甲状腺ホルモン合成にはヨードは不可欠である。ヨード輸送蛋白として血中からのヨード取り込みを行う、Na/I シンポーター、濾胞腔内への放出を行うPDS 遺伝子が、近年相次いでクローニングされ、その構造や機能が明らかにされてきた。我々は世界に先駆けて電気生理学的な手法を用い、この両トランスポーターの機能を解析した。
PDS はChromosome 7q31 に存在する21 exon から構成される2,343 塩基対の翻訳領域からなる遺伝子であり、その翻訳産物は、780 アミノ酸からなる86 k D の疎水性に富む膜蛋白ペンドリンである。陰イオン輸送体である。
sulfate transporter に類似した構造を持つ。
ペンドリンの発現分布と機能
内耳や甲状腺のapical membrane に発現する他に、腎集合管、尿細管、子宮内膜や胎盤にも発現が認められ、肺、乳腺、精巣にもわずかに発現する。現在までに分かっているペンドリンの生理学的機能としては、Cl-/I- 交換体、Cl-/蟻酸交換体、Cl-/OH-/HCO3- 交換体としての働くことが明らかにされている。甲状腺以外の組織では、内耳ではリンパ液量の調節、腎臓ではHCO3-の放出を行っていると考えられる。甲状腺ではCl-/I- 交換体としてヨードの濾胞腔内への放出を行う。PDS 異常症のペンドレッド症候群は、1896 年Pendred により報告された疾患である。先天性難聴と甲状腺腫を伴うヨード有機化障害を有する疾患であり、常染色体劣勢遺伝形式を取る。日本の症例では、PDS 遺伝子異常H723R が最も多く見られる。
本症は、先天性難聴の約10% を占め、最も高頻度とされている。従来、人口10 万人当たり7-10 人の発症率とされてきた。難聴は幼児期より見られ、両側性、進行性であり、高度の感音性難聴となるが、その直接の原因としてMondini Chochlea とされる特徴的蝸牛形成不全があげられる。
本疾患の約50 %に甲状腺腫が見られるが、それらの大部分が思春期以降に発症する。甲状腺腫は、小さなものから、巨大なものまで程度は様々であり、同一家系内でもその程度は様々である。また、大部分の症例で、パークロライド放出試験陽性であり、甲状腺ヨード有機化障害を認める。甲状腺機能は正常を保つ症例が多いが、明らかな機能低下症を示す症例もある。血中サイログロブリンが上昇する。甲状腺の機能異常、形態学的異常の程度が様々である原因として、ヨード摂取など、環境因子が影響する。
ペンドレッド症候群の診断は、先天性の難聴の確認、内耳の形態学的異常のMRI、CT での診断、甲状腺腫の確認、血中サイログロブリンの上昇、パークロライド放出試験による甲状腺ヨード有機化障害の確認などで行う。現在では、これらに加えてPDS 遺伝子塩基配列の解析により遺ほぼ診断可能となっている。
これまで長らく自己免疫性甲状腺疾患のマーカーである自己抗体は抗TG、抗TPO抗体しか有用性が認められていなかった。我々は自己免疫性甲状腺疾患において、ペンドリンは新たな自己抗体であり抗TG, 抗TPO 抗体と同程度の診断有用性があることが発見した。
橋本病のほぼ100%、バセドウ病の84%に抗ペンドリン抗体が認められた。破壊性甲状腺炎のうち、亜急性甲状腺炎では全例陰性。無痛性甲状腺炎で、約20%に発現する。新たな診断法や病因の研究に有用である。
現在ペンドリンの更なる機能解析のための電気生理学的検討と、抗ペンドリン抗体測定のキット化を目指し研究が進んでいる。
PDS はChromosome 7q31 に存在する21 exon から構成される2,343 塩基対の翻訳領域からなる遺伝子であり、その翻訳産物は、780 アミノ酸からなる86 k D の疎水性に富む膜蛋白ペンドリンである。陰イオン輸送体である。
sulfate transporter に類似した構造を持つ。
ペンドリンの発現分布と機能
内耳や甲状腺のapical membrane に発現する他に、腎集合管、尿細管、子宮内膜や胎盤にも発現が認められ、肺、乳腺、精巣にもわずかに発現する。現在までに分かっているペンドリンの生理学的機能としては、Cl-/I- 交換体、Cl-/蟻酸交換体、Cl-/OH-/HCO3- 交換体としての働くことが明らかにされている。甲状腺以外の組織では、内耳ではリンパ液量の調節、腎臓ではHCO3-の放出を行っていると考えられる。甲状腺ではCl-/I- 交換体としてヨードの濾胞腔内への放出を行う。PDS 異常症のペンドレッド症候群は、1896 年Pendred により報告された疾患である。先天性難聴と甲状腺腫を伴うヨード有機化障害を有する疾患であり、常染色体劣勢遺伝形式を取る。日本の症例では、PDS 遺伝子異常H723R が最も多く見られる。
本症は、先天性難聴の約10% を占め、最も高頻度とされている。従来、人口10 万人当たり7-10 人の発症率とされてきた。難聴は幼児期より見られ、両側性、進行性であり、高度の感音性難聴となるが、その直接の原因としてMondini Chochlea とされる特徴的蝸牛形成不全があげられる。
本疾患の約50 %に甲状腺腫が見られるが、それらの大部分が思春期以降に発症する。甲状腺腫は、小さなものから、巨大なものまで程度は様々であり、同一家系内でもその程度は様々である。また、大部分の症例で、パークロライド放出試験陽性であり、甲状腺ヨード有機化障害を認める。甲状腺機能は正常を保つ症例が多いが、明らかな機能低下症を示す症例もある。血中サイログロブリンが上昇する。甲状腺の機能異常、形態学的異常の程度が様々である原因として、ヨード摂取など、環境因子が影響する。
ペンドレッド症候群の診断は、先天性の難聴の確認、内耳の形態学的異常のMRI、CT での診断、甲状腺腫の確認、血中サイログロブリンの上昇、パークロライド放出試験による甲状腺ヨード有機化障害の確認などで行う。現在では、これらに加えてPDS 遺伝子塩基配列の解析により遺ほぼ診断可能となっている。
これまで長らく自己免疫性甲状腺疾患のマーカーである自己抗体は抗TG、抗TPO抗体しか有用性が認められていなかった。我々は自己免疫性甲状腺疾患において、ペンドリンは新たな自己抗体であり抗TG, 抗TPO 抗体と同程度の診断有用性があることが発見した。
橋本病のほぼ100%、バセドウ病の84%に抗ペンドリン抗体が認められた。破壊性甲状腺炎のうち、亜急性甲状腺炎では全例陰性。無痛性甲状腺炎で、約20%に発現する。新たな診断法や病因の研究に有用である。
現在ペンドリンの更なる機能解析のための電気生理学的検討と、抗ペンドリン抗体測定のキット化を目指し研究が進んでいる。