結果は無失点快勝に見えるも、攻守に課題が山積。
大分はデルラン、薩川、ペレイラの3バックでスタートするも、両サイドが降りてきて最終ラインを5枚のブロックで構え、前へのプレスもほぼ行なわない形。それゆえ、FC東京がボールを握り、その大分のブロックをどのように攻略するかという構図で試合が展開していく。FC東京は長倉、仲川の2トップが引き続きコンビネーションの良さを見せてゴール前へ進出していくと、18分に長倉のパスを受けた仲川がドリブルでペナルティエリアへ侵入した際に、ペレイラに倒されてPKを獲得。これを長倉が落ち着いて決めて、FC東京が先制。その流れのまま、野澤零温が惜しいシュートを放つなど攻勢を強め、33分にクロスに合わせた長倉のヘディングシュートを大分・GKムン・キョンゴンが弾くが、そのこぼれ球をバングーナガンデが折り返し、最後はゴール前に詰めていた小泉が押し込んで、FC東京が追加点。前半で2点というアドヴァンテージを得たのは、FC東京にとっては大きかった。
だが、後半は様相が一変。2点の差が気を緩ませたのか、それとも70%という湿度のなかで疲労とともに集中力を欠いたのか、池田、天笠に代わって野村、中川寛斗をピッチに送った大分が積極的に前へ出てくるようになるとFC東京陣内へ侵入する回数も増え始め、FKやCKといったセットプレーでゴールへ迫るようになるが、FC東京も最後までは大分にやらせず、リードを保つ。
前半とは打って変わって守勢に回ることが多くなったFC東京は、攻守ともに精度を欠くことが少なくなかったSBのバングーナガンデを室屋に、CBの木本をアレクサンダー・ショルツにスイッチして修繕に対処しようとするが、それでもなかなか主導権を握り返すことができない。大分は71分に茂を吉田に、屋敷を伊佐に代えて活性化を図ると、薩川、吉田とゴール前でシュートシーンを連発。FC東京・GKキム・スンギュの好セーヴもあり、ようやく噛み合い始めた大分の攻撃を跳ね返す場面が続く。
80分に仲川、常盤を下げ、 マルセロ・ヒアン、高を起用してからは、次第に大分の攻勢に歯止めを掛けられるようになり、最前線のマルセロ・ヒアンへのロングボールなどで起点を作れるようになると、88分に右サイドへの展開から、ゴール前へ折り返したグラウンダーのクロスをペナルティエリア内で収めたマルセロ・ヒアンにビッグチャンスが到来するも、シュートが大分・GKムン・キョンゴンに阻まれて、ダメ押し点を奪えず。大分も終盤は2点差を覆すほどのパワーが残らなかったか、ジリジリと時間を費やしてしまい、タイムアップ。FC東京がJ2大分を降して、4回戦(ラウンド16)への進出を決めた。
シュートはFC東京11本に対して大分が4本、スコアも2対0と数字上ではFC東京の快勝のような印象だろう。だが、後半こそ攻勢の時間帯があったものの、全体的に大分の出来が芳しくなく、特に前半に攻守ともに精彩を欠いていたところが非常に大きかった。前半の比較的早い段階でFC東京がタイミング良く先制、追加点を挙げられたことで事なきを得たが、もっと大分が前半から前へのプレスを行なうなどチャレンジングな姿勢で向かってきていたら、それほど容易には試合を終えられたかどうかは微妙なところだ。
最終ラインやボランチから何度も縦パスを出せてはいたが(大分から見ると緩いマークで簡単に縦パスを出させすぎていた)、それを受けた後に前へのアクションがなく、すぐに後ろへ戻してしまうため、重心がなかなか前へいかない。個の力の差で局地的な勝負では有利な状況でいくつかはボールが繋げられるが、結局時間を掛け過ぎてしまって、大分のブロックに引っ掛かり、チャンスを逸してしまう場面が多数。ワンタッチや素早いパス交換が生まれると、長倉と仲川のコンビネーションのようにチャンスを創出できるが、大きなサイドチェンジやダイレクトでのパスワークなど攻撃のヴァリエーションが少ないため、サイドからアタッキングサードへ進出しても、外回しや後ろへ下げるパスなどで時間を費やし、効果的でないクロスで跳ね返されるという、効率性の悪い攻撃が目立ってしまっていた。両SBのバングーナガンデ、白井も勢いを持ったサイド突破などはほとんど見られず、長倉と仲川に渡った時にはチャンスが窺えるか、という程度。後半はそのシーンも激減し、大分の時間帯がしばらく続くことになったが、正直なところ、大分のクオリティに助けられた部分が大きかった。
それでも、一発勝負のトーナメントは結果が全て。特にFC東京は、2017年に長野に敗戦して以来、2018年は山形、2019年は甲府、2021年は初戦で順天堂大学、2022年は長崎、2023年は熊本、2024年は千葉といずれも下位カテゴリに敗れて天皇杯を終えることが続いていたため、相手の出来がイマイチながらも、勝利で終えたことはポジティヴな要素ではある。次のラウンド16はJ1のC大阪との対戦になるが、貪欲に上を目指したいところだ。
そして、中2日で迎えるリーグ戦は、CWC後のリーグ初戦となる浦和をホーム味スタに迎えての一戦となる。浦和からレンタルの長倉は出場ができないため、特に攻撃において起点となっていた長倉が不在の中で、どのように攻撃を組み立てるのかが問われるところだ。CWCで高いレヴェルの相手と戦ってきた後の浦和だけに、今日のようなパフォーマンスでは、簡単に中盤で剥がされてしまうことは想像に難くない。より強度の高さを持って挑んでいかないと、複数失点の餌食になる可能性も考えられる。
この日出場がなかった佐藤恵允や遠藤渓太、途中出場となったマルセロ・ヒアン、高、室屋、アレクサンダー・ショルツ、E-1日本代表帰りの俵積田や長友、ベンチ外だった森重あたりから先発が選ばれそうではあるが、停滞した流れに新たなアクセントをもたらすピースになれる選手がいるかどうか。前回の天皇杯2回戦ではベンチに入っていたエヴェルトン・ガウディーノや木村は、天皇杯でも使われず、リーグでもベンチ入りがないとなると、(怪我などでなければ)今後の起用も難しいと考えざるをえないか。リーグとこの天皇杯でベンチ外となっているGK波多野の状況も気になる……など、さまざまに不安な要素は尽きない。浦和はCWCから帰国後、次節へ向けて十分に仕上げてくる一方、FC東京は大分への遠征から戻って中2日とコンディション面でも難しさはあるが、ホームアドヴァンテージを活かして、90分間ボールに喰らいつく姿勢を貫いてもらいたい。
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天皇杯 3回戦
2025年7月16日(水)19:01KO
クラサスドーム大分
入場者数:4,479人
天候:晴れ時々曇り / 気温:28.3℃ / 湿度:70%
主審:今村義朗
副審:武部陽介、船橋昭次
第4の審判員:大坪博和
大 分 0(0-2 / 0-0)2 FC東京
【得点】
(分):
(東):長倉幹樹(19分、PK)、小泉 慶(33分)
〈試合経過〉
19分 得点 東京 長倉幹樹
33分 得点 東京 小泉 慶
36分 警告 大分 野嶽惇也
46分 交代 大分 池田 廉 → 野村直輝 / 天笠泰輝 → 中川寛斗
47分 警告 大分 デルラン
63分 交代 東京 木本恭生 → アレクサンダー・ショルツ / バングーナガンデ佳史扶 → 室屋 成
71分 交代 大分 茂 平 → 吉田真那斗 / 屋敷優成 → 伊佐耕平
80分 交代 東京 仲川輝人 → マルセロ・ヒアン / 常盤亨太 → 高 宇洋
87分 交代 大分 野嶽惇也 → 藤原優大
90+4分 警告 大分 伊佐耕平
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【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 81 キム・スンギュ
DF 04 木本恭生
DF 06 バングーナガンデ佳史扶
DF 32 土肥幹太
DF 99 白井康介
MF 07 安斎颯馬
MF 27 常盤亨太
MF 28 野澤零温
MF 37 小泉 慶
FW 26 長倉幹樹
FW 39 仲川輝人
〈控えメンバー〉
GK 31 小林将天
DF 02 室屋 成
DF 24 アレクサンダー・ショルツ
DF 30 岡 哲平
MF 17 寺山 翼
MF 22 遠藤渓太
MF 08 高 宇洋
FW 16 佐藤恵允
FW 19 マルセロ・ヒアン
〈監督〉
松橋力蔵
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【天皇杯 試合日程】
2回戦 06月18日(水)19:00〇FC東京 3-1 金 沢(味スタ)
3回戦 07月16日(水)19:00〇FC東京 2-0 大 分(クラド)
4回戦 08月06日(水)--:-- FC東京 ✕ C大阪(未 定)
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