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1年前の2月22日。

2021-02-22 20:29:16 | 日記
 
豊富町稚咲内港によって見ました。雪が溶けています。

海岸線を下って、豊富町稚咲内港によって見ました。道路や畑は雪が溶けてかなり雪が少なくなって来ました。稚内市の帰りに牛乳を運んでいました。天塩町まで走って行きます。...
 

 


上野千鶴子東大名誉教授に聞く。ビジネスインサイダー誌より後編

2021-02-22 08:06:29 | 日記

上野千鶴子氏は組織をどう生き抜いたのか。孤立しないためにやった“根回し”【後編】

上野千鶴子氏

上野千鶴子氏。

撮影:柳原久子

社会学者の上野千鶴子氏が、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんとの共著『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』で指摘した日本人の働き方、日本型の経営のひずみは、東京オリンピック・パラリンピック組織委の森喜朗前会長発言から始まった一連の騒動で、改めて浮き彫りになった。

Business Insider Japanエグゼクティブ・アドバイザーでジャーナリストの浜田敬子氏が、上野氏に一連の問題について聞いたインタビュー後編では、上野氏自身が組織の中で生き抜いてきたのか、女性が仕事をする上での心構えを聞いた。


——森さんの後任を決める過程では、女性にするべきだという声がある一方で、能力や適性で選ぶべきだという声もありました。これは政治の世界のクオータ制の導入、企業の女性管理職の数値目標の議論でも、よくある議論です。数ありきでいいのか、能力のない女性を引き上げていいのかという。この女性を引き上げるときの数と能力問題を、上野さんはどうご覧になりますか。

上野千鶴子(以下、上野):能力ってポジションが育てますよね。女性にリーダーシップがないとしたらリーダーシップを発揮する場が与えられてないだけ。でも最近は中高大でサークルや部活のリーダーをやって、リーダーシップを持った女性はいっぱいいます。

森さんも一時後任に名前が上がった川淵(三郎)さんも、人脈と金脈がある調整型のリーダーです。その人脈も金脈も一定のポジションにいたから蓄積できたもので、同じようなポジションに女性がいなかったっていうだけの話です。

でも、今回の後任人事で、私は嫌な予想をしちゃいました。危機に陥った組織って、「困ったときの女頼み」で女を使うことがある。特にこういう性差別発言の後は、女って一応クリーンに見えますから。女性をリーダーに立てて幕引きさせて、一番嫌な役をさせる。一番嫌な役というのはオリンピックの廃止も含めて決断しなければならないという役回りです。

※編集部注:このインタビューの後に橋本聖子前五輪担当相が東京オリンピック・パラリンピック組織委の後任会長の要請を受諾した。

——私は今回のことで少しでも日本が変わった感を世界に発するためには、女性が会長をやったほうがいいと思っていますし、できる人もいると思うのですが。

上野:でもね、コロナ禍のもとでの強行開催かそれとも廃止かを含めてこんなにかじ取りの難しい時期に、この困難なポジションに女性をわざわざ人身御供みたいに立たせて、「やっぱり(できない)」とやられたら汚いなって思います。女性をこのチャンスにっていうのは、私は賛成できないな。

 

目的もためには根回しも忖度もやった

——それよく女性管理職でも見られる現象です。抜擢されても、その後なんのフォローもなく、社内から「お手並み拝見」という目で見られる。そして何かちょっとした失敗をすると、やっぱり女はダメだという評価になる。女という属性で語られるというのはよくある話ですね。

上野さんはわきまえた経験だとか、あのときわきまえてしまった、という後悔はありますか。

上野:私もなんだかんだずっと(大学などで)勤め人をやってきました。しかも一時は国家公務員でしたから(笑)。組織で働いて組織で何かやろうと思ったら1人じゃどうにもならないんです。だから根回しと忖度もしましたよ。

自分のやりたいことを達成したいと思ったら、「あなたの言い分のここは通してあげるから、私の言い分のここは通してね」みたいなこともやりました。でもそれは組織で生きる人間としては当たり前のことで。ただ、上の人に黙って従うということはしませんでした。

——わきまえるということと、自分の目的遂行のために政治的、戦略的に振る舞うというのは何が違うのでしょうか。

上野:「おっさん」のやり方ははっきり分かってます。孤立させるんです。キミは彼女と違うよね、と女性たちを分断する。やられてきたでしょ? これはセクハラの被害を申し立てした人たちが共通に経験してきたことです。ありとあらゆる悪い噂をたてて、あいつとつるむとろくなことないぞ、みたいな形で分断させて孤立させる。

だから私が何かノイズをたてるときには絶対孤立しないよう根回しをしました。気に入られたいからではなく、やりたいことがあるからこその根回しです。

——男性も含めて味方を作っておくという意味ですか?

上野:そうです。私が東大に採用されたときにも、女性の同僚たちに声をかけて食事をしました。そういうことは結構マメにやってます。それから職員の女性たちとお近づきになりました。職員の人たちは、先生たちに遠慮もあるし、嫌な目にも遭ってらっしゃるのでね。だからとてもよくしていただきました。

逆に、おっさんも一枚岩じゃないので、手を突っ込みましたよ。

日本のものづくり企業の「2つの弱み」とは?
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「狙い撃ち」されないように気をつけたこと

働く女性

 

撮影:今村拓馬

——私は管理職になったばかりの頃、どうふるまったらいいかわからず、取材先など社外の女性管理職や役員に教えを請いに行きました。前編でも触れましたが、出口さんと共著『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』にはまるまる1章、上野さんが組織でどう働いてきたかが書いてあって、ああ、もっとこれを早く読めたらと思いました。

上野:それは嬉しいですね。

女性が難しいのは、組織人として生きていないからです。組織が何を一番嫌がるのか。指揮命令系統のステップを飛び越すことが一番嫌なんですよ。だから、それはわきまえました。直接の担当者を味方につけて、この人にやる気になってもらう。

——上野さんそのお作法は自分で考えられたんですか。学んだんですか。

上野:それは2つあります。1つは組織の中で観察してきたこと。もうひとつはね、私、長い間運動をやってきたんです、学生運動も含めて(笑)。運動体というのは、金とポストがなく、それで人を動かすことはできないから、どうみんなのやる気を引き出すか、どうやって他人を巻き込むかっていうことを考えますよね。

——女性管理職の悩みを聞いていると、例えば「根回し」的なことができないということもありますが、そういうことをするのは汚いことだという考えも持っています。裏で交渉するのは卑怯なのではと。

上野:なるほど。「政治的」って言うことが、悪い意味で使われているからですね。その考えもわかります。

私が30代の頃、メディア対応を戦略的にやったので嫌がられました。商業的フェミニストとか呼ばれて、嫌われました(笑)。

それだけでなく私が自分がやりたいことをやりたいようにできたのは、給料をもらう仕事以外に、社会運動や執筆活動など、いくつかの活動をして給料以外の収入源を確保していました。何かあっても辞めても生きていけるように。その代わり、給料分の仕事は手を抜かないようにしました。

やっぱり組織の中って足を引っ張られるんです。以前、『お役所の掟』というベストセラーを書いた元官僚の宮本政於さんから聞いた話ですが、すぐそばにいる事務方や同僚に、逐一服務規程違反をチェックされ30ぐらいのリストを作られたそうです。狙い撃ちされたら絶対組織の中じゃ逃げられません。私、この話を聞いたときに心底震えあがりました。私は狙い撃ちされやすい立場にいたからです。だからそこは本当に気をつけましたね。

私たちの業界だと、科研費(文部科学省の科学研究費助成事業)の不正使用疑惑というのはほとんどがインサイダーからの密告です。それはやっぱり、自分が仕切ってる人たちの中に不平を持ってる人がいるということ。でも集団を束ねるってそういうことに配慮するということなんですよ。

自分を守るためには仕事に手を抜かないこと

上司と部下

 

Shutterstock/chaponta

——よく思うのは、男性はそういう能力をどこで身につけるんだろう、ということです。上司部下の固い絆の中なのか、飲み会やタバコ部屋かゴルフなのか……。

上野:メンターの役割もありますよね、親分子分みたいな感じで。男社会でメンターの振る舞いを見ながら学ぶということもあるんでしょう。

——自分を守るのは仕事に手を抜かないこと、ともおっしゃっていますよね。

上野:後ろ指をさされないよう給料分の仕事はちゃんとする。本当に足をすくわれますから。バランスを崩したところを虎視眈々と狙ってるような社会ですからね。

私を一匹狼だと思ってる方がいっぱいいらっしゃるようで、これまで組織の中でどう生きてきたかを聞いてくれる人もいなかったんです。今回の本ではよくぞ聞いてくれました、という感じでした。

それにフリーランスになるのを思いとどまったとか、50代でそれまでの仕事が煮詰まったと思ったときにどうしたかとか、そういうことも本書では話しました。そういうことは働く女の人にとっては役に立つかもしれませんね。

——私はバブル世代として大量採用された世代です。多くの同世代は結婚出産を機に退社しましたが、働き続けてきた女性たちもいます。中には独身の人もいるので、自分で自分の身を守るためにも収入を確保しなくてはいけない。でも今、どんどん会社で居場所がなくなりつつあると聞きます。

上野:なるほどね。東大女子は、卒業して10年くらい経つと煮詰まって脱サラしたいとか言ってくるんですよ。これも意外に思われるかもしれませんが、私はそれに賛成したことがないんです。ちょっと待てって。組織は無能なあんたを守ってくれる、って言ってきました。

私はたくさん失敗もしてきました。地雷も踏んできました。失敗から「何をやってはいけないか」「どうすればチームを動かせるのか」を学んできました。必要なのは場を与えられたらためらわずにチャレンジするということ。踏んだ場数が人を育てるんです。

(聞き手、構成・浜田敬子、編集協力・稲葉結衣)


上野千鶴子東大名誉教授に聞く。ビジネスインサイダー誌より前編

2021-02-22 05:16:48 | 日記

 

森騒動とは何だったのか。上野千鶴子氏が語る「男性もイエローカードを出すべきだ」【前編】

上野千鶴子氏

「今回のことは私の足元でも同じことが起きていたという怒りを呼び起こして、これだけ裾野が広がったんだと思います」と語る、上野千鶴子氏。

撮影:柳原久子

社会学者の上野千鶴子氏は立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんとの新著あなたの会社、その働き方は幸せですか?』で、日本人の働き方、日本型の経営について論じている。東京オリンピック・パラリンピック組織委の森喜朗前会長発言をめぐり、改めて浮き彫りになった、日本社会や組織のジェンダー不平等がなぜ生まれ、なぜ放置されてきたのか。新著ではその構造がまさに指摘されていると言える。

Business Insider Japanエグゼクティブ・アドバイザーでジャーナリストの浜田敬子氏が、上野氏に一連の問題について聞いた。

「おっさんの常識」は女にとっての非常識

——上野さんは今回の森発言から辞任、後任選びまでの一連の動きや国内外の反応をどう見てらっしゃいますか。

上野千鶴子(以下、上野):今回、胸に手をあててみたら、自分にも思い当たることがある、という人は多かったんじゃないでしょうか。森さんの、五輪組織委員会の女性理事たちは「わきまえている」という発言から、「#わきまえない女」というハッシュタグがTwitterで広まりました。

Choose Life Projectというネット番組の女性たちのリレートークでは、男社会で生きていく中でいつの間にか、「わきまえ癖」を内面化してしまっていて、そのことを反省したという声も出ていました。

やっぱり多くの女の人に思い当たることがあって、怒りを感じている。今回のことは組織委やスポーツ界だけじゃない、私の足元でも同じことが起きていたという怒りを呼び起こして、これだけ裾野が広がったんだと思います。

——多くの女性たちが「わきまえた」経験をしている。なぜこういうことが起きるのだと思われますか。

上野:五輪組織委は報道などを見ていると、本当に上意下達の集団ですよね。

まず女性は発言が長いということに証拠はないけど、仮にこれが経験的事実だとしても、長くて何が悪いのか。民主主義というのは合意形成コストがすごくかかるもの。だから議論になれば、発言が長くなるのは当たり前です。

さらに私が呆れたのが、引責辞任する人がさっさと根回しして後任を指名し、指名された本人もやる気満々になったことです。結局、橋本聖子五輪相などからも組織的な意思決定プロセスを踏んでほしいと指摘され白紙になりましたが、当たり前の指摘です。

もしこれが森さんの意向のまま進んで、理事会などで承認されたら、今回問題になったことが再生産されることになります。日本の組織文化を支えているホモソーシャル(男性同士の結びつきの強い社会)なボーイズクラブによる、根回しと忖度政治が再生産されてるってことが実に見事に浮かび上がりましたね。

——この方法では絶対非難されるということを、なぜやってしまうのだろうと思いました。

上野:非難されると思ってなかったんじゃないですか。こんな大変な時期に後任を引き受けてくれる実力者を、自分が選ぶことが責任を果たすことだ、それが「おっさんの常識」なんでしょう。これだけいろいろ海外からも非難されたことも含めて、日本の常識は世界の非常識、おっさんの常識は女にとっての非常識ということが見える化したのはよかったですね。

 

男女平等って言いたくないから「ダイバーシティ」

会議

 

Shutterstock/imtmphoto

——今回はスポンサーも、自社のダイバーシティ&インクルージョンを重要視する方針には適さない、と声をあげましたが、それでも企業経営者や幹部、管理職の男性と話すと、皆さんどこまで本気なのかなと思うことも多いのです。

先ほど上野さんも言われたように、ダイバーシティの本質は違う価値観や意見を取り入れること、その中で合意形成をするから手間暇、時間がかかる。だけど、そこまで覚悟を持っているのでしょうか。

上野:ツーカーで以心伝心で言わず語らずで意思決定できて、ノイズがないのが最高と思っておられた方々なんでしょう。私は企業の方たちとお話しする中で、SDGsの17個のゴールの中で、ジェンダー平等の優先順位が低いという印象を持っています。

日本では「男女平等」って言いたくないから「ダイバーシティ」って言葉に置き換えてごまかしているんじゃないかとしばしば思います。人口の半分いる人たちを、対等に仲間に入れていくことが男女平等の基本の「き」なのに。

——いつまで女性活躍って言ってるんですか、今はLGBTやシニアの活躍の方が大事でしょ?という企業もあります。そういう企業に限って、女性管理職の比率は10%未満だったり。ジェンダーの問題が後回しにされるのはなぜだと思いますか?

上野:やっぱり現状の組織文化を変えたくないという抵抗がすごく強いからじゃないでしょうか。女性を活用した企業の業績が伸びたという実証データはたくさんあって、すでに効果は証明されている。それなのになぜ抵抗するのかと考えると、男性たちにとって居心地のいい組織文化を変えたくない、という理由しか解釈できません。

企業は普通、経済合理性で動くと思うのだけれど、抵抗する人にはその経済合理性すらないのかと思います。

経済合理性より組織ロイヤリティで心中

働く人たち

 

撮影:今村拓馬

——出口さんとの本では、経済学者の川口章さんの研究を取り上げられていました。差別型企業と平等型企業を比較すると、平等型の方が売上高経常利益率が高い、という研究結果が出ていると。このような研究があるのに、合理的な判断ができないのは、男性たちが自分のポジションを奪われるということに危機感を抱いているからなのでしょうか。

上野:私はそうは思っていません。企業が競争する市場には、消費市場と労働力市場と金融市場の3つがあります。今、女性が経済力を持ち意思決定権も持っているので、消費市場で選ばれるには女性にウケることが大事ですよね。次に労働市場。今ダブルインカム世帯が6割超、男女共に働きやすい職場を選ぶし、中でも優秀な人は魅力的な職場を選びますよね。

金融市場でも、投資家が売り上げや利益率が高い企業を選ぶのは合理的な判断です。この3つの市場で競争したら、今のままのホモソ(ホモソーシャル)の日本企業は沈没し、ジリ貧になっていくのは簡単に予想がつきます。

それでも変わらない人は経済合理性よりも、組織ロイヤリティの方を高く評価して企業と心中しようというような人たちなのでしょう。だけど女性はそんなこと思わないでしょ。だから女性は彼らにとって信用ならないメンバーなんです。私は企業と心中しようなんて思わないのが労働者として正気だと思うんですけど。

——組織ロイヤリティという場合、自社の売り上げや利益率を上げることが本来ロイヤリティのはずですが。

上野:日本では例えば事業本部を第一事業本部、第二事業本部と同質の集団を作ってお互いに競わせてきた。

軍隊の前線の小部隊と同じですよね。その中の仲間意識とお互いの支え合い、隣の部署との競争で忠誠心を調達してきたという構造になっているんです。

「右脳と左脳を行き来する」仕事の秘訣とは?

ジェンダー平等は人権の問題

——私も含めて、これまで男性にジェンダー平等や女性登用について聞いてもらうために、経済合理性を主張してきた人は多いです。女性が増えたほうが売り上げも伸びます、多様な意見が入ったほうが組織は活性化します、リスク管理にもなりますと。つまりジェンダー平等の問題は女性の人権問題だというアプローチを全くしてなかった。最初から女性差別だ、人権問題だとアプローチすると聞いてもらえないと思ったので。

ですが、最近そのアプローチでよかったのかという反省もしています。

上野:例えばコロナ禍であぶりだされた人権問題が外国人実習生の問題です。あれを見たら、日本は人権後進国だと思われても仕方ないけど、それを放置してきたのが日本の政治です。だから人権じゃ動かない。でも経済合理性ですら動かないって言ったら一体何なんだと。

ある組織が変わろうとするときには、変わらなきゃという内発的な動機付けが必要です。外圧では変わらない。その内発的な動機付けは、危機感によってしか生まれない。だから日本の企業にはまだ危機意識が足りないんだと思います。

出口さんから教えてもらったのですが、日本はGDPでは世界3位だけれども、1人当たりGDPは26位(2018年)だということ。本当は二流国三流国に落ちてるんです。

——コロナでデジタルでもワクチンでも医療体制でも後進国、ということが分かってしまったのに、それでも変わろうという内発的な動機にはつながっていない。その変わらなさの象徴が、森発言だったと思います。

上野:ノイズが鬱陶しいんだと思います。

鹿児島県は女性議員ゼロ議会が多いんです。地元メディアが女性議員のいない議会の議長に「女性がいないことで何か不都合がありますか」と聞いたら、「なんの不都合もありません」って答え。当たり前じゃないですか。既成のやり方で物事を決めていたら、そこにいる当事者たちには何の不都合もない。

鹿児島でもう一つ思い出しました。立候補したある女性に、後援会長のオッサンが「もう少し控えめに主張しろ」とアドバイスしたそうです。クソバイスですよね。控えめに主張して、当選する気あるのかと。つまり、女の分をわきまえろ、です。

今回もう一つあぶりだしたのは、女の数を増やしても、わきまえた女ばかりなら効果がないってことですよね。

「ガンダムスーツを着せられた」

働く女性

 

撮影:今村拓馬

——2019年の東大入学式での上野さんのスピーチは非常に反響がありました。医学部入試で女性が不当に差別された問題、世界的な#MeToo運動の盛り上がり、そして東大内にもジェンダー差別がある現実を述べられたところ、新入生の男子たちから「こんなの祝辞じゃない」などと強い反発がTwitterであったとか。

まだ日本の会社文化にも染まってない18歳がなぜ上野さんのスピーチをディスるのか? 育つ過程でこうした女性差別意識が知らず知らずに植えつけられているのでしょうか。

上野:東大男子には私立の中高一貫進学男子校出身者がすごく多いんです。その学校文化がホモソーシャルな集団を再生産する装置ですから。おっさんというのは年齢じゃないんだなと思いました。その人たちはやがて官僚や企業のトップになり、そこでおっさん社会が再生産されていくと、女性は入りにくいですよね。

大沢真理さんという研究者が、男女雇用機会均等法ができたときに、これは「テーラーメイドの法律だ」とおっしゃいました。紳士服に身を合わせることができた女だけが生き延びていけると。この前ある若い女性と話したら、「ガンダムスーツを着せられた」と言ってました(笑)。そういう人だけが企業に適応して生き延びていけるなら、そこに入らない、入れない、入りたくない女性たちがいるのは当たり前だと思います。

沈黙は同意、笑いは共犯

——私は平成元年入社のまさに均等法世代で、典型的なテーラーメイド世代です。特に入社10年ぐらいまでは、新聞社というヒエラルキーが厳しい会社文化に合わせて働いていました。もちろん「わきまえた」経験もあるし、逆に後輩の女性たちにも「わきまえないと」と言う側に回ってしまっていたと反省しています。

上野:浜田さんの『働く女子と罪悪感』の中で一番記憶に残っているのが、自分が出産してはじめて、周りの子育て中の女性社員たちがこれまで職場で子育てしていることや、家庭の気配をどれだけ消して働いてきたかに気が付いたという部分です。ああいうことってやっぱり痛みなしには書けないですよ。そうやって生き延びてきた人たちはそれなりに痛みを抱えて生き延びてこられたんだろうなと。でもその頑張りの成果が後から来る人たちに対しては、良いお手本にはならないこともあると思います。

ただ今回すごく変化を感じるのが、「#わきまえない女」というハッシュタグに若い人たちだけじゃなくて、年長の人までも反応してシェアしていることです。「こんなことは私たちの世代で終わりにしたい」って、これまで自分たちが我慢して、わきまえてきたことを反省している。これって事件だぜ、変化だぜって本当に思いました。

——時代は確実に変わっていると。

上野:今回森さんが辞めざるを得なかったのは、世論の力だったと思います。そのときに見過ごさず、その場その場でイエローカードを出し続けることがすごく大事ですね。残念なことに女がイエローカードを出すよりも男が男にイエローカードを出すほうが効果があります。だから、男性にも傍観者にならないでほしい。沈黙は同意、笑いは共犯ですからね。

(後編に続く)