決定機を逃し続け、ドロー寸前で宮本新体制初勝利を献上した痛恨の一敗。
監督の長谷川健太をはじめ、大森、リンス、丹羽と元G大阪勢が古巣に“恩返し”をするかというストーリーも戦前の話題ではあったが、首位・広島を追う2位のFC東京と降格圏を脱したいG大阪というどちらも負けられない一戦。これまで鬼門のアウェイG大阪戦と言われていたこともあったが、首位との勝ち点差が5と縮まり、追撃態勢のギアを上げるには、タレントが揃っているとはいえ、今季下位に低迷している名門に対して結果を残さなければいけなかった。
試合開始直後からFC東京がゴール奪取に牙をむく。室屋、富樫と立て続けに決定機を迎え、6分にはディエゴ・オリヴェイラから東、室屋と繋いでのクロスからフリーの大森はボレー失敗、そのこぼれ球を太田がシュートするもGK東口に弾かれ決まらず。その後もG大阪の判断の遅さや連係にスムーズさを欠いたところを、FC東京が攻め立てて得点の匂いを感じさせる。
G大阪も19分に右サイドからの三浦のクロスをニアで一美が合わせてFC東京ゴールをヒヤリとさせるが、21分に米本の裏のスペースへのパスに反応した東がライン上で折り返したクロスを大森が合わせるも、これもGK東口の正面。
すると、ジリジリした展開が続くなか、決めきれないFC東京を尻目に、34分にG大阪が得点を挙げる。G大阪は右奥コーナー付近から藤本がエリア内のアデミウソン送るとすぐに右サイドの遠藤へ。それを受けた遠藤はファーへクロス。森重と三浦の競り合いからファビオの前にボールがこぼれたところを、当たりが良くはなかったがゴールへ押し込み先制。さほど形が出来ていなかったG大阪がリードして前半を終えた。
FC東京は前半終了間際に東が負傷したことで早くも田邉をピッチに送らざるをえない展開。ただ、それでもG大阪が特に守備でなかなか落ち着きを取り戻せないでいるなかで、攻勢を強めていく。46分に高萩の縦へのスルーパスを受けたペナルティアーク付近の富樫が反転してシュートするも、GK東口がセーヴ。51分、高萩のループ気味のヘッドはライン上で菅沼がクリア、その流れでディエゴ・オリヴェイラがシュートを放つも決まらず。その後も57分に富樫、61分にディエゴ・オリヴェイラとチャンスを作るがゴールネットを揺らせない時間が続く。
さらなるビッグチャンスは63分から。右サイドからの大森の高速クロスが一度ファーへ流れると、そのボールを太田が中央へクロス。G大阪DFとの駆け引きに勝ったボックス中央の富樫がフリーでヘディングシュート。だが、この好機にもクロスボールをしっかりと頭に当てることが出来ず、一連の流れの中で最大のチャンスを逃してしまう。決まれば富樫はバースデーゴールだっただけに、その強い思いがかえって気負いとなっていたのだろうか。
なかなか得点しないFC東京の隙をついて、G大阪は69分に右サイドを突破した倉田がエリア内へ進出してクロスを送ると思いきや角度の狭いところからシュートを放つと、右ポストに直撃。少ないチャンスから追加点を狙うも、ここはFC東京が助けられた形に。
G大阪がブロックを作って守ろうとした86分、室屋が右奥ライン際からグラウンダーのクロスを送ると、ボックス内で受けた永井がボールを浮かせて中央へ頭で流す。これを受けたエリア内のディエゴ・オリヴェイラはやや左へボールを流してしまうが、巧みなステップワークでG大阪DF二人を引き付けながらかわし、さらに目の前の三浦を抜いてゴール上部のネットへ直接突き刺し、FC東京が同点に追いつく。
さらに攻勢を仕掛けるFC東京だったが、疲労もあってカウンターのチャンスを相手に阻まれてシュートへ繋げられず、逆にG大阪のカウンターを受けるという一進一退の展開に。その後、アディショナルタイム4分も経過してドロー決着が濃厚となりそうだったが、ほぼラストプレーとなる95分、右エリア角前から横パスを中央で受けた高が、一瞬ミドルを打ちかけるもエリアライン上のアデミウソンへパス。アデミウソンがゴールを背にしながらやや左へと持ち出して素早い反転から左脚を振ると、これがゴール右へ突き刺さる。G大阪サポーターの歓喜が響き渡ってまもなくタイムアップ。劇的なエンディングではあったが、FC東京にとっては最低限の勝ち点1も見えていただけに、痛すぎる敗戦となった。
とにかく、この日は厄日だったともいいたくなるように、特に大森、富樫がことごとく決定機を決められず。さらに先制されたことで、気負いが増し、内容とは異なり勝ち点を落とす結果となった。終盤にディエゴ・オリヴェイラのスーパーゴールで追いついたが、全体的にゴール前でのパスやシュートへの判断に遅れを見せ、シュートチャンスを削いでしまう場面が散見。ディエゴ・オリヴェイラもボールを持ち運べるのだが、やや持ち過ぎの感があってシュートへ行く前に行く手を阻まれたり、ディエゴ・オリヴェイラのボールキープに頼り過ぎて、周囲のサポートが遅れたり距離感が遠くなりがちになるなど、攻勢を効率よく活かせていない印象も。
また、太田、室屋のオーヴァーラップは武器ではあるが、ゴール前へ攻め込みながらシュートを打てずにボールを奪われると、上がっていたポジションから守備へ戻るまでに多くの距離を走らされ、後半には疲労からディフェンスポジションへの戻りに遅れをもたらすことに。それを埋めるためにボランチにもよりカヴァーリングの負担がかかり、ディフェンス時の適度な距離感を保てず、失点の危険性を孕みやすい状態にもなっていた。それと、チャン・ヒョンスがややこの数試合で守備時に相手をマークしきれていない場面があり、もちろん一人のせいというわけではないが、DF陣やボランチとの受け渡しなどの課題も露見した。
橋本が右ハムストリングス筋挫傷で全治約4週と思った以上の離脱期間を強いられ、この試合では運動量豊富でキーマンとなる東が負傷交代。次節ミッドウィークの柏戦には契約上ディエゴ・オリヴェイラが出場不可など、勝ち点を落としたこともそうだが、再び厳しい状態を迎えることとなったFC東京。首位・広島との勝ち点差が開き、1試合消化が少ない川崎が連勝すると2位の座も明け渡す状況となった。夏の厳しい連戦で思うような試合展開になりづらいのは承知だが、それでも優勝するチームは厳しい状況でも最低限の結果を残してきている。長崎、G大阪と下位に苦しむチームに勝ち点を落としていては、優勝争いは遠のいてしまう(偶然にも長崎、G大阪、どちらも金曜日開催の“金J”だが……)。次節の柏も降格圏外ながらも勝ち点を積み上げれいかなければ、いつ圏内へ沈んでもおかしくない順位に甘んじており、勝ち点3を奪いにくることは必至だ。
首位・広島との直接対決まであと6戦。もうこれ以上の差は致命傷になる。選手・スタッフ、関係者すべてが勝ち点3を奪い取るための準備やタスクを遂行し尽くすことが、結果として積み重なる。チームとしてここからが本当の意味での踏ん張りどころだ。
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【明治安田生命J1リーグ 第21節】
2018年08月10日(金)19:03試合開始 パナソニックスタジアム吹田
入場者数 24,879人
天候 晴 / 気温 29.5℃ / 湿度 43%
主審 西村雄一 / 副審 武田光晴、野村修 / 4審 谷本涼
G大阪 2(1-0 / 1-1)1 FC東京
≪得点≫
(G): ファビオ(34分)、アデミウソン(90+5分)
(東): ディエゴ・オリヴェイラ(86分)
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≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 48 チャン・ヒョンス
DF 03 森重真人
DF 06 太田宏介
MF 38 東 慶悟 → 田邉草民(45+1分)
MF 07 米本拓司
MF 08 高萩洋次郎
MF 39 大森晃太郎 → 永井謙佑(72分)
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
FW 17 富樫敬真 → リンス(65分)
≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 25 小川諒也
DF 29 岡崎 慎
DF 05 丹羽大輝
MF 27 田邉草民
FW 11 永井謙佑
FW 13 リンス
≪監督≫
長谷川健太
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【明治安田生命J1リーグ 2018シーズン日程】
第01節 2018/02/24(土)14:00△FC東京 1-1 浦 和(H・味スタ)
第02節 2018/03/03(土)15:00✕FC東京 0-1 仙 台(H・味スタ)
第03節 2018/03/10(土)15:00✕FC東京 0-2 磐 田(A・ヤマハ)
第04節 2018/03/18(日)15:00〇FC東京 1-0 湘 南(H・味スタ)
第05節 2018/03/31(土)15:00〇FC東京 3-2 G大阪(H・味スタ)
第06節 2018/04/08(日)14:00〇FC東京 5-2 長 崎(A・トラスタ)
第07節 2018/04/11(水)19:00〇FC東京 2-1 鹿 島(H・味スタ)
第08節 2018/04/14(土)15:00✕FC東京 0-1 C大阪(A・ヤンマー)
第09節 2018/04/21(土)13:00〇FC東京 1-0 清 水(A・アイスタ)
第10節 2018/04/25(水)19:00〇FC東京 3-1 広 島(H・味スタ)
第11節 2018/04/28(土)15:00〇FC東京 3-2 名古屋(H・味スタ)
第12節 2018/05/02(水)19:00△FC東京 0-0 神 戸(A・ノエスタ)
第13節 2018/05/05(土)14:00〇FC東京 2-0 川 崎(A・等々力)
第14節 2018/05/13(日)16:00△FC東京 0-0 札 幌(H・味スタ)
第15節 2018/05/20(日)15:00△FC東京 0-0 鳥 栖(A・ベアスタ)
第16節 2018/07/18(水)19:00〇FC東京 1-0 柏 (A・三協F柏)
第17節 2018/07/22(日)19:00〇FC東京 5-2 横浜FM(H・味スタ)
第18節 2018/07/27(金)19:00✕FC東京 0-1 長 崎(H・味スタ)
第19節 2018/08/01(水)19:00〇FC東京 2-1 鹿 島(A・カシマ)
第20節 2018/08/05(日)19:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ)
第21節 2018/08/10(金)19:00✕FC東京 1-2 G大阪(A・吹田S)
第22節 2018/08/15(水)19:00 FC東京 vs 柏 (H・味スタ)
第23節 2018/08/19(日)13:00 FC東京 vs 札 幌(A・札幌ド)
第24節 2018/08/26(日)19:00 FC東京 vs 湘 南(A・BMWス)
第25節 2018/09/02(日)19:00 FC東京 vs 鳥 栖(H・味スタ)
第26節 2018/09/15(土)14:00 FC東京 vs 仙 台(A・ユアスタ)
第27節 2018/09/22(土)19:00 FC東京 vs 広 島(A・Eスタ)
第28節 2018/09/29(土)17:00 FC東京 vs 清 水(H・味スタ)
第29節 2018/10/07(日)16:00 FC東京 vs 名古屋(A・豊田ス)
第30節 2018/10/20(土)19:00 FC東京 vs C大阪(H・味スタ)
第31節 2018/11/03(土)14:00 FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス)
第32節 2018/11/10(土)14:00 FC東京 vs 磐 田(H・味スタ)
第33節 2018/11/24(土)14:00 FC東京 vs 川 崎(H・味スタ)
第34節 2018/12/01(土)14:00 FC東京 vs 浦 和(A・埼 玉)
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