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身体の景色 (karada no keshiki)

2014.6.22 ソウル シェークスピア フェスティバルを終えて

過去の演出ノート、論考等、随時こちらのブログにアップしてゆきます。
以下はソウル シェークスピア フェスティバルを終えて走り書いた文章 その抜粋



本番①
無事初日があく
終演後、束の間の心地良い解放感
同時に明日もこれをやるのか、できるのか、という恐怖

本番②
終演後、圭介君が静かに興奮し僕に近付く
初日があきましたね、と圭介君
良かったとの感想
実は僕はあまり実感がなかった
きっと何か不思議な力が作用したのだろうと思う
ただ本番中、身体が劇場の壁に吸われるような感覚があった
楽に演じているのに空間の凝縮を感じていた
圭介君としては、身体の景色が目指している地点、そのひとつの到達点を感じたとの由
意味と解釈を利用し、意味と解釈を越えた感覚的な世界
身体と空間の融合と流動、そのドラマ

翌日
コリペの看板俳優スンホンさんの出演舞台、通し稽古見学
舌を巻くうまさ。技術に裏打ちされた身体、呼吸
猛烈なスピードで舞台は進むのに、けして足と丹田は失われない。呼吸も乱れない
様々な音色が舞台を埋め尽くす。圧巻
そしてただの一度も発散にならない。一瞬たりともだ。その驚愕
あの呼吸がいつでもあたりまえのようにできる
その状態を維持する彼の日々の在り方、その覚悟を想う

本番③
コリペの俳優多数観劇
終演後話す。皆実直に感想を言ってくれる
この日はスンホンさんへの挑戦のように演じてしまいやり過ぎてしまう
圭介君より「とりこぼしたものが多い」とのダメ出し

本番④
ユンテク先生観劇
演出家キム ガンボさん観劇
この回が僕としては最も良かった
今の方法における身体の景色の最高点かもしれない
そんなことを思う
そして次の一手について考える
しかしまだ見えず
その夜、ガンボさんを囲み、皆で飲む
ガンボさんはとても優しく気さくな思慮深いお方
言葉を選びながら僕らのような若い演劇人とも真直ぐに向かい合って対話をしてくださる
次の一手について考えながら就寝

翌日
ユンテク先生の舞台、通し稽古見学
幾度も涙が流れる。美しい。空間の流動が
例えばオープニング
複数の俳優がゆっくりと歩きながら舞台を一周するだけなのだけれど
何故ゆっくり歩いているだけなのにこんなに感動的なのだ。心に響くのだ
現象を真似るは簡単だ。誰にでもできる。それはきれいなミザンスの構築として
しかしそれは表層的現象
その奥に流れる息のドラマ
戯曲を利用した身体と空間の融合、その変容
その息のドラマに僕はただただ身を委ねる
”小町風伝”の時と同じだ、僕はそう思う
僕らなりの息のドラマを、誰もが判る、共有できる形にしてゆく必要がある
次の、一手…

本番⑤
最終ステージ
あまり良くなかった
俳優同士の歯車が噛み合ない
最善を尽くす
が、良い時の演技プランはことごとくやれなかった
空間があがってゆかないので、同じことをやっても白々しくなったであろう
その空間の範囲内でともかく最善を尽くす

終演
虚脱、放心、抜け殻
その夜、僕はふわりふうわりと皆について歩き、飲む
3〜4軒くらい、ハシゴ
何も考えなかった
何もなかった
空っぽであった
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