7月2日(金)12:30の回上映後
ピーター・バラカンさん(ブロードキャスター)をお迎えし、
纐纈あや監督との対談がありました。
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<纐纈>
バラカンさん、映画を観ていただいたときに「上関原発のことを全然知りませんでした」と
おっしゃっていましたよね。
<バラカンさん>
あんな昔からこんな事態が続いているのに、
毎日ニュースを見ていても知らなかった、
ということに自分でも驚いています。
<纐纈>
バラカンさんがご存じなかったということは、
かなりの人が知らないのだろうと思います。
<バラカンさん>
全国ニュースで取り上げられるということは?
<纐纈>
ほとんどないですね。地元の放送ではニュースとして頻繁に流れているんですが。
7年前に「アレクセイと泉」を上映する為に初めて祝島に行って、
当時で既に22年間原発反対をしている
という状態だったこともあって、
私の中ではものすごく暗くて閉ざされた戦いの島みたいな
イメージがあって、緊張して島に降り立ったのですが、
実際は、全然そうではなかった。
<バラカンさん>
全然暗くないし、のんびりした、穏やかで綺麗な島、そんな感じ。
映画の印象は、島が主人公という印象があります。
「祝の島」というタイトルもあるだけにね。
のんびりしていて、絵に描いたような漁師たちの生活をしていて。
原発反対とは関係のない生活だけど、
ある時は、仕方がないから立ち上がってやるべきことをやる。
本当に頭が下がっちゃう、そういう思いでした。
<纐纈>
私は7年前にはじめて島におとずれた時には、映画で見て頂いたような、
個性豊かな明るくってハツラツとした人達が
次から次へと現れて、そこに魅了されて。
それから少し時間が空いて、
祝島の人達はどうしているかなぁと思っていたら、
ある時、祝島の人達が抗議行動をしている写真集を手にしました。
それは私の知っている祝島の人達とはもの凄くギャップがあって。
地元の報道で流れている島の人達の姿も、
ほんの2、3分の間に、叫んで小競り合いになっているシーンだけが流れて・・・。
自分で知ることができることってすごく限定されているなって思ったんです。
なんでここまでして反対しているかっていうことは語られていなくて。
島の人達は反対するために反対しているわけではなくて、
大切なものがあるから反対しているんです。
私は”強く惹かれたあの人達が大切にしていることこそ見たい”
というか、私にとってももの凄く大切なものなんじゃないかなっていう
気がしたんですよね。
<バラカンさん>
やっぱり田舎の人達は、自然に近い暮らしをまだしているだけに、
汚染されない環境の大切さを
僕ら都会に住む人間の10倍も感じていると思う。
僕らは汚染された空気を仕方のないものとして、
当たり前にしてしまっているけれど、
本当に当たり前で生きて行くために何が必要かといえば、
綺麗な空気・綺麗な水・汚染されていない食べ物、大体そんなもんで、後は
頭の上に屋根があれば有り難いかなっていう感じで。
<纐纈>
本当にそうですよね。彼らに話しを聞くと、
お金はもちろん大事だけど、それが一番大切なことではない。
都会の人達はお金がなくては生きていけないけど、
島では補償金なんてあぶく銭ですぐ消えてしまうと、
自分たちには海と山があれば生きていける、と。
<バラカンさん>
アジアのバックパッカー旅行をした人の本を読んだ時に
「田舎の人は食べるものには困らない。
どんなにお金のない人でも食べてはいける。」
と言っていて、そのことを今、本当に感じました。
僕は都会しか知らないから、食べるものには困らないっている感覚はない。
食べ物はお金で買いに行くっていうもので。
<纐纈>
「お金は必要最低限あればいい。
必要以上の贅沢を望まなければ充分今の暮らしでやっていける。」
と、島の人達は言うんですね。
それを一人一人おっしゃっていたのが凄く印象的でした。
それから、色々人に物を伝えることをしていらしたバラカンさんとは
そういう話しを色々とお聞きしたいのですが。
世の中、殺人だ強盗だと、暗いニュースばかりで、
すごく重い気持ちになるのですが、
だったら、”良いことニュース”みたいなものが
あってもいいんじゃないかと
思うんですが(笑)
<バラカンさん>
本当、そういうものがあっていいと思いますね!
ついつい悪いニュースばかり見ていると、
世の中そういうものだと思ってしまうところがあると思うんです。
そういったものから得られる情報はすごく少ないと思うから、
やっぱり、テレビのニュースで抗議行動のところしか報道されなければ
「ああそうなんだ」「またやってるよ」といったことになってしまいますよね。
全体像を知って貰おうと思ったら、こういうドキュメンタリーは大事ですね。
<纐纈>
結局は、何を伝えたいかということにたどり着くんですが・・・。
私は、全体の中の一部分の要素よりも、私が一番チャレンジしたかったのは、
色んな人が繋がっている、共同体とか、全体感を出したかったんです。
<バラカンさん>
コミュニティーの感じがすごく出ていますよね。
小さな島だからこそ出せるんでしょうね。
東京じゃ今コミュ二ティなんてまずないよね。
昨日テレビでプロボノ活動をやっている人が増えたというのを
見た時に女房と話したんですが、
どうしてこんなことをするんだろうと思ったんです。
そしたら彼女はね、
「今もうこれだけインターネットの時代になって、
現実にコミュニティーがないから、
人との関わりを潜在的に欲しているんじゃないか」
って、そういうこともあるかもしれないなって思ったんです。
<纐纈>
島の中に入り込んで、同じようなサイクルで生活させていただいていると、
毎日、島の人が海で獲ったお魚や山で穫れたものを下さって。
そういう、海と山とのつながり、人と人とのつながり、子や孫の代までっていう時間の繋がりを感じて。
人との繋がりがこんなにも人に幸福感を持たせるものなんだなぁ
と思ったんですね。
私、東京生まれの東京育ちということもあって、新鮮だったこともありますが・・・。
島の人達の心の中には、
亡くなった人の存在とか想いが心にずっと残っていて、
さらに、自分達の次の世代にのことを考えて、何を残したいのかを考えている。
それで、アメリカのネイティブの方が、
”七代先を考えて今を生きている”っていう哲学を思い出しました。
自然と共に生きている方の考えは、
今、目の前にあることだけでなくて、
目に見えない大きな繋がりみたいなものを体で感じてらっしゃるんだ、
と思いました。
<バラカンさん>
世界中の、特に島にいる人達はそういうのを感じるのかもしれませんね。
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下記は、バラカンさんの公式ホームページアドレスです。
どうぞ、合わせてご覧下さい。
http://peterbarakan.cocolog-nifty.com/