
日本ハム斎藤佑樹投手(26)が、珍しく「ダメ出し」連発で5年目を船出した。キャンプ第2クール3日目の8日、紅白戦の紅組で先発。今季初実戦を最速140キロの直球主体に2回2安打1失点(自責点0)で終えた。味方の3失策にリズムを乱されたことを考えれば及第点の内容も、本人はぶぜん。ポジティブ発言が通例だが、強烈な自己否定の言葉を並べた。逆に秘めた自負をのぞかせる、希望あふれる試運転になった。
ふくれていた。あの国民的スマイルはどこへ消えたのか。佑ちゃんは表情をこわばらせた。総括でバッサリ、バッサリと、自らを切り捨てていった。日本ハム斎藤は2回を33球、勝負の5年目の第1歩に、ダメ出しのオンパレードだった。
「すべてを修正してやりたい。この時期に気付くのは遅すぎる」
「結果は見た通り。まだやるべきことはたくさんある」
「納得はしていない」
「打者を攻める投球? それはしたつもりです」
「収穫? 今日に関しては、あまりない」
元来のポジティブなキャラクターとは別人だった。
厳しい自己批評とは対極で、内容は合格点だった。1回。先頭の西川を打ち取ったが、いきなり二失でピンチを招いた。続く中島をカウント0-1から、外角低めツーシームで誘った。二ゴロ併殺。「自分の打撃が…。併殺はダメなところで引っかけてしまった」。しつこいスタイルで知られる昨季2番打者を、調整過程とはいえ術中にはめた。
天性の投球センスを発揮できる下地が整いつつある証明を、随所に発揮した。またも先頭打者は失策で無死一塁の2回。レギュラー格の近藤に2-2から内角低めを、直球でえぐった。バットは無反応。判定はボールも、見逃し三振と紙一重。最速は140キロとはいえ、大胆に満点のキレで攻め込んだ。栗山監督は、絶賛した。「いろいろなこと(守備のミス)もあり点は取られたけどね。ああいう感じなら『斎藤佑樹』らしく投げられる」。右肩の大きな故障も含め二人三脚で伴走してきた師は、覚醒の予兆を見た。
超ネガティブなスタートは、秘めた確信の表れだ。斎藤は気持ちを落ち着かせた後に1人、紅白戦を見つめた。静かな笑みをたたえ、言った。「良かったですよ。まだ、という部分はもちろんありますけれど、良かったですよ」。背伸びもせず、等身大で大勝負へ出発した。自分をおとしめた裏に、希望の光はある。【高山通史】
<斎藤のシーズン初実戦>
◆11年2月13日(対韓国サムスン) 4回から2番手で登板し1回無安打無失点。最速139キロ。「低めに制球されたことと、芯でとらえられなかったことが一番。そのボールをコンスタントにいけるようになったら、もしかしたらプロでやっていけるのではないかと思います。ちょっとホッとしました」。
◆12年2月11日(対広島) 先発し2回1安打1失点。最速141キロ。会沢に場外本塁打を浴びる。「場外というのは、ないですよね。チームにとって最初の対外試合ですし、今日に限っては0点でいきたかったのであの1発は悔しい」。
◆13年 右肩関節唇損傷のため開幕前実戦登板なし
◆14年2月8日(紅白戦) 紅組先発で2回2安打1失点。最速142キロ。中田に先制の左前適時打を許す。「メチャクチャ楽しかった。いろいろな戦いがスタートした」。