生まれた国の記憶を背負い生きる天文学者が
認知症の妻の肩を優しく抱き締めている
記憶に生きる夫
喪失を生きる妻
天文学者は
遥か遠くに輝く数億年前という気の遠くなるような壮大な過去に放たれた光を探求しその宇宙の記憶を解析し分析しつつも
数十年前という近しい過去に隠蔽された虐殺の記憶を語ることはない
妻は
自身の記憶を失いやがて夫さえ認知できなくなる
数億年前の光は天文学者に見つけられることで初めてその記憶は存在する
隠蔽されたその記憶はやがて存在しなかったことになろう
妻の記憶はどんなに妻が求めてもそれは消え
やがて妻は思い出すという行為さえ失ってゆく
在るとはなんであろう…
僕の脳裏に更地がヨギル
更地の台詞にこんな言葉がある「在ることは在ったんだが なかったんだから…」
宇宙が生まれ今日までの137億年の歴史の中で
人類文明の数千年はいかほどの刹那か
星星がチリとガスから生まれそしてまた消えてゆくその流動は
ニンゲンの生死と似ている
僕らの命の明滅は壮大なエナジーの流動その一瞬間に過ぎない
そのことを天文学は教えてくれる
あなたと出逢えたこのとんでもない奇跡
それがただただ嬉しい
それがすべてとさえ言っていいのかも知れない
(おいどうして殺し合う必要があるのだ)
宇宙は膨張するその意味さえ知らないで膨張し
数え切れない明滅を繰り返し続けているのかも知れない
僕らも生きるその意味さえ知らず明滅を繰り返し続けているのだろうか
はかりしれない生命のプログラムにこの肉体を支配され
アンドロメダ星雲が美しく恐ろしい
このアンドロメダ星雲が 我々の銀河と衝突をするらしい 数十億年後に
更地の稽古を続けている
冗談抜きでこの壮大な視野が
太田省吾さんの言葉の背後には横たわっている
深呼吸
今年もあとふつか
【語り 配信中】
珠玉の短編 声と音 想像力が織り成す豊かな物語を是非
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