『平家物語 犬王の巻』 古川日出男
最近アニメーション映画『犬王』になって5月に公開されたそうです。
この表紙の上に、アニメ化された後の表紙が二重になっていました。
古川日出男さんの本は独特の魅力があるので読んでみようかなと思って買いました。
とても面白かったです。
この本では古川さんが短い文で場面場面を切り取るような文体で書いています。
このお話は琵琶法師と能楽師の話なので、まさに劇場を見ているような臨場感を感じさせて上手いなと思います。
犬王という能楽師は実在の人物。
今も継承されている能を造ったと言われている観阿弥、世阿弥と同じ時代に活躍した能楽師だったそうです。
観阿弥や世阿弥は有名ですが、私は犬王という人は知りませんでした。
犬王が作った能は伝承として残っていないけれど、素晴らしい能楽師だったという記録は残っているそうです。
足利幕府の将軍足利義満の庇護のもと、観阿弥、世阿弥と同じように、むしろもっと素晴らしい舞台を務めたと。
その台本?は残されていないのでどのようなものかは不明だけれど、それを見た人の文章や世阿弥の本の中にも書かれているそうな。
今行われている能よりもスピーディーで踊りの要素が多かったのではと考えられているそうです。
その犬王の生い立ちと壇ノ浦で生まれて盲目になった友魚(ともな)が琵琶法師になっていく過程。
この過程がなかなか衝撃的です。
そして、二人の出会い。
その背景にある平家滅亡の物語。
この小説もスピーディーで謎めいていて、それでいて美しさと哀しみを感じるものでした。
そして、今の能にも大きく影響を与えたと言われている犬王にスポットライトを当てたこの本はとても興味深かったです。
犬王の死に際しては「紫雲が立った」と記されているって凄いな〜。
どんなに素晴らしい能楽師だったのでしょう❗️
アニメもどこかで見てみたいなと思います。