時事放談22 By半平太

好き勝手、自分勝手な放談です。
放談なんで、人の批判には絶対反論しません。でも読んでます。

教育基本法と民主主義 西部邁氏との仮想対話 その①

2006-04-17 | Weblog

10年ぐらい前だろうか、西部邁氏の著作を続けて読んだ。ちょうど細川内閣の頃で、「新党日本」が流行った頃だった。「知識人は大衆の典型である」とか「戦後民主主義批判」とか、なかなか興味深いことを書いておられた。ちょっと過激で私には賛同しがたい面もあったが、勉強にはなった。

西部さんの最近の発言を検索したら2005年の「せんき社」のインタビュー記事が手に入った。叱責を覚悟で西部氏との仮想対話をしてみたい。

なお「赤文字」は西部氏が本当にいっていること。

「緑文字」は私の「創作」です。創作には(創作)と明記します。

青文字は私の言葉です。

☆西部氏 今の日本は小泉政治に典型的にみられるように「デマゴギーの時代」だと思う。

デマゴギー。政治的扇動、民衆扇動ですね。なるほど、ごもっとも。小泉氏は扇動がうまい。中曽根さんも相当だったけど、比ではない。これは中曽根さんの抑制心をほめてるんですけどね。中曽根さんだって小泉さんぐらいはできたでしょう。でもやりすぎてはいけないという抑制心があったんでしょうね。中曽根さんは将校だったから、ヒトラーのやり口、その目で見ていますしね。あ、角栄さんも凄かった。でも狂乱物価ですぐ国民にそっぽ向かれた。かなりの短期政権なんですよね。角栄さんて。

☆民衆はデマ(ウソ話)にだまされやすい。「民主主義からは必ず良き事態がもたらされる」などという非常識を信じてしまった。

はあ、なるほど。先生のいう「民衆」って「大衆」のことで、その典型が知識人ですよね。朝日とか産経の論説員とかいう人たち、TVのコメンテイターとか、ああいう人が先生のいう大衆の典型。でも「庶民」は信じてるかなー。微妙だなー。杉村タイゾウ君なんて人気あるようにメディアは描くけど、私の周りの庶民的な人はボロクソ言ってます。税金泥棒とか。私としては民主制によって悪い事態がもたらされることも多いけど、民主的手続きそのものが破壊されなけれ、出てしまった悪い結果も改善の方向に向かうと思いますけどね。

☆君はなんにもわかってないね。庶民庶民ていうけど、庶民ってあれ。吉本隆明の「大衆の原像」とかいうやつ?知恵ある庶民なんてもう日本では絶滅危惧種でしょ。(創作)

はあ。でも「大衆の原像」なんて小難しくて結局私には理解できなかったようなんで、吉本さん、もう十数年読んでもいないし、違いますね。昔かたぎの職人さんとか、曲がったことは大嫌いなおじさん、とかおばさんとか。もっと簡単な意味で言ってます。

☆これは僕の持論なんですが、デモクラシーを民主主義と訳してしまったのが、そもそもの大間違いだった。素直に「民衆政治」と訳せばよかった。中略、ところが民主主義と訳してしまったために「国民が主権を持つ」となってしまった。主権というのはサブリンの訳ですが、「崇高な」という意味です。

☆「民衆政治」と訳せば「民衆の質」が問われるわけですね。「民主」とすると民衆が「主」つまり「崇高な存在」にはじめからなってしまう。本来民衆が政治をするなら、民衆も崇高な存在になるべく努力したり勉強したりしなくちゃいけないのに、その条件がなくなって、人間であるというだけで、「主」、つまり崇高であるとなってしまっている。

☆ぼくの素朴な日常生活の経験としても人間ごときにサブリン(崇高)という形容を与えるのはどうしても納得できない。

☆はあ、そういえば私は崇高じゃない。若い頃に比べると随分我欲は減りましたけどね。

 ☆多数派の意見だからといって正しいわけではない。少数意見が排除され、「民意」なるものが金科玉条化された時、民主政治はたちどころに堕落する。

その通りですなー。よくわかります。

☆ところが戦後60年、安易に民主主義を礼賛しつづけてきた結果、ついに日本に「デマゴキーの時代」がやってきてしまった。

礼賛(らいさん)ですか。「陰影礼賛」って必ず教科書にありましたね。私ね、中一ぐらいの時、クラス委員の選挙で「みんなでしめしあわせて」、クラスで一番アホなやつを学級委員にしたことあるんです。たんにふざけたのか、先生が民主的に決めろとうるさく言うので、「民主的に決めるとこんなバカな結果になるぞ」と先生に反抗したのか。覚えてないですけどね。みんなでやったから、その時の同級生は「礼賛」なんかしてなかった。クラス委員なんかどうでもいいと思っていた。でも大事なことは結構民主的に決めました。民主といっても「多数決」ですけどね。

☆レーニンが所属していたのは「ロシア民主社会党」、それが共産党に名を変えた。実は共産主義もナチスも、みんな民主主義からでてきた。ところがこんな単純な前提的常識すらわきまえないで、民主主義や民意を「至上の価値」のように論じる日本人が多すぎる。僕が神ならこんなわけのわからない民族は滅ぼしたほうがいいと思う。僕は「愛国」じゃない。今の日本は僕の思う日本ではまったくないと思っているから。

☆ナチスが民主主義から出てきたのは有名ですね。たしかマルクスも最初、ドイツ民主党でしたね。今世紀最大の虐殺者はヒトラーだと言われるけど、僕はスターリンの方がひどい気がする。君臨期間が長いですからね。どのぐらい粛清したのだろう。民主主義ってのは国民が「主たるべき崇高な存在」じゃないと、まあ、崇高は無理でもそうなる努力をしないと、非常に恐ろしい結果を生むものですね。あと、僕はマスコミやTVや政党が使う「民意」という言葉も怖い。民意なんて分かれて当然なのに、選挙やって数が多いと、世論調査で7割ぐらいあると、それがいつのまにか「絶対の民意」になってしまう。郵政がそうでした。あれは「民意全体主義」だと思う。「民意」という神の前には万人がひれふさなくてはいけない雰囲気がある。野田聖子氏なんて本当にひれふしていた。永田議員はメール嘘、小泉氏は「大量破壊兵器がイラクにあるという嘘」。どう考えても小泉氏の嘘の方が格段にひどいのに、メディアが騒いで民意が動かないと、あんなひどい嘘ついても平気な顔をして桜鑑賞していられる。それにしても「滅んでしまえ」とはまた過激な。でも漱石も三四郎で「日本は滅ぶね」とヒロタ先生に言わせてますね。関係ないかもしれないけど。

次回は「米国こそ左翼である」で、お話をさせてください。

 

まとめ

僕は自分の頭でものを考えたいタイプだが、聞くにたる話は拝聴する。西部氏がなんであれほど民主主義を批判するのか。僕はそれが知りたかった。僕は西部支持者でも司馬史観の徒でもない(あ、でも司馬さんの作品は大好きです。でも大好きと盲従は違います)。左翼でも右翼でもリベラルでもない。人の話を聞いて、自分で考えている。「主義」や「イデオロギー」は非常に怖いものだと思っているからだ。主義のためなら人はどんなに残酷にもなれるし、主義の敵に対して過剰な攻撃を加えて悔いることもしない。時には本当に殺したり、傷つけたり、ののしったり、暴力をふるう。ああはなりたくない。価値相対主義に陥ることなく、自分の頭で考えるのは難しいし、できないかもしれないが、努力はしてみたい。その為にこのブログを書いている。

となんかカッコつけて書いたが、自分が「民主主義者」なのは自分でもわかっている。だからこそ、ある程度きちんとした言葉で語られた民主主義批判(西部氏も相当過激ではあるが)には、きちんと耳を傾けるべきだと思った。自分の頭で考えるために。

それと、これは小声で言わないと凄く怒られるのだが、小泉氏の政治はもはや「衆愚政治」の域に達していると思う。小泉批判をする人はなんで支持した国民を批判しないのだろう?なんとなく理由はわかるが、それじゃいけない。

僕が石原氏への批判の中で「民主主義はベストではないがベター」と書いたのは、民主主義の大きな欠陥や「おとし穴」を強く意識しているからである。石原氏にもどれば、僕と同じように民主主義の欠陥を意識して採決禁止を裁可したなら、日教組攻撃の論理などに頼ることなく(頼っているという意味ではない、発言をきいていない)、はっきり「衆愚政治」「衆愚会議」の危険性を指摘してほしい。

けれど、僕の目には、石原氏や小泉氏こそ、まさに民主主義の欠陥が生み出したおぞましい存在(怪物)に思えるので無理だろうなー。

僕は前に全体主義は親のかたきのように思うと書いた。現在のところ、民主主義にかわる優秀な政治制度はないように思う。とすれば「民」が問われるということになる。民主主義も民意も「至上の価値」ではない。その点は西部氏に賛成である。

教育基本法のことには触れなかったが、民主主義を守れ、という人は、僕も含めて「民主主義の危険性」を十分意識すべきだと思う。ナチスが(いろいろ工作はしたが)、圧倒的な国民の支持(民意)によって、民主的に選ばれた事実を厳粛に受け止めないといけないだろう。民主政治体制が独裁体制を生みだす可能性を大いにもっており、現に小泉氏という「プチ独裁者」を生み出した事実をはっきり認識しないと、単なる民主主義原理主義者になってしまう。

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2 コメント

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アホに権力w (ニケ)
2006-04-17 18:34:42
TBありがとうございます。

はじめまして、ニケと申します。よろしく。



20代の後半、30名ほどの会社で突然労組委員長をやらされた時はうろたえました。一緒にキャバレーに通っていた友人も書記長にされてなにをしていいのやら・・

>クラス委員の選挙で「みんなでしめしあわせて」、クラスで一番アホなやつを学級委員にしたことあるんです。

あ、これだった!のだと(笑)

でもその後、賃上げに対して社長が拒否したことからスト決行となり、皆が一糸乱れず行動してくれたことにも驚きました。

権力を持つことがどういうことかもそのとき少し感じました。

幸い私は権力志向ではなかったので、一年で早々に逃げました(笑)

アホに権力を与えては・・イケナイ・・ですよね^^
Unknown (知足)
2006-04-18 20:37:37
半平太さん TBをどうも。



私が取り組んでいる情報操作、洗脳社会問題と関係深そうですね。



http://www.k5.dion.ne.jp/~hirokuri/

にもどうぞ。

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