平井に頼むと調布先生の友人のジェロ(白人25歳)を紹介された。
駒込のジェロ宅では平井、調布先生、私、ジェロの四人のテンションの高いヤリとりがあったので、私の興味分野のみ抜粋メモ。
ちなみにジェロはオルレアン出身のちょっと貧しい大学中退者(中退はフランスでは当たり前)。
私:日本人はどう?
ジ:みんなそれ。日本人どう思う、箸慣れた、日本は好き・・・日本人って言ってもいっぱいいるよ。いいやつ悪いやつ、すげーと思うやつ殴りたくなるやつ。滞在が長くなればなるほど簡単に答えられなくなるよ。
(話飛んで)
日本の高校生とかでルイヴィトン持ってるヤツ多すぎ。あれはおかしい。だって値段6万とかするバッグを高校生が持ってんの。それってうちの家賃じゃん。で、なんで持ってるの?って聞いてもたいした答えがない。ホントああいうのパクりたくなるよね。もちろん使う分けないから捨てるだけだけど、そういうのはホントおかしい(注:フランス人はほとんどルイヴィトン持ってません)。ヴィトン持ってるなんて「私アホですー」って触れ回ってるようなもんだよ。まぁ母国が儲かるからいいんだけどさ・・・。
私:どうして日本に?
ジ:高校で日本語を習っていた。ホンとはキューバで労働キャンプをやりたかった。フランス人はタダだから。言葉はアラビア語がやりたかった。でもアラビア語をやってる学校は家から二時間かかる。東京では当たり前だけど、フランスじゃありえないよ。近所の高校で日本語やれるからまぁ、いいかと。柔道やってたし言葉の響きが好きだった。んで、高校では韓国の歴史と日本語と、ってやった。
私:日本語なんて高校でやれるの?
ジ:普通、フランス語の他に、スペイン語、ドイツ語、英語なんかを勉強するんだ。ほとんどはスペイン語を勉強する。キューバに行くにはスペイン語が必要なんだけどつまんなかったからなー。
日本のことは、特にアニメはみんな知ってるよ。松本大洋・・・じゃなくて零士なんてみんな知ってる。70年代からだね。
私:英語はみんなやってそうなのに・・・
ジ:響きが嫌い。なにあれダセーって。
私:(アメリカがダサいという話で)やっぱりアメリカ人は嫌いなんだ?イギリス人も嫌い?
ジ:イギリスとは1000年以上敵だからね。ジャンヌダルクを焼かれた日からずっと敵(笑)。(奇しくもジャンヌダルクはオルレアンの英雄)まぁそれでもアメリカ人ほど嫌いじゃないよ。だって、歴史もないし文化も浅い。何にも響いてこない。ホントにダサい。なんなのあいつら。フランス人だけじゃなくてイギリス人もヨーロッパ人はみんなアメリカ人が嫌いだよ。政府どうしは仲良くしているけどね。
よく聞かれるけど、ドイツとはぜんぜん仲悪くないよ。スゲー仲良し。
私:ジェロにとってフランス人とは?
ジ:フランス語をしゃべってフランスの歴史を知っててフランスの文化を知っている人。俺みたいなのは(外見で)日本人になれないけど、フランスは違う。純血のフランス人なんていない。たとえばショパンだってポーランド系フランス人。フランスにいるのはロシア系フランス人、ドイツ系フランス人、アフリカ系フランス人とか要するにもともと先祖はフランスにいたわけじゃない人たち。
私:フランス人にとって、フランス人であることって、たぶん特別な意味があるんじゃないかな?
ジ:究極的にはLiberté, égalité, fraternité(自由・平等・友愛:フランス革命の標語)を信じられるかどうかじゃないかな。
私:パリに本当にトリコロールだらけ。ロンドンもローマも(ブリュッセルもアムステルダムも)行ったけど、あんなに国旗だらけだった街はほかにない。やっぱり革命の聖地としての誇りというか、パリは世界でも意味のある街だという自負があるのか・・・
たとえば日本だったら大事だったら隠すようなメンタリティがあるのに、フランスは違うのかな?
ジ:(パリのことは触れずに)フランスでも国旗出してる家なんてないよ。街でもぜんぜん見ない。普段から国旗を出してるヤツっていうとナショナリストとかだけじゃない?フランスにはまだ王様の子孫がいるし、中にはそういうやつもいるだろう。でも、国旗をそんな普通の人が見せびらかしたりしないのはフランスでも一緒。
私:出身はどこ?
ジ:オルレアン。
私:おー、スゲー有名なとこだ。(アメリカの)ニューオーリンズの語源になった(ニューオーリンズはフランス植民地時代、新しいオルレアンという意味で現在に至る)。
ジ:よく知ってるね!オルレアンってのは王様の名前だからね。いまでも子孫がいる。フランスはそういう国だ。
調:私は(フランスに行っていたから)当然知っているけど、そんなに有名?
私:有名です。フランスの中でもかなり古い街だよね。大昔はパリより大きかった。ジュリアス・シーザーもガリア戦で通過してる(ローマ人の物語が行きました。塩婆サンクス!)。俺は地図が好きだから場所もわかるよ!
ジ:俺も地図は大好きだ。そうだよ、古い街だ。パリはルテティア、リヨンはルグドゥヌム・・・みんなラテン語の名前を持ってる。オルレアンは・・・なんだっけなダメだ。忘れちゃった。調べといて。でかいカテドラ・・日本語でなんていうっけ(注:聖堂)があって、ロワール川の船が上ってきて荷物を降ろす場所にある。で、難破船のワインが腐って酢になったのが名物になった。ほら、ビネガー(vinaigre)はvin aigre:ワインが腐ったのって意味でしょ。だから名物。うちのおかんも自家製のを作ってる。
(見せてもらった酢はほんのりワイン風味。普通に飲んでもおいしいとのこと)
(平井のフランス語の話になり)
平:フランス語がまったくダメで。反省すべき点です。
ジ:そんなことない。フランス語と日本語はその国に行かなくちゃ絶対理解できない言葉だよ。フランス語なんて形容詞多すぎるし、日本語だってほかの言葉では無いようなところがスゲー細かくあったりする。もちろん、どの言葉でもそうなんだけどね。極めようと思うとその国に行くしかなくなっちゃう。(話がいくつかあって)英語はダメ。浅い。ホントに浅い。英語で話、っていってもホントに言葉の伝達だけ。魂が無い。もちろん、イギリスの哲学的な言葉とかはスゲーって感動するけど、それ以外で(特にアメリカの)英語っていっても響かない。英語を話す連中はレベルが低いよ。アフリカ人でもフランス語話すアフリカ人と英語話すアフリカ人ではレベルがぜんぜん違う。英語は簡単だからね。だから広まったんだろうけど、ホントそれだけの言葉だよ。心に響かない。ラップやヒップホップもフランス語でやってるやつらは本当にカッコイイ。
私:日本語は明治に言葉を標準化しちゃったからなー。フランス語みたいには行かんよな。
ジ;日本人はもっと日本語に自信もっていいよ。日本語だってスゲーカッコイイ。ラップもヒップホップもどうして日本語だけでやんないんだろう。って思うよ。英語で言ってることって結局大したことじゃないジャン。なにそれダセーってホント思う。それならフランス語や日本語でちゃんと作ったほうがスゲーかっこいいよ。
(フランスでの制服復活論について)
ジ:いま、フランスの高校とかはスゲー格差がある。BMW乗って学校きたり、腕にでっかい金の腕輪つけたり、ナイキの何万もする靴はいてきてたりしてる同じ学校に、そもそも靴すら買えないような移民の子がいたりする。そりゃおかしいだろって。
(話飛んで)
もちろんだから制服を、って話も出てくるんだけど、それはどうしてもナチとかインペリアリスト(皇国主義者:たぶん日本人の悪い印象)を思い出すからだけなんだ。
日本で軍隊持つって話があるけど、野球(甲子園)の行進で学生が旗もって腕振って行進してるのみて、(日本人は軍国主義的だから)絶対ダメだ、なんていう外人がいたりするよ。もちろん俺は慣れて日本人はそうじゃない、って知ってるけどさ。確かに初めてあれを見たときは俺もびっくりしたよ。