茶飲みばなし2

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いしいひさいち「ののちゃん 全集」14巻を読む

2024-08-29 18:53:40 | 漫画
この巻は、2022年から23年の作品が集められている。
コロナの5類移行は2023年5月で、特にコロナ禍を感じさせるネタはない。
逆に、22年5月にはシルバー会登山隊が挑戦を再開している(古新聞の山だが、8826)。

かわって登場する時事ネタだが、そう思って見るからかもしれないが、
防災無線が「熱中症に注意しましょー」と放送していたり(8863)、
熱中症でうずくまるお年寄りを連係プレーで助けたり(9241)、
体温調節ネタ(8903)、熱中症ネタ(9190、9230)など暑さネタが増えたように感じる。
洋上風力発電(8910)も、イマドキらしいネタだろうか。

のぼるくんの棋力はますます向上しており、大人に勝つのは当然だし(8703、9164)、
市の大会に出場すると県三冠には完敗した(9256)ものの、
大山康晴そっくりの伝説の強豪や前県王将には勝っている(9232、9238)。
(この前県王将が谷川浩司に似ているようにも見える。)
勝敗は不明だが、升田幸三そっくりの人とも対局している(9194)。

ののちゃんも成績はさっぱりだが、
算数の教科書とノートを家に忘れたことで、家で勉強していると皆が驚くし(8713)。
勘で「なんとなくわかる」と解答した計算問題の答えがすべてあっている(8800)。
しかも、突然「算数ってけっこうおもしろーい」とまで言うようになった(8823)。

もう一つ、終わりなき物語の中での成長として見逃せないのは、
藤原先生が作った学芸会の大量殺人推理劇の脚本を読んで、
教頭が小学3年生なのに大量殺人だし、でも面白いと困惑していることだ(8964)。

小ネタでは、父のスマホの呼び出し音は「ポリプロピレン」(8712)だし、
母のスマホは「ペロポネソスピレウス」(8981)である。
ちなみに、アテネ近郊の港町ピレウスの西にあるのがペロポネソス半島である。

二度と同じようには言えないし、たぶんどれも正しくない謎の料理の
「クンチョロンペコリオコイ」(8721)も登場するが、
調べても、どうやらベトナム料理めいた名であることはわかったが、
それ以上は謎だった。

家族の意見がバラバラで結局森林浴で登ることになった山は「船頭多登船山」で、
看板によると「せんどうおおのぼふなやま」と読むらしい。(8833)
念のために調べたが、「船頭多登船山」という漢詩はありそうでなかった。

また、コママンガならではのシュールな試みとして、
母がののちゃんに自由研究のテーマを何度も問いただすことによって、
コマごとに「昆虫さいしゅう」「昆虫採しゅう」「昆虫採拾」と漢字化しつつ変化し、
「落ちてるセミを拾うつりやな」と落とすが、会話ではありえない展開だ(8900)。

新キャラとして、将棋センターでのぼるくんが指導している小学生マイコの
高校生の姉マリコ(弱いがめんどくさい)、下の姉(粘り強い)が登場する(9062、9087)。
ただし、マリコには婚約者がいるとわかり、
のぼるくんのほんのりとした恋は即終了、その動揺は二歩で象徴される(9089)。

あまりにもしっかりしているので、あだ名が「担任」で、
「人物紹介」でも「スーパー6年生」とされる安田さんも初登場だろうか(9132)。
5年生で児童会長を務めたので、児童会では「顧問」と呼ばれているらしい(9173)。

今回、特に気になったのは、いかにも苦労人の野球部のキャプテンが、
教育係ののぼるくんに「今年の1年生どうだ」と聞いたその足で、
今度は1年生に「教育係としての山田は(どうだ)」とたずねていたり(8841)。
新1年生に望む要素をたくさん並べた末、一つに絞れと言われると、
「強肩」「強打」「俊足」「野球センス」を捨てて「人柄」としている(9130)。
そこまでやるか。頑張ってほしい。

巻末の描きおろしは、ホームズの「マスグレーヴ家の儀式書」の連作パロディなのだが、
あいにく未読でよくわからなかった。
既読の人なら悶絶しただろう。

そんなわけで、ののちゃん一家は相変わらずだが少しずつ変化している。
やはり、それが楽しい。
余談ながら、ののちゃんが昔読んでいた「飛び出す絵本」が「地底人」(9108)なのも、なんとも懐かしかった。

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