*** june typhoon tokyo ***

Nik West feat. John Blackwell@BLUENOTE TOKYO




 Respect In Purple...紫色の音に思いを馳せるファンキーな夜。

 「プリンスの夢を見たら、翌日本人から電話がかかってきた」というサクセスストーリーを持つ米アリゾナ州出身の女性ベーシスト、ニック・ウェストの来日公演。前回も同じくブルーノートでの公演だったが(その時のレポート→「Nik West@BLUENOTE TOKYO」)、それ以来約2年ぶりの本公演では、2000年からプリンスのバンド、ニュー・パワー・ジェネレーションでドラマーを務めてきたジョン・ブラックウェルを迎えてというから、タイミングといいプリンス色に染まるのは明白だった。ジョン・ブラックウェルは宇多田ヒカルのツアードラマーをはじめ、日本のアーティストと絡むことも少なくないゆえ、認知度も高いスーパードラマーなのだが、イントロダクションでバンド・メンバーがステージインして担当のポジションについてもその姿が見えない。

 左からキーボードのクリス・ターナー、ギターのアリエル・ベルヴァレイア、ドラムセットにはRJノーウッドJr.が座り、右手前にギターのヒュービー・ワン、右奥にバックヴォーカルのニシェル(ニック・ウェストと姉妹らしい)。髪の短い黒人男性クリスとRJ以外はニック・ウェストに倣ってか奇抜なヘアスタイル。白人女性ギタリストのアリエルは金髪(銀?)が眩しく、ヒュービーは赤色のモヒカン・スタイル、ニシェルはニックと同じ巻貝のような赤のトサカヘアで登場。やはり、ジョン・ブラックウェルがいないと怪訝にしていると、アリエルとヒュービーのギターバトルへ。アリエルはディストーションをかけてマイケル・ジャクソン「ビート・イット」のエディ・ヴァン・ヘイレンのギター・ソロ・パートをはじめ、ヘヴィなギターの楽曲のフレーズを繰り出すと、ヒュービーが“ファンク!”と言い放ってからシックなどのディスコ・ファンクのフレーズで応戦。それを繰り返すうちにクール&ザ・ギャング「ゲット・ダウン・オン・イット」のフレーズを共に奏で出したところで、ニック・ウェストがステージイン。ロックもファンクもまとめてニックたちが面倒見るとでも言わんばかりのセッションで、ショウの本編が幕を開けた。
 
 ジョン・ブラックウェルはというと、中盤に現れて観客にコール&レスポンスを促して煽った後、プリンスとの思い出をたっぷりと(20分くらいか)トーク。実は、初日の1stショウで左腕を痛めたらしく、手首から肘にかけて湿布と思われるテープが貼られているという痛々しい姿だった。トークはもちろん英語なので、英語が解からない人は約20分ばかり演奏なしで何を話しているのかが解からないジョンのトークを聞いたことになる(もちろん自分も事細かな話の内容は解からず仕舞い…苦笑)。もし、単に“ニック・ウェスト・フィーチャリング・ジョン・ブラックウェル”の公演を観に来たということであれば、ジョンのドラム演奏がないばかりか、演奏を止めて長い時間トークを聞かされることに対して少なからず不満も出るかもしれない。だが、そこは“プリンス”で繋がっている二人だと知っている観客が多数集ったフロア。前方にはプリンスのTシャツを着ていた客もいた。むしろ、ジョンとプリンスとの思い出、ジョンがプリンスと会った時の心境や肉抜きのオニオンとレタスのサンドウィッチを買った話などをモノマネを含めて披露したという貴重な時間になったのではないか。

 ニックもプリンスに「ニックらしいベースを弾けばいい」と言われた話などをして、終盤はプリンス・メドレーに。一端ステージアウトしてから再登壇すると「プリンスに感謝を、そして愛を」とフロアに呼びかけてからプリンスの「キス」へ。再度ジョンも登場して観客を煽り、プリンス・トリビュートと化したステージが幕を閉じた。



 振り返ると、序盤に次のアルバムに収録予定の新曲「セイ・サムシン」や代表曲「フォビッドゥン・フルーツ」を演奏した以外はほぼカヴァーのオンパレード。前半で披露したこちらもプリンス影響下にあるアンディ・アローの「ピープル・プリーザー」ではコール&レスポンスを含めたパフォーマンスとなったが、実はアンディ・アローとのレコーディングにジョンが参加していたとか。プリンスという幹から繋がったピープル・トゥリーが東京の夜を紫に染めたということか。全身シルヴァーのスペーシーなコスチュームスーツに身を包んだニックは、時に最前列中央に設置された花道的にせり立つスクエアステージで身を屈ませながらベース演奏したかと思えば、ステージではアリエルとヒュービーとラインをなしてダンスしながらのプレイ、さらにはニックがフロアを演奏しながら一周するなど、ファンキーなパフォーマンスで観客を魅了。アップ、ミディアムとさまざまなテンポ(そしてジョンとの絡みではややグダグダになりかけたジョンのパフォーマンスにもきっちりとアドリブで合わせたりと)で繰り出すファンキーなボトムは、やはりそこかしこにプリンスの“変態的”な(褒め言葉)うねりが。ニックのグルーヴィでファンクな演奏を通して、プリンスとの邂逅を疑似体験している……そんなことすらも感じられたステージだった。

 前回から比べると、キーボードのクリスは実にスティーヴィー・ライクな鍵盤捌きや音鳴りをさせ、姉のニシェルがバック・ヴォーカルで援護することでニックのヴォーカルも映えるなど、バンドとしての質も高まっていた。やはり惜しむらくはジョンの怪我だが、それは次回に楽しみを持ち越すことにしておこう。そして、ニック自身の楽曲を中心に据えたセットリストでのステージを期待したいところだ。



◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 BASS GROOVE
02 Say Somethin'
03 People Pleaser(Andy Allo's Cover)
04 Forbidden Fruit
05 Bottles and Cans(Angie Stone's Cover)
06 
07 Let's Work(Prince's Cover)
≪ENCORE≫
08 Kiss(Prince's Cover)

<MEMBER>
Nik West(b,vo)

John Blackwell(ds)
Nichelle(back vo)
Hubie Wang(g)
Ariel Bellvalaire(g,vo)
Chris Turner(key)
RJ Norwood Jr.(per)



◇◇◇







ちなみにこちらはアンディ・アローの「People Pleaser」









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