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本日も不眠症

2022-09-17 03:37:34 | 日記

 十数年前だが、完全夜勤の仕事をしばらくしていた。夜警ではない。一晩中、主に旧共産圏のテレビやラジオ放送を視聴し、その内容を原稿にまとめるという作業。今風に言えば「オシント(オープンソース・インテリジェンス)」だが、そんな言葉を知らなかった当時からジミな情報収集活動の重要さは変わらない。

 例えば一晩中、某国の政治家の演説をヘッドホンで聴いている同僚がいた。特に重要な演説というわけでもない。定例会などでのちょっとした話なんぞをじいっと聴いている。何をしているか。特定の言葉の言い間違えの回数やアクセントの変化をチェックし、定例会ごとにその増減や変化を比較分析する。去年は28回の言い間違いが今年は75回に増えた、ロレツが回っていない、、、その政治家の健康状態が予想できる。そして、ほぼ正確に死期を当てていた。

 そんな花形部署の横で、私はというとドイツの東半分の担当で、ネオナチがどこぞのユダヤ人墓地にハーケンクロイツの落書きをしたとか、丑三つ時にワープロに打ち込んでいた。記事を配信したものの、おそらく何の役にも立たなかったと思う。ただ、慣れれば楽な業務であり、希少な仕事と妙な陰謀加担感、そして何よりも人間関係のストレスがほぼゼロということで、楽しくなくはなかった。

 夜が明け、昼勤の連中が出社する前に仮眠室の3段ベットに潜り込み、昼前に起き、人目を避けるように社を抜けて帰宅する。地震がくれば倒れるようなベットを改善してほしいと上司に頼んだことがあるが、「ボスニアの子どもたちを見ろ」と妙な説教をされ、諦めた。労働問題に目覚めるきっかけになったといえばなったのだが。

 「もう社会に出るつもりはない」と言っていた同僚は出世したがために、昼の世界に戻り弁当屋の娘と結婚した。夜の私はというと、昼勤の中国担当の天理教徒の娘や庶務課の今から思うとかなりの美女と色恋もできたのだが、陽の当たる場所では呆然として気力も出ず。夜中に、タバコの煙を避けた窓際席で外を見ながら、片手間に孤独仕事を楽しんでいた。

 さて、そんな安楽な生活は長続きせず、栄養失調から帯状疱疹にやられたあげく、体調を崩して退職した。以降、いやいやながらも昼の仕事に従事し、それなりに生活は維持できているものの、やはり深夜の静寂な世界が忘れられない。こんなことを書き散らしているのもその名残。明日も昼から要件があり、実はこうしている場合ではないのだが、致し方ない。本日も不眠症。

 



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