映画「祝の島」ブログ

映画「祝の島」(ほうりのしま)のスタッフによるブログ。
製作過程の日記や最新情報をお知らせします。

4.26 完成披露試写会

2010-05-11 12:44:32 | 日記
4月26日、映画「祝の島」は完成披露試写会を行いました。
遅ればせながら会の模様をお知らせいたします。
24年前の4月26日はチェルノブイリ原発事故が起こった日。
この意味ある日に、無事、皆様の前で上映できたことを嬉しく思っております。
また、この日およそ360名の方がご来場下さいました。
ありがとうございました。

映画上映前、スタッフから一言ずつ挨拶がありました。

プロデューサー、本橋成一:
今日は予想以上のたくさんの人が来てくれて嬉しいです
とにかく、細かいことはいい。この作品をみんなにみてほしいと思います。

監督、纐纈あや:
どきどきして今日を迎えた。
チェルノブイリ原発事故のとき、12歳。
学校から家に帰ってテレビをつけて、
ヘリから撮った原子炉が爆発している映像を見た。
それがモノクロの映像で私の中に残っている。
まさか24年後の4月26日にこんな日を迎えるとは思っていなかった。
初めて島を訪れたのは2003年、
映画「アレクセイと泉」の上映で島を行ったとき。
そして祝島の人たちは、チェルノブイリ原発事故の4年前から
原発反対運動をしていたことを後で知った。
そのとき私が出会って、心を動かされた島の人たちに出会ってほしい。
先ほど本橋に言われたが、映画は、人に観て頂いてはじめて映画になる。
それまではただのテープ、ただのフィルム。
今日こうしてみなさんに観て頂いて映画になるのが、嬉しい。
ありがとうございます。

カメラマン、大久保千津奈:
一年半、島に通って島の人たちと共に生活をして撮影を行った。
その間、島でも少しずつ変化があった。
島での生活を通じて、自分もいろいろ考えさせられた。
映画をみるにあたって、その中にある島の四季や島の人の息づかいを感じてほしい。

製作デスク、中植きさら:
本日はありがとうございます。
ギリギリまでバタバタと準備していたので
今、目の前にあるのが夢のような光景に思える。
撮影をしながら島の人々の生活を見て、好きになった。
撮影が終わって、島の人たちの暮らしを手伝いたいと思った。
でも今はその役目ではないと思って、映画に関わってきた。
その映画を、今日は観て頂けるので嬉しい。



***

映画終了後、
ゲストに映画監督兼作家でもある森達也さん、
市民メディアアドバイザーの下村健一さんをお迎えして
監督纐纈とのトークショーが行われました。

その様子を報告します。

まず下村さんから、このトークショーをするにあたり、
どうしてこの2人をゲストとして選んだのかという質問が。

纐纈は、個人的には存じ上げている2人で、
共に「ものを伝える」ということをしている方に
自分の映画を見て頂いてご批評いただけたら、と思いまして、

と、いう2人の会話に会場から笑いが起こり
トークショーは和やかな雰囲気の中始まりました。

森さんは、このトークショーに出るに至った経緯について、
「この数年、テレビドキュメンタリーに対する
ある賞の審査員をしているのだが
そこに3年程続けて、祝島のドキュメンタリーの
企画書を出してくるディレクターがいた。
しかし、彼の企画書の中に原発の話は一言も触れられていなかった。
彼曰く、テレビドキュメンタリーでは原発のことは言えない、と。
でもそれは違うと思った。
目の前にあるものから目をそらしているだけではないか。
そんなこともあって、この映画をみたいと思った。」
と話していらっしゃいました。



これを受けて下村さんは、
「ネットの影響で少しずつなくなりつつあるとはいえ、
今でもニュースに取り上げられないことは、
存在しないとされるような風潮がある。」
とおっしゃった上で、
「ニュースで祝島のことが取り上げられると、それは原発のこと。
映画で描かれているような普段の生活が(原発の話が一緒に)
ニュースでは扱われない。
メディアが祝島のことを扱おうとすると
原発反対オンリー/まったく原発が出てこないか
のどちらかになってしまう。
でもこの映画では、それが一体化して出てくる。」
と話しておられました。



これを受け纐纈は、
「原発問題と島の暮らし、
どちらをどれだけ映画に出そうかというのを編集当初は考えたものの、
結局、島民にとっては暮らしと原発問題は切り離せない。
日々の暮らしの中で原発のことを意識しながら生きている、
と思うようになった。」
と話しました。



下村さんはさらに、
「ニュースというのは悪意はなくとも、
異常なものを伝えるという性質がある。
そして、ひとつのニュースについての多く要素から
あるものが選ばれてニュースとして伝えられる。
そうすると物事に対するイメージが視聴者の中で作られる。
祝島も、“原発反対のデモをしている人たち”
みたいなイメージを作られている。
この映画はそういうイメージを変えると思う。」
とおっしゃってくださり、これには纐纈も感激しておりました。

そして纐纈は、
「抗議行動にもついて行ったが
マスコミに取り上げられる側面以外にも
抗議行動の1日にはいろんなことがある。
御飯を食べたり、世間話をしたり、時に叫んだり。
そこにあるのは一つの要素だけではないと気づく。
そして島の人と一緒に暮らしていると、
切り取るべき場所は一つだけじゃないと思った」
ということを話しました。



このあと、下村さんはこの映画の特徴として、
映画の中で原発について、
一度も理屈で語られないことを挙げていました。
そして、
「じゃあ(理屈がなくて)理解出来ないか?というとそうではない。
ちゃんと島にある問題を理解出来ると思う。
理屈で語られなくても、これはこれでこの島の問題の本質だと思う。」
とおっしゃていました。


ここで話は、
なぜ原発問題がテレビをはじめとするメディアで取り上げられにくいか、
という話に。

下村さんは、
「なぜ原発がテレビで取り上げられないかというと、
普通の人は『それは電力会社がスポンサーについているからだ』と言う。
でも メディア側からすると、『数字がとれない』ということもある。
原発のニュースになると、一分単位の数字が落ちていく。
そんなの難しいよ、と国民が拒否している。
そうなると結局、みんなが興味を持つものを扱おうということになる。」
ということを指摘してらっしゃいました。

これを受けて森さんは、
「祝島のニュースって全国でやってないでしょ?
これは何かって言ったらひとつにはプライオリティ(優先度)の問題。
メディアもおかしくなってるかもしれないが、
それだけでなくて実は見る側もおかしくなっている。
メディアを支えている側も今、バランスを崩している。」
という指摘をしてらっしゃいました。

その後、質疑応答もあり、
「祝島で採れる魚介類は実際食べたのか?」という質問に
纐纈が興奮気味においしかった!と熱弁して笑いを誘うなど、
トークショーは大いに盛り上がりました。



***

「祝の島」の初めての上映、
船出の場にお立ち会い下さったみなさま、
ほんとうにありがとうございました!

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