15年ぶりの4枚目となる新作『アイ・ミスト・アス』を引っ提げての来日。90年代R&Bガールズ・ヴォーカル・グループのトップランナーとして活躍したSWV。2010年にリユニオン・ライヴを行なっているが、これが新作を伴っての正真正銘の復帰公演となる。個人的には2010年のリユニオン公演には残念ながら行けなかったので、ココとの再会はシャニース、ニッキー・ギルバートと共に行なった2008年の“Lady Soul Greatest Hits Tour”(その時の記事はこちら)以来になる。ビルボード東京2日目の2ndショウ。
黒人のファットなMCが“さわげー”“ハクシュ!ハクシュ!”と煽った後、SWVの3人がステージ・イン。左からリリー、ココ、タージ。それぞれがパステルな色彩のブルー、イエロー、ピンクのパンツを穿いての登場だ。
バックは左よりドラムのマイケル・クレモンズ(ココの旦那、彼は上述の“Lady Soul Greatest Hits Tour”でも来日していた。詳細はその時の記事をどうぞ)、ベース&キーボードのチャブラ・C・メーサー、そして右サイドにキーボードのイーヴァン・プライスという布陣。フィーチャーリングやBGMではCD音源を鳴らしていた。
序盤からタージがテンション上げ気味で場を盛り上げるが、そうするまでもなく、歌姫たちの再降臨に会場の熱気は高まっていた。15年ぶりの新作『アイ・ミスト・アス』も単なる復活アルバムではなく、90年代当時の空気をしっかりと継承した多くが望んでいたサウンドながら、現代でも浸透する力のある傑作だったのも、観客の彼女らへの熱が高まっていた要因の一つなのかもしれない。そして、過去のヒット曲ばかりにとらわれることなく、新作からの楽曲を中心とした2012年版SWV的ステージを構成してきてくれたことも嬉しかった。特に際立ったダンスではないものの、彼女らが隊列を組んでダンスを披露すれば、その一挙手一投足に歓声があがる。カムバックとガールズ・グループとして依然として現役であることを実感した観客から、どの楽曲においてもとめどなく歓声を送られた興奮のショウが続く。
もちろん「ライト・ヒア」「アイム・ソー・イントゥ・ユー」「ウィーク」といったヒット・チューンが飛び出せば、ヴォルテージはさらに上昇。ココ、タージ、リリーのハーモニーも曇るところなどなく、絶妙なヴォーカル・ワークを披露してくれた。
それに何よりもココの存在感。天を突くかのようなあの声量と美しい声には圧倒されっぱなしだ。それも私が、私がと前のめりにならず、タージ、リリーとハーモニーを奏でながら、ここぞという時にビシッと決めるのだから。抜群のコントロールに感嘆、そして脱帽といったところだ。
「エニシング」で一度中座したり、「ゼイル・ネヴァー・ビー」導入時のファンとのコール&レスポンスが少々冗長だった(3人それぞれが観客とコミュニケーションしながら、特にタージは2階のカジュアル席にまで来た)こともあり、そのためなのか「ユーアー・ザ・ワン」「レイン」などは1ヴァースだけだったりと、もっとじっくりと聴きたかったという楽曲もなくはなかった。だが、全体の構成として興味が殺がれたということではなく、ミディアム~スローを混ぜながらもアップのテンションのまま(多くがスタンディングしたままで楽曲を聴いていた)終盤へと展開するステージ力は見事の一言。「ゼイル・ネヴァー・ビー」の後、会場にいる誕生日の人たちへ向けて即興でSWV風バースデー・ソングをさすがのハーモニーでプレゼントしたりと、サプライズも演出。本編ラスト前の興奮の坩堝と化した「ドゥ・ヤ」への見事なつなぎにもなった。
アンコールの「ウィーク」のイントロが流れると多くのファンは歓喜、歓喜の渦。正味1時間ほどと決して長くはないパフォーマンスだったが、第一線を維持し続けてきた貫禄とこれからの期待も手に取るように伝わった良空間だった。
デビューしたのが1992年。それからの20年間にわたる声援とサポートを感謝した彼女たち。この公演に足を運んだファンや新作を聴いたリスナーの多くが、SWVの今後に胸躍らせる思いを宿したに違いない。そんな華やかで充実した夜となった。
◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 All About You (*)
02 Right Here
03 I'm So Into You
04 Anything
05 Show Off (*)
06 You're The One
07 Rain
08 Love Unconditionally (*)
09 If Only You Knew(Original by Patti Labelle) (*)
10 There'll Never Be (*)
11 Do Ya (*)
12 Co-Sign (*)
≪ENCORE≫
13 Weak
※(*)=SONG FOR ALBUM『I MISSED US』
<MEMBER>
Cheryl“Coko”Clemons(Vocals)
Tamara“Taj”Johnson(Vocals)
LeAnne“Lelee”Lyons(Vocals)
Evan Brice(Keyboards)
Chabra C Mercer(Bass)
Michael“Big Mike”Clemons(Drums)
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復帰作『アイ・ミスト・アス』。
(L→R:タージ、ココ、リリー)
90年代ガールズ・ヴォーカル・グループといえば、SWVとアン・ヴォーグ。もちろんどちらも好きだったのだが、どちらかと言われたら、ややファンキーっぽさがあるアン・ヴォーグ派だった当時。ただ、現在振り返ってみると、見事な大復活作をリリースして充実のSWVに比べ、アン・ヴォーグのドタバタ加減といったら。もちろんドーンの存在がそれに拍車をかけているのは否めないのだけれども。
つい近日でも、復帰脱退を繰り返すドーンが、2002~2003年に一時的に脱退していたマキシーンと組んで新生アン・ヴォーグを結成すると宣言。それに対してデビュー以来活動を続けてきたシンディとテリー側には、ドーン復帰までの2003~2008年に加入していたローナが再びメンバーへ復帰すると発表するなど、今後もシコリが残りそうな展開で……。ミリバニリとザ・リアル・ミリバニリじゃないんだからさ……。
SWV - Right Here (Human Nature Mix)
SWV - I'm So Into You