*** june typhoon tokyo ***

Thompson Twins' Tom Bailey@Billboard Live TOKYO

 80年代初頭のブリティッシュ・インヴェイジョン・ブーム、なかでもニュー・ウェイヴやニュー・ロマンティックといった系統のアーティストのなかで、デュラン・デュランやカルチャー・クラブと並んで日本でも特に高い人気を誇ったのが、トム・ベイリーを中心としたトンプソン・ツインズだ。

 1993年に解散し、その後音信不通状態だった(というより、一切トンプソン・ツインズとしての活動をしてこなかった)フロントマンのトム・ベイリーが、2014年にハワード・ジョーンズ、ミッジ・ユーロらとともに27年ぶりのツアーを敢行。1987年以来のトンプソン・ツインズの楽曲を披露したことがファンやメディで話題となり、今回の“トンプソン・ツインズ’トム・ベイリー”としての来日公演へと繋がった。ツアー名は〈トンプソン・ツインズ’トム・ベイリー“Thompson Twins’ALL HITS”〉ということで、トム・ベイリーがトンプソン・ツインズ時代の往年の名曲を披露するという、当時を知る者にとっては絶好の公演となった。ビルボードライブ東京の2ndショウ。

 最初にマネージャー(と通訳)がステージに登場し、29年ぶりの来日を嬉しく思っていること、現在の活動とその作品の紹介(物販とサイン会の告知)をアナウンス。非常に丁寧な挨拶を経て、29年ぶりの日本でのステージが幕を開けた。

 「ぼくらは探偵団」(ウィー・アー・ディテクティヴ)のインストによるイントロダクションを経て、まずはバンド・メンバーが登場。トム・ベイリーはこのツアーに3人のバンド・メンバーを連れてきたのだが、全員が女性ということに少々驚いた。左右にキーボードのアマンダ・クレマーとアンジェラ・ポロック、中央にドラムのエミリー・デイヴィスが控えるなか、トムが黒系のジャケットにブルーのシャツといったシックな出で立ちで登場。インカムマイク(ヘッドセットマイク)を装着し、手にはパーカッション用のスティック。トムは中央やや左にセットしてあるキーボードとパーカッションに加えて、楽曲によってはギターやハーモニカ、タンバリンなども駆使しながら演奏していく。

 腹回りも立派になり、ボディラインとしては当時の面影はないものの、クレヴァーでナイーヴな感じが漂う英国風の顔立ちを見ると、やはりトム・ベイリーが眼前いるんだという感慨に満ちてしまう。全盛期ではトリオとして共に行動した(元妻の)アラナ・カリーやジョー・リーウェイはそこにはいないけれど、ファットなシンセ・ベースと打ち込み系のサウンド、人懐っこいポップなメロディがトムの声とともに伝わってくるやいなや、80年代当時の興奮が蘇ってくる。

 そして特徴的なのは、サウンドだけでなく映像とライティングを駆使したパフォーマンスを披露したというところか。「ライズ」ではサビとなると後方のスクリーンいっぱいに“LIES”の文字が点滅してオーディエンスのコールを煽ったり、「シスター・オブ・マーシー」ではスクリーンに映し出される地球を背景に幻想と哀愁が漂い、「キング・フォー・ア・デイ」では後方スクリーンに演奏が始まる際に灯されたローソクの火の映像が演奏が終わると同時に吹き消されて暗転する……など、映像と楽曲、光と音をリンクさせたステージングという凝った構成に。
 このあたりは常に視覚的な考察を強いられていた“MTV世代のミュージシャン”という意識もあるのかもしれない。楽曲的にもファンクやレゲエ、ラテン、さらには民俗音楽などの要素やリズムを採り入れたユニークなスタイル(“エスノ・ポップ”などと呼ばれた)で進化していった彼らだから、単に昔の楽曲を披露するというだけではない、確固たるエンターテインメント性を構築しようとする意図が窺えたステージだったといえよう。

 客層を眺めてみると、やはり80年代当時を知る40、50代が多く、楽曲が繰り出される度にサビ・パートでオーディエンスの歌声が聴こえてくる。1階フロアはほぼスタンディングしっぱなしで、懐かしいユースフル・デイズの楽曲を肌で感じていたようだ。
 ひときわ歓声が高まったのが「レイ・ユア・ハンズ」。“オー、レイ・ユア・ハンズ”のサビで両手を天に高く突き上げるオーディエンスに、満足そうなトム・ベイリーの姿が。続くダンサブルな「ラヴ・オン・ユア・サイド」になると、パーカッション・パットを叩くトムのスティックもどこかジョイフルな跳ねっぷりに見えてしまう。

 圧巻だったのがアンコールラストの「ホールド・ミー・ナウ」。全英4位、全米3位となった彼らの代表曲だが、終盤でオーディエンスがコーラス・パートを大合唱し、それに感激したトムが演奏を止め、合唱を指揮するように煽る。“Hold me now/Oh, Warn my heart/Stay with me/Let lovin' Start/Let lovin' Start……”とオーディエンスのア・カペラでコーラス・パートが繰り返されるなかで、バンド・メンバーがステージ中央で一列に並び、挨拶するという大団円に。予定調和ではなかったその光景は、トンプソン・ツインズの生のサウンドを待ちわびていたファンが来日を決意し実行してくれたトム・ベイリーに対して送る感謝の意を示したコーラスだったのではないか。そんな気さえもする美しくハピネスなラストだった。

 演奏や歌唱が鳥肌モノという訳ではないが、ただ懐かしいというだけでもない。ヒット曲全てがそうとは限らないが、時に刺激的で、時に幻想的な美しさを持ったメロディやサウンドは、時を経ても衰えを知らないということなのだろう。心の奥底に眠っていたグルーヴが蠢き、胸をワクワクさせてくれた一夜となった。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION(Phrase of“We Are Detective”)
01 In The Name Of Love
02 Lies
03 Sister Of Mercy
04 You Take Me Up
05 Runaway
06 Lay Your Hands On Me
07 Love On Your Side
08 If You Were Here
09 Doctor! Doctor!
≪ENCORE≫
10 King For A Day
11 Hold Me Now

<MEMBER>
Tom Bailely(Vocals, Keyboards, Guitar)

Emily Davies(Drums, Vocals)
Amanda Kramer(Keyboards, Vocals)
Angela Pollock(Keyboards, Vocals)

◇◇◇

 終演後、グッズコーナーを見ていたらCDの他にTシャツが売っていたので、ついつい購入。当初狙っていた黒色は既に(求めていたサイズが)売り切れだったので、青色のものに。サインをしてもらえるとのことなので列に並び、サインと握手を。ただ、写真もOKだったので撮影してもらおうと思ったのに、すっかり忘れてTシャツを抱えて退店してしまったのが残念で仕方ない。

 しかも、このデザインはなかなか気に入ったので早速着たいなあと思ったけれど、サイン入りのTシャツなんておいそれとは着られないんじゃないのか……と自問自答してモヤモヤなまま帰途に着いたっていう。(苦笑)

トンプソン・ツインズといえば、このCM。

Lay Your Hands On Me

Love on Your Side

Hold Me Now



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