Monday満ちるのライヴ<“NEXUS” Release Tour>を観賞@ビルボードライブ東京、2ndステージ。従来は舞浜のイクスピアリ(IKSPIARI)での公演が多かった彼女だが、今回は六本木。かつて住んでいたこともあったそうで、またアーバンでソフィスティケイトな彼女(とその楽曲)には適したロケーションかもしれない。交通の便も文句ないし。実際、日曜ということもあるが、舞浜より客入りは良く、ほぼ満席の状態。
ステージは、左からギター兼キーボードの鈴木よしひさ、中央寄りの後方にベースの岡田治郎、中央にMonday、その右隣にMonday'sハズバンドのアレックス・シピアーギン、右後方にドラム&パーカッションの天倉正敬という布陣。前回のツアーとはベースが変わっただけで、いつもの安定したバンド・メンバー構成だ。
オープナーはベスト盤『SELECTIONS’97-’00』の1曲目に“BAREFOOT’N PREGNANT VERSION”として収録されている、「CHASING AFTER THE SUN」というちょっぴり懐かしい楽曲からスタート。早々に繰り出されるスキャットの声色が非常にいい感じ。というか、ビルボードライブの音響が良くなったのは知っていたし、これまでに体感してきたのだが、今日のステージでは特にそれを感じた。高音の抜けもボトム・ラインも素晴らしくクリアに聴こえる。これは生バンドでのクラブ・ジャズというサウンドだからなのかもしれないが。そして、いつも思うのは、非常にスリムなMondayだが、マイクをかなり離しても凛としたヴォーカルを聴かせてくれるということ。これは発声法やヴォーカル・スキルに揺るがないものがあるからなのだろうと感心させられる。
アルバム『ネクサス』収録の「EPIPHANY」に続いて披露したのは、名古屋在住のBRISAとの客演曲「MAP OF THE SOUL」。BRISAは、美大出身のTetsu Shibuyaによるソロ・プロジェクトで、ハウス、ジャズ、テクノ、ダブ方面のDJから、自身のユニット、Agora RhythmでNYのレーベルよりデビュー。同時に、BRISAによる活動も開始し、アメリカのキングストリート、イタリアのイルマなど有名レーベルからのリリースを重ねてきた逸材。コロムビアからのコンピ『FREEDOM』に収録された「Get Over You feat. Angela Johnson」で注目を浴び、2008年、ジェネオンとメジャー契約。国内デビュー盤『Elevation Perception』を発表したという経歴だ。友人が聴いていたピチカート、UFO、Mondayのデビュー・アルバムなどに触発され、UFOやMondayが出演したジャイルス・ピーターソンの来日イヴェントで衝撃を受け、以降クラブ・ジャズにハマり、トーキンラウド・レーベルもの、インコグニートやガリアーノなどアシッド・ジャズに没頭したという。
その彼からのオファーで完成したこの楽曲「MAP OF THE SOUL」は、単なる同じレーベル・メイトのコラボにとどまらず、アシッド・ジャズ、クラブ・ジャズといった下地がある人との楽曲ゆえに、Mondayの歌唱というか呼吸を明確に意識したトラックとして創り上げられたような気がした。Mondayの瑞々しく凛とした佇まいと新鮮なグルーヴが加味されたような、といえばいいだろうか。それにしても、アンジェラ・ジョンソンだの、ジャイルスだの、インコグニートだの、アシッド・ジャズだの、このあたりの言葉が羅列されただけで、ヨダレものですな。そういう思考なので、この楽曲にいっそう好印象を持ったのかも。
前のツアーでも披露した「CANDY」は、スターバックスのネタを挟んで披露(「クァンディ」という新商品とのタイアップ曲として制作したが、その商品はすぐになくなってしまった…でも曲は残る!という話)。また、日本に移住した当時、あまり今ほどカフェがないなかで、好きなコーヒーショップに入り浸って曲などを書きながら淡い恋や出会いを妄想するも、扉から入ってくる人はみなオヤジばかりで幻滅したという話も。このコーヒーショップが、当時住んでいた(Mondayいわく「(ここから)すぐそこ」)六本木のカフェだったらしい。やや哀しげに爪弾かれるギターをバックに紡がれる淡く切ない恋心に揺れるようなメランコリックなメロディとヴォーカルは、大人でしか堪能出来ない味わいの楽曲。人寂しげなカフェにはピッタリの情景を描き出している。
続いてウォーターゲイトからインスピレーションしたという「Suite 610」を経て、ドラムの天倉正敬をフィーチャーした「GENETIC IMPRINTS」へ。この日の天倉も飄々とした表情と恍惚の表情とを行き来しつつ、高いテンションながらも気品を持ったスティックさばきで魅せてくれた。それを横目に見るMondayも楽しそうな笑顔。
本編ラストはおなじみの「YOU MAKE ME」を。毎度のことだが、イントロでのファルセットを聴くと、自然と会場も盛り上がる。Monday、途中でちょっとつっかえちゃったけど、それもご愛嬌。後半でそれを取り返すかのようにヴォーカル・アレンジして歌ってくれていた。「じゃあね~」と茶目っ気たっぷりにステージ・アウト。
アンコールは「ジャーンと盛り上がって終わりっていうのもいいんだけど、今回は大人な感じでしっとりと」とのMCから『ネクサス』収録の「SOMETIMES」を。イントロで後方のカーテンが開き、アーバンでスタイリッシュな夜を過ごすのに相応しいロケーションで幕を閉じた。
アルバム『ネクサス』がクラブ・ミュージックへの回帰の要素を含んだものだったので、「THAT'S NOT ME」や「SANDS OF TIME」などアッパーなクラブ・チューンも聴きたかったのだけれど、それは別のステージで演奏したのだろうか。そのあたりを聴けたらもっとよかったが、それがなくとも、非常にハイレヴェルなサウンド・メイクにて、才知溢れる進取的なグルーヴにゆったりと浸れた夜であった。
◇◇◇
<SET LIST>
01 CHASING AFTER THE SUN
02 EPIPHANY (*)
03 MAP OF THE SOUL (Original by BRISA feat. MONDAY MICHIRU)
04 CANDY (*)
05 SUITE 610 (*)
06 GENETIC IMPRINTS (*)
07 YOU MAKE ME
≪ENCORE≫
08 SOMETIMES (*)
※ (*): SONG FROM ALBUM『NEXUS』
<MEMBER>
Monday Michiru (Vocals)
Alex Sipiagin (Trumpet/Flugelhorn)
Jiro Okada (Bass)
Yoshihisa Suzuki (Guitar)
Masanori Amakura (Drums/Percussions)
◇◇◇
今回はアレックスの熱情的な演奏はなかったが、この人のやや寂寞で気品高いホーンは、一音でも人の歴史というか深みを描出するのに長けているなぁと感心させられる。また、以前買ったレコードを聴いてみることにするかな。
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