村上さんの新刊が出たということで、早速買ってきました。
読み始めたら、どんどん読み進んで読了しました。
村上さんの筆力なのか、読み始めたらやめられない!
「父親について語る時」という副題の通り、亡くなったお父様についてのエッセイです。
今まで、生い立ちについてあまり書いてなかった村上さんが、一度は向き合わなくてはとお父様との思い出と葛藤を書かれています。
また、お父様の世代は一番戦争の影響を受けた世代で、戦争が人生全体に重く影を落としていた事。
戦争の事で少しだけしか語らなかった言葉からでさえ、その残酷さとやり切れなさが垣間見られる事。
父と子供の価値観の違いはどの親子でもあり、断絶もあるけれど、村上さんの世代では、そこに戦争体験という大きな障害もあって、より大変だったのではと思います。
しかし、今思い出すのは猫と暮らしたり、本を読む環境だったりという事も。
題名の猫を棄てるエピソードを思い出して書いたら、書き出すことができたという村上さんの気持ちが、少し分かったような気がしました。
実は私は長い間村上さんの小説は読まなかった時期があって、エッセイは良いなと思って読んでました。
これを読んで、村上さんのエッセイは本当にいいな〜!と思いました。
淡々と書かれているけれど、静かに色々な事を語っていて、凄くしみじみと読みました。
やっぱり、村上さん好きだな!
そして、挿絵がいいなと思ったら、台湾出身のお若いイラストレーターの方が描いているのにびっくり!
昭和30年代にタイムスリップしたような時代を感じつつも、独特の画風で、この本の雰囲気をなんとも良く醸し出しています。
ガオ イェンという方です。
この人の絵を見出して、任せて描いてもらったのも、凄いなと思います。
「歴史は過去のものではない。
このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。」
村上さんの小説は好きだったら読んで欲しいと思うものだけど、このエッセイは多くの人に読んで欲しい「小さいな歴史のかけら」だと思います。