FW 27 田川亨介
≪監督≫
長谷川健太
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【明治安田生命J1リーグ FC東京 日程・結果】
第01節 02月23日(土)14:00 △FC東京 0-0 川 崎(A・等々力)
第02節 03月02日(土)16:00 〇FC東京 3-2 湘 南(A・BMWス)
第03節 03月10日(日)14:00 〇FC東京 2-0 鳥 栖(H・味スタ)
第04節 03月17日(日)13:30 〇FC東京 1-0 名古屋(H・味スタ)
第05節 03月30日(土)14:00 △FC東京 1-1 浦 和(A・埼 玉)
第06節 04月06日(土)14:00 〇FC東京 2-1 清 水(H・味スタ)
第07節 04月14日(日)14:00 〇FC東京 3-1 鹿 島(H・味スタ)
第08節 04月19日(金)19:00 〇FC東京 1-0 広 島(A・Eスタ)
第09節 04月28日(日)14:00 〇FC東京 2-0 松 本(H・味スタ)
第10節 05月04日(土)16:00 △FC東京 0-0 G大阪(A・パナスタ)
第11節 05月12日(日)14:00 〇FC東京 1-0 磐 田(H・味スタ)
第12節 05月18日(土)14:00 〇FC東京 2-0 札 幌(H・味スタ)
第13節 05月25日(土)15:00 ✕FC東京 0-1 C大阪(A・ヤンマー)
第14節 06月01日(土)14:00 〇FC東京 3-1 大 分(H・味スタ)
第15節 06月15日(土)19:00 ✕FC東京 0-1 神 戸(H・味スタ)
第16節 06月23日(日)19:00 ✕FC東京 0-2 仙 台(A・ユアスタ)
第17節 06月29日(土)19:00 〇FC東京 4-2 横浜FM(H・味スタ)
第18節 07月07日(日)19:00 〇FC東京 3-1 G大阪(H・味スタ)
第19節 07月14日(日)19:00 ✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第20節 07月20日(土)19:00 〇FC東京 2-0 清 水(A・アイスタ)
第21節 08月03日(土)19:00 〇FC東京 3-0 C大阪(H・味スタ)
第22節 08月10日(土)19:00 〇FC東京 1-0 仙 台(H・味スタ)
第23節 08月17日(土)19:00 ✕FC東京 0-1 広 島(H・味スタ)
第24節 08月24日(土)13:00 △FC東京 1-1 札 幌(A・札幌ド)
第25節 08月30日(金)19:30 〇FC東京 2-1 名古屋(A・パロ瑞穂)
第26節 09月14日(土)19:00 ✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第27節 09月29日(日)14:00 △FC東京 0-0 松 本(A・サンアル)
第28節 10月05日(土)14:00 ✕FC東京 1-2 鳥 栖(A・駅スタ)
第29節 10月19日(土)13:00 〇FC東京 3-1 神 戸(A・ノエスタ)
第30節 11月02日(土)15:05 FC東京 vs 大 分(A・大銀ド)
第31節 11月09日(土)14:00 FC東京 vs 磐 田(A・ヤマハ)
第32節 11月23日(土)14:00 FC東京 vs 湘 南(H・味スタ)
第33節 11月30日(土)14:00 FC東京 vs 浦 和(H・味スタ)
第34節 12月07日(土)14:00 FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス)
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