森重、丸山が日本代表、ネイサン・バーンズがオーストラリア代表で不在のなかで迎えたルヴァンカップ準々決勝第1戦。今季リーグ戦では2敗の福岡が相手となるが、FC東京は序盤からボールを支配し、ゴールが奪える下地は出来ていたはずだった。
しかしながら、やはり最終ラインとボランチの間付近でのパス交換が必要以上に多く、縦パスへのチャレンジも数えるほど。ハーフウェーラインまで上がっても、攻めのリズムが遅く、福岡にスペースを埋められて、決定的なチャンスをなかなか生み出せないストレスの溜まる攻撃に。狭い地域を細かいパス交換で打開しようとするも、最初からパス交換、ワンツーありきでエリアへ進出しようとするため、相手の守備も予測が立てて対応出来てしまう。また、必要以上に手数が多い割にスピードも凡庸ゆえ、どこかで引っ掛けられてカウンターというパターンに。それでもムリキの個の力を活かして攻勢に出て幾度か決定機を迎えたが、その攻撃の要であるムリキが膝を痛めて前半のうちに交代を余儀なくされるアクシデント。
ムリキに代わってピッチに入った中島が5バック気味にゴール前を固めた布陣を崩そうと仕掛けると、エリア内で河野からのリターンヒールを受けた東がシュートを放つなどシュートの形で終える場面も増えてきた。
後半も当初はFC東京の時間帯が続くが、やはり攻めきれずにいると、次第にプレスを掛けてきた福岡によって味方との距離感にズレが生じてきたのか連係に綻びが出始め、細かいミスが連発。思うようにリズムよくボールを前に運べない場面が多くなる。そんななかで、62分に東がエリア手前右へに流したボールに前田が走り込み、エリア右からグラウンダーのシュート。シュート自体は強くはなかったがコースが良く、相手GKが横飛びで弾いたこぼれ球に中島が詰めてゴールへ流し込んで先制。攻めあぐねていた嫌なムードを払拭させるゴールとなった。
その後、福岡が攻撃の姿勢を強めたこともあり、互いに攻め合うオープンな展開に。ただ、疲労もあってか、どちらもここぞという時にミスが出て、効果的なシュートチャンスまで持ち込めない。東京は再三再四ゴール前へ攻め込むチャンスを作るが、CKやFKなどのセットプレーもどこか中途半端でシュートで終われない場面が続くと、福岡もカウンターで応戦出来ると読んだのか、自陣のピンチを脱すると一気に相手陣内へボールを送る戦術へ。90分直前に東京が福岡陣内に攻め込むもののシュートへ持ち込めないでいると、こぼれ球を奪った福岡が素早く前線へ。左サイドからから右前方へ展開すると、エリアコーナー付近から中へドリブルで三島が切れ込んで進出。これに一瞬徳永が後れをとると三島の左足一閃、GK秋元が一歩も動けないシュートを決められ失点。リーグ戦同様、またしても試合終了間際に失点を食らうこととなった。
確かに、森重、丸山の代表組は不在で、吉本と高橋のCBはクオリティの部分で劣ったことは否めない。しかしながら、殊に守備に関しては、周囲との連動性をいかに発揮出来るかがポイントとなってくる。オフサイドラインのコントロール、スペースを埋めるための有機的な連動、距離感の維持などは、個が強い選手が入ったというだけで生まれるものではない。守備陣形をコントロールする指示系統がしっかりしていないとダメだ。その意味では、ディフェンスリーダーやGKが非常に重要になってくるのだが、開幕から見ていて、どうも秋元と守備陣との連動がいま一つに思えてならない。先日の磐田戦での小林のようなスーパーゴールは致し方ないにしても、今季秋元が反応出来ずにシュートを決められる場面が少なくない。反応出来る即ちシュートを防げるという訳ではないが、ここまで反応出来ないようなシュートの撃たれ方をしているとなると、相手のシュート精度というよりもDF陣との連係に問題があるのではないかと考えてしまう。終盤の失点の多さはもちろんGKやDF陣だけが責められることではないが、GKを中心とした守備系統が安定した指示をしていれば、メンタル面で浮き足立つことはないはずだ。今季は特にそれほどピンチではない流れでありながら、一つミスをすると歯止めが効かずに防戦一方となる展開がいくつもあった。自分たちの時間帯のうちにゴールを決め切り、追加点を奪える時に奪ってゲームを支配するのでなければ、終盤は連動した守備を大前提に守り切らねばならない。そのための具体的な策やスカウティングを何度も繰り返しトライしているか。いま一度、紐解いて構築していかなければ、この先も同じような終盤の失点劇から逃れることは難しい。
アウェイゴールを決められたゆえ、次のアウェイでの福岡戦は勝たなければほぼ勝ち進めないことになった。週末の現地の天候も気になるところで、中3日というインターバルも含めてベストなコンディションでは戦えないかもしれない。さらには、ムリキという攻撃の核を失った。逆に言えば、いまこそが全員サッカーで相手にぶち当たる時でもある。一致団結して90分間ボールに食らいつくことが出来れば、結果は見えてくるはずだ。福岡には申し訳ないが、リーグで年間順位が最下位のチームに一つも勝てないようでは、今後の展望は極めて暗澹としたものになる。時間はないが、やれることを完全遂行すること。ピッチにいる選手はその責任を背負って力の限り走ってもらいたい。
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【YBCルヴァンカップ 準々決勝第1戦】
2016年08月31日/味の素スタジアム/19:30キックオフ
観衆:6,882人
天候:晴、弱風
気温:26.3度/湿度:64%
主審:岡部拓人/副審:作本貴典、蒲澤淳一/4審:吉田寿光
FC東京 1(0-0、1-1)1 福 岡
得点:
(東):中島翔哉(62分)
(福):三島勇太(90分)
≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
06 DF 室屋成
29 DF 吉本一謙
04 DF 高橋秀人
02 DF 徳永悠平
27 MF 田邉草民 → 橋本拳人(73分)
34 MF 野澤英之
17 MF 河野広貴 → 水沼宏太(65分)
38 MF 東慶悟
11 MF ムリキ → 中島翔哉(38分)
20 FW 前田遼一
≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
10 MF 梶山陽平
22 MF 羽生直剛
32 MF ユ・インス
37 MF 橋本拳人
48 MF 水沼宏太
39 FW 中島翔哉
≪マネージャー≫
篠田善之
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【YBCルヴァンカップ】
≪準々決勝≫
第1戦 2016/08/31(水)19:30△FC東京 1-1 福 岡(H・味スタ)
第2節 2016/09/04(日)19:00 FC東京×福 岡(A・レベスタ)
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