WHO(世界保健機関)の新型インフルエンザ薬物治療ガイドライン委員の菅谷憲夫氏(神奈川県警友会けいゆう病院小児科部長)は3月16日、文部科学省など主催のセミナーで「本年度の新型インフルエンザのわが国での流行状況、予防と治療の最前線」をテーマに講演した。日本の新型インフルエンザによる死亡率が低く抑えられている理由について、抗インフルエンザウイルス薬の積極的な早期投与にあるとの見方を示した。
菅谷氏によると、新型インフルエンザ感染後の死者数は、日本の200人弱に対し、米国では約1万2000人と例示。日本の死亡率が非常に低く、世界の専門家は「ミステリー」「日本のミラクル」と驚いていると説明した。
理由について菅谷氏は、日本では治療の早期から積極的にタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬を使用するが、米国では妊婦や高齢者などのハイリスク者を除いて、重症化して入院後に抗インフルエンザウイルス薬による治療を始めると指摘。入院272例を分析した米国の論文によると、効果が高いとされる48時間以内の抗インフルエンザウイルス薬の投与は3割以下だったとし、「欧米諸国で多くの人が死亡した原因は、抗インフルエンザウイルス薬による治療の遅れにある」との見解を示した。
その上で菅谷氏は、「毎年(季節性)のインフルエンザと違い、重症肺炎が多発した」として、新型インフルエンザは決して軽い病気ではないと指摘。「抗インフルエンザウイルス薬を入院するまで使えなければ、もっと死者が出ていた」と述べ、抗インフルエンザウイルス薬の早期投与の重要性を強調した。
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