「魔術から数学へ」を読みました

2010-06-08 08:38:26 | Weblog
森 毅著       講談社学術文庫


これも伊豆韮山へ合宿に行った友人からお借りした本です、ありがとう!


友人も実は偶然に手に取った(作者を間違えてしまった)本だったらしいのですが、これがとても面白かったそうで、こういう当たり本って凄く嬉しくなったりします。私もいろいろな人にオススメをお借りしたり、教えてもらったりしていますが、オススメして貰えると、それだけでもう期待値がかなり上がってしまいます。何気なく、あるいは期待していなかったのに、面白かった、という展開はなかなかないですけど、それはそれで嬉しいです。私はいろいろな方からオススメの本を教えていただけていて、本当にありがたいです。


数学の世界を、数学に詳しくない私でも楽しく読める本です。しかも数学に関する知識も面白く学べるんですが、それより古代から中世くらいまでの人物評がとても、とても面白い方です!これってもうトリビアルな楽しみ以上に著者の物の見方が面白いんですね!きっとメインストリームではない解釈なんでしょうけれど、これがかなり面白いです。


古代における数学と神学や文化との関係、ギリシャ(私が興味ある国!)はヨーロッパか?問題、そしてルネッサンス。そのどれも奇妙に繋がっていて、その繋がり方の道が、森さん独特のつなげ方であり、面白いです。


つまり、私たち(たち、ですいませんが)が普通に「数学」から想像する数式や数、証明とか公式とかも、もちろん「数学」ではありますが、決してそれだけではない「数学」の裏側や神学や文化、そしてキリスト教との関連、歴史における果たした役割なんかを、数学者の(時に人だけでなく流れも含みます)人柄を交えて分かり易く知ることが出来ます。また『森 毅歴史観』ともいえるくらい少し変わった、しかし人物像が非常にクリアに見える語り口が最高に面白いです。


ガリレオ、ニュートン、ライプニッツ、そのいわゆる偉人たちのちょっと変わった一面を知ることによって急に身近な存在として、血の通った人間の1人として感じられますし、そのエピソードと人柄のかぶせ方が独特でキャラとしてエッジが効いています。


そして「数直線にひそむ無限」(ホントに無限が潜んでいる!)、「神秘主義者の空想力」とかの決め台詞が気持ちよくテクストにはまっています。錬金術という魔術から、数学というものへの流れ、その中に埋没してしまったその当時の感覚を理解させられます。それを知っていることで何か大きく変わる事は無いかもしれませんが、しかし何か思考の幅が広がる、変わった視点をまた新たに手にすることが出来るように感じましたし、それってとても稀なことです。


歴史に興味がある方に是非、オススメ致します。

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