
久保田利伸の4年ぶりのツアー<TOSHINOBU KUBOTA Concert Tour“Timeless Fly”>のNHKホール公演2日目を観賞してきた。6月20日にハーモニーホール座間からスタートしたツアーの3公演目。東京には再び7月下旬に戻ってくる。
ステージは、緩やかなカーブを描いた左右と中央にスロープ状の傾斜があり、ダンサーと久保田が通る道となっている(上から見ると新宿西口ロータリーみたいなイメージ?)。その傾斜の間にバンド・メンバーが配置されている。左奥にDJ MASS、キーボードのフィリップ・ウー(ブログ)、その右前にギターの大西雄介、左前列はコーラスの3人、オリヴィア(moreolivia)、吉田博(早稲田の政経出身らしい)、YURI(DIVAFRESHYURI)が並ぶ。右側には奥にNYからドラムのラルフ・ロール、その斜め右下にキーボードの柿崎洋一郎、右側前列にはベースのカルロス。ダンサーはMASAKOと、今回は彼女のスクールの生徒でもあるNAO。
後方から光を当てられシルエットが浮かぶと場内大喝采。明転して「Keep it Rock」のイントロに合わせ、黒サングラスとジャケット・シャツを着流した久保田が中央のスロープを降りてくる。その風貌はつい「レニクラ(レニー・クラヴィッツ)かよ!」と突っ込みたくなるほど。
曲構成は新譜『Timeless Fly』からはオープナーの「Keep it Rock」をはじめ、「TOMORROW WALTZ」「Is it Over?」「Nyte Flyte」「The Other Half」「STAR LIGHT」「Soul Mate」を披露。懐かしいところでは、『GROOVIN'』収録の「ダイヤモンドの犬たち」、『KUBOJAH』収録の「雨音」あたりも。
MCでは、ヴェテランらしい笑いを挟んだトークで和ませる。「今日も雨模様ですが、僕の曲には雨とかRAINの付く曲が多くて」と言った後、「「Candy Rain」とか…」で詰まるところ客席からの「雨音!」に助けられたり。ブラック・ミュージックには本当に雨の歌が多いと思って黒人の知人に「どうして雨のことを歌う曲が多いのか」と質問したら「何でそんなことを聞くんだ?」と逆切れされたとか、コーラスのYURIにSWVの雨の歌をちょっと歌ってよと促し歌わせている途中で「雨出てこないじゃん」と突っ込んだり。また、YURIもサビに出てくるんですよといいつつ歌うも途中から“ラララ~わからない~”と誤魔化したり。
久保田のコーラスいじりは冴えていて、新メンバーの吉田博には「本当にヨシダヒロシ? ミドル・ネームとかないの? ヨシダ・マホメット・ヒロシとか…」と言ったかと思えば、「ヒロシって言ったら『ど根性ガエル』でしょ! 髪型は梅さんだけど…」と久保田ファンの年齢層にはピッタリのネタも。また、マイケル・トリビュートについては、「本当は僕の「ロック・ウィズ・ユー」だけにしようかと思ったんですけど、コーラスのみんなが「どうせ久保田さん着替えちゃうんでしょー。だったら、私たち歌いますよ」っていうんで…」と久保田が言うのを遮るようにYURIが「いってない、いってない」と食いつく場面も。
他のバンド・メンバーとも阿吽の呼吸でやりとりし、微笑ましい空気を生み出していく。さすがにこのあたりは、長年のステージで培った“間”や“空気”を解かっている人ならではのエンターテイナーぶりだ。
ファンキー・チューンからメロウに落とし込み、ミディアムから沁みるバラードへ。変幻自在の曲構成を巧みに導く手腕は、見事の一言。聴かせ、躍らせ、楽しませ、とだれることのない、満腹にはちょっと足りない腹八分目くらいのスパイスで、心地よさをもたらせてくれるバランスも素晴らしい。
個人的には、SWV「ライト・ヒア」からマイケル・ジャクソン「ヒューマン・ネイチャー」(ご存知の方も多いでしょうが、SWVの「ライト・ヒア」は「ヒューマン・ネイチャー」をサンプリング・カヴァーした曲)の流れから「ロック・ウィズ・ユー」で終わるのもいいのだけれど、さらに「今夜はドント・ストップ」を挟み込んでから「STAR LIGHT」へ雪崩れ込むといった演出もあってもよかったのでないかと。ディープな「Indigo Waltz」から「STAR LIGHT」への展開よりはスムースな気がするし(というのも、「STAR LIGHT」は明らかに「今夜はドント・ストップ」を意識した楽曲なので。聴き比べてみれば解かります)。ただ、そうすると、本編ラストまでのクライマックス、「STAR LIGHT」「You were mine」「Soul Mate」の流れは崩れてしまうけど。「Missing」などの定番もいいのだけれど、もう少しファンキーな流れを多くしたり、ドープな曲を挟み込んだりしても面白かったかもしれない。

ラストはしっとりと「Cymbals」で締め。充実した内容に、観客の声援も止まない。アンコール時に勢いが落ちずに拍手が続いていたのも含め、いかにファンが待ち続けていたライヴであったかということを思い起こさせた。最後はメンバー全員で礼を二度した後、「全国ツアー行ってきまーす」、コケた後で「歯磨けよ」と言い放ってステージ・アウト。会場全体が笑顔に包まれ、手を挙げていた姿が印象的だった。
ツアー序盤ということもあり、ゲストの来ることの多い東京でもゲストはなし。といっても、実力派コーラスを揃えていれば、その点は問題ないだろう。新譜収録曲のなかでまだ披露されていない曲もあるので(「24/7~NITE AND DAY~」やら「僕じゃない」やら。「Life-long High-way」は是非クライマックスの1曲として組み込めば盛り上がると思うが)、来月の東京では、多少変更したセット・リストも期待したいところだ。「FLYING EASY LOVING CRAZY」や「M☆A☆G☆I☆C」、「Moondust」は、ゲスト(それぞれMISIA、KREVA、小泉今日子)が来演しないとダメだけども。
エンターテイナーに酔いしれ、ハッピー・ヴァイブスが充満した東京の夜だった。
◇◇◇
<SET LIST>
01 Keep it Rock
02 ダイヤモンドの犬たち
03 TOMORROW WALTZ
04 雨音
05 Is It Over?
06 the Sound of Carnival
07 Nyte Flyte
08 LA・LA・LA LOVESONG
09 Back Singers' Medley
Right Here(Original by SWV)
Human Nature(Original by Michael Jackson)
Right Here
10 Rock with you(Original by Michael Jackson)
11 The Other Half
12 Missing
13 Indigo Waltz
14 STAR LIGHT
15 You were mine(Including phrase of“Another Star”by Stevie Wonder)
16 Soul Mate~君がいるから~
≪ENCORE≫
17 Oh,What A Night!
18 LOVE RAIN ~恋の雨~
19 Cymbals
<MEMBER>
久保田利伸(Vo)
大西雄介(G)
Carlos Henderson(B)
Ralph Rolle(Dr)
柿崎洋一郎(Key)
Philip Woo(key)
DJ MASS(TurnTable)
Olivia Burrell(Cho)
吉田博(Cho)
YURI(Cho)
MASAKO(Dancer)
NAO(Dancer)

