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Alicia Keys@横浜アリーナ

■ Alicia Keys@横浜アリーナ

Aliciakeys_2013settheworldonfire

 アリシア光臨。成長と貫録。

 横浜アリーナでのアリシア・キーズ“Set the World on Fire Tour”を観賞。発表当初は、「平日の月曜、しかも新横浜だから、追加も出ると見込むだろうし、チケット即売り切れはないだろう」なんて高を括っていたら、チケットはすぐに完売。慌ててチケットを探して入手した次第。やはり人気は衰えていなかった。

 アリシアのライヴを観たのは2004年10月の今は亡き舞浜・東京ベイNKホールでの公演以来。あの時は前から5列目くらいという良席だった。その後、2008年夏に“サマソニ”、2010年にビルボードライブでのプレミア・ショーケースで来日していたが、ツアーとしてのライヴ公演は2004年以降はなかったはず。となると、約9年ぶりのツアー・ライヴということになる。日本が1日だけの公演となってしまったのは、ツアー前後の日程によるものか(当初は日本はツアー日程に組み込まれていなかったのだろう)。

 定刻から20分過ぎ、場内が暗転すると、スクリーンに「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」で歌われる摩天楼の街並みがCGで映し出される。中央にあるグランドピアノを見下ろす高台に後ろ向きで立つアリシアのシルエットが見えた瞬間、場内は割れんばかりの歓声。のけぞるようにして右手に持ったマイクを高く突き上げて、オーディエンスを煽るないなや振り向いて、凛とした表情で微笑むアリシアがいた。

 本編最初は「カルマ」から。力感溢れるダンスを繰り広げる男性バックダンサーを従えて、堂々と中央に立つ。2004年の時も「カルマ」は前半の演目だったはずだ。グイグイと引っ張っていくような野性味のあるビートは、ライヴを牽引する前半に持ってこいなのだろう。続く「ユー・ドント・ノウ・マイ・ネーム」ではそのPVよろしく、男性との電話での会話を寸劇風に再現。恋にときめく女性のチャーミングな部分を演じて見せた。「カルマ」で凛々しさを、「ユー・ドント・ノウ・マイ・ネーム」で愛しさを、と女性が持つ魅力をたっぷりと表現していく。

 思えば、その2004年のライヴでは、“女性は今こそ立ち上がるべき”というような強い信念をアピールしながら歌い、ピアノを弾いていた。それは美しくはあるが、一種の使命感を一身に感じた“女戦士”のような立ち振る舞いにも感じた。曲間にも“Ladies!”とコールし、“女性の素晴らしさ、尊さに自身が気づくべきよ”とでも言いたげな歌い口だった気がする。

 だが、今回は少々違った。少々というのは、女性に対する信念やメッセージは以前と変わらないからだ。アリシアのテーマはいつもそこにある。もちろん、男性を無視している訳ではないが、特に女性たちの心を焚き付けるような歌を歌ってきた。「ウーマンズ・ワース」しかり、女性ならではの一途な気持ちを歌った「ノー・ワン」しかり、そしてアルバムのタイトルにもなった「ガール・オン・ファイア」しかりだ。
 ただ、異なるのは、その問いかけ方。前回がドラクロワが描いた「民衆を導く自由の女神」風だったとすれば、今回はその勇ましさが前面に出てはいない。優しく、温かく問いかけながら、オーディエンス自らの発露によって意識を芽生えさせるといったような、太陽的な慈愛に満ちた問いかけだ。だが、決して緩みはしない。キリリとシャープな佇まいで、生ピアノやウーリッツァーの音色を添えながら、心根にダイレクトに訴えてくる。その訴求力は、前回とは雲泥の差だ。それは、スウィズ・ビーツと結婚し、母となった心境の変化が生み出したものだろうか。自立と母性の両面を感じさせるヴォーカルは、思わず息を呑んでしまいそうな迫力と訴求力を湛えていて、これぞアーティストといった風格。しかも、実直で真摯なところが素晴らしい。

 そして、年を経ても信念はぶれていない。開演前にはマイケル・ジャクソンやジャクソン5の楽曲が数多く流れ、一旦中座しバック・ヴォーカルに任せた場面ではマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルで知られるソウルの名曲をデュエットさせた(このデュエットもスキルフルで熱気がみなぎっていた)りと、ソウル・ミュージックへの愛も感じられた。それはもちろん、ソウル・ミュージックへの愛だけではなく、さまざまなものへの“愛”の素晴らしさをも説いていたようだ。MCはほんの少しばかりしかなかったけれど、彼女から発せられる言葉には、今ここにいられる幸せと“愛”の大切さが詰まっていた気がする。やわらかで微笑ましい表情は、きっとそれを表わしていたに違いない。

 アンコール・ラストは、スクリーンにジェイ・Zが映されラップを披露、その後アリシアが登場して「エンパイア・ステート・オブ・マインド」を熱唱。“アリガトウ、ジャパン”“アリガトゴザイマシタ”と感謝の声を客席へ届けると、一夜限りの俊爽なステージは幕を下ろした。
 
◇◇◇

<SET LIST>
00 Introduction~Empire State Of Mind(Intro)
01 Karma
02 You Don't Know My Name
03 Tears Always Win
04 Listen To Your Heart
05 Like You'll Never See Me Again
06 Woman's Worth
07 Diary
08 Un-Thinkable (I'm Ready)
09 Try Sleeping With A Broken Heart
10 Fallin
11 You're All I Need To Get By(Whitney Keaton&Raphael Smith)(Original by Marvin Gaye&Tammi Terrell)
12 When It's All Over
13 Limitedless
14 Unbreakable
15 Brand New Me
16 If I Ain’t Got You
17 No One
≪ENCORE #1≫
18 New Day
19 Girl On Fire
≪ENCORE #2≫
20 Empire State Of Mind (Part II) Broken Down (Jay Z on video)
21 Outro


<MEMBER>
Alicia Keys(vo,key)

Al Carty(b/musical director)
Hanan Rubinstein(g)
Brandon Coleman(key)
Jermaine Parrish(ds)
Whitney Keaton(back vo)
Raphael Smith(back vo)

Jermel McWilliams(dancer)
Santron Freeman(dancer)
Brandon Mitchell(dancer)
Jian Pierre(dancer)

◇◇◇

Aliciakeys_2013reebok


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