*** june typhoon tokyo ***

Laura Mvula@Billboard Live TOKYO

■ ローラ・マヴーラ@ビルボードライブ東京

Laura_mvula
 

 英BBC“Sound Of 2013”や“ブリット・アワード”など、アデルやエミリー・サンデーらの多くのブレイク・アーティストを生み出すレールに乗った、英バーミンガム出身のシンガー・ソングライター、ローラ・マヴーラの初来日公演を観賞。6月21日の2ndステージ。

 カリビアンにルーツを持ち、短髪によるミステリアスなルックス、コリーヌ・ベイリー・レイやルーマーらを送り出したスティーヴ・ブラウンのもとで録音されたなど、これでもかと惹句が飛び出す要素が満載の彼女。エリカ・バドゥ(実際に彼女自身、愛聴していたらしい)やシャーデー、ビョーク登場時に似ているなど、メディアの煽りや音楽好事家の間で話題となっていたこともあり、この日は金曜とはいえ平日で満席。かなり期待されていることが一見してわかった。

 裸足でステージに立つ凛とした姿は、確かにミステリアスと表現したくなる気持ちも分かる。だが、エレピを弾きながら歌ったり、「みんなラヴリーだけど、ちょっと大人しいよね?」などと語りかける姿をみると、エリカやビョークというよりも、インディア・アリーあたりのオーガニックな優しい雰囲気。ヴォーカルはエリカ・バドゥよりも、優しく語りかけたり、ほんのわずかにハスキーに聴こえたりするところからは、クリセット・ミッシェルに近い。バランス感覚はアンジェラ・ジョンソンあたりか。深淵で崇高な、というより、実際はもっと土着的な感じもする。

 バンドは左からハープのイオナ・トーマス、ベースのカール、ドラム&キーボード&グロッケンシュピールのロイ・ミラー、ヴァイオンリンのディオンヌ・ダグラス、チェロのジェイムス・ダグラスの5名。ディオンヌとジェイムスはローラの妹弟で、バック・ヴォーカルも務める。コーラスやリズム・アレンジが見事に調和をなし、瞬時に曲世界を創りあげるのは、妹弟がしっかりとあうんの呼吸で応えているからに相違ない。その意味では、曲風は異なるが、アイルランド出身のコアーズ(兄と姉妹3人の4人組)にも似ているか。弦楽器をフィーチャーしていたり、リズミカルなクラップを随時織り込みながらフロアを熱していくトラッドやフォーキーな感じも、コアーズらしさが垣間見える。

 語り掛けるように歌う姿は非常に優しく静かなのだが、存在感は大きい。これでどうだと押しつける豪快さではなく、研ぎ澄ますされたしなやかな強さと美しさで、観客の心を引き付けてしまう。しかも、ピンと張りつめた空気でもなく、ちょっとしたエピソードを曲前に挟み込みながら、緊張感を強要しない。そのさじ加減がまことに見事なのだ。それはアレンジにも現れていて、中盤で途中から披露したボブ・マーリィ「ワン・ラヴ」などでのステージと観客の距離をグッと詰めたりするあたりも絶妙だ。
 それだけではなく、“<Father>って日本語でなんていうの?”と聞いてから“「オトウサン、オトウサン」です"と言って始めた「Father Father」など、顔に似合わず(失礼)お茶目なところも。ミステリアスではなく、非常に親近感の沸くアプローチが目立ったのは、彼女の元来の性格はもちろん、信頼の置けるバンド(音も人間関係も含めて)が近くにいるという安心感からかもしれない。

 ハイライトはやはり、デビュー作『シング・トゥ・ザ・ムーン』のリード曲ともいえる「グリーン・ガーデン」。観客もスタンディングやハンドクラップで応え、なんだか祝祭的祝典的なムードに包まれた空間となった。

 アンコールはなかなか珍しく二度行なわれた。二度目は、ステージ・インするなり、背後のカーテンが開き窓越しに見える東京の夜景に向かって“ハロー、トウキョー”と呼びかける茶目っ気も。それから披露されたのは、弟のジェイムスとローラの二人のみによるアコースティックなスタイルによるマイケル・ジャクソン「ヒューマン・ネイチャー」。初来日公演に集った観客への感謝も込めて、ハートウォームに届けてくれた。

 絶叫やダイナミックな斬新さはないが、歌唱の背後にある人生観や歌が持つ普遍性というものを、観客の心にダイレクトに伝える圧倒的な説得力がみてとれた。そして、それを支えている妹弟含むバックが素晴らしいサポートをしていることも、忘れてはならないところだ。

 人間の機微を多彩な表情で細やかに演じたローラ。次作ではどのようなアプローチで我々に新たな刺激を与えてくれるのか、とても楽しみな存在だ。


◇◇◇


<SET LIST>

01 Like The Morning Dew
02 Let Me Fall
03 Flying Without You
04 Sing To The Moon
05 She
06 Is There Anybody Out There?
07 Diamonds~One Love
08 Father Father
09 Green Garden
10 That's Alright
《ENCORE #1》
11 Make Me Lovely
《ENCORE #2》
12 Human Nature(Acoustic ver.)(Original by Michael Jackson)


<MEMBER>
Laura Mvula(vo,key)

Dionne Douglas(vn,back vo)
James Douglas(Cello,back vo)
Iona Thomas(harp)
Karl(b)
Troy Miller(ds,glockenspiel)





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