今日は、神経性過食症(Bulimia Nervosa:BN)の診断基準と徴候についてお話しします
まずは、もう一度神経性過食症とはどんなものであるかをお話し致します。
神経性過食症とは、自制困難な摂食の要求を生じて、短時間に大量の食物を強迫的に摂取しては、その後嘔吐や下剤の乱用、翌日の摂食制限、不食などにより体重増加を防ぎ、体重は神経性食欲不振症ほど減少せず正常範囲内で変動し、過食後に無気力感、抑うつ気分、自己卑下を伴う1つの症候群の摂食障害です。現在では、思春期から青年期女性の1~3%にみられるといわれています。
この障害の典型的な経過例としては、まずダイエットを普通に開始することから始まり、その後逆に食べすぎが始まり出します。この食べ過ぎに伴い体重増加に対する極端な恐怖が起こり、パージングを思いつき実行に移します。その後、後悔と自己嫌悪、空腹感などが襲ってきて、むちゃ食いをするようになります。このむちゃ食いがいつの日か習慣化するようになり過食症という経過をたどります。
この障害の典型的な経過例は、次に示すものです
①ダイエットを開始
↓
②食べ過ぎが始まる
↓
③体重増加に対する極端な恐怖
↓
④パージングを思いつく
↓
⑤後悔、自己嫌悪、空腹感などを生じる
↓
⑥むちゃ食いをしだす
↓
⑦習慣化する
では、実際に神経性過食症の診断基準と実際に現れる身体的徴候についてお話し致します
尚、日本における診断基準は現在の所BNに関してはないため、WHOの診断基準を今回は示します。
1)診断基準
①持続的な摂食への没頭と食物への抗しがたい渇望
が存在する(短期間に大量の食物を食べ尽くす過
食のエピソードに陥る)
②食物を摂ることによる太る効果に、以下の1つ以
上の方法で抵抗しようとする
・自ら誘発する嘔吐
・緩下剤の乱用
・交代して出現する絶食期
・食欲減退剤や甲状腺末、利尿剤などの薬物の使
用
・糖尿病患者による大食症に伴うインスリン治療
の非実行
③肥満への病的な恐れから、自ら厳しい体重制限を
する
・数ヶ月から数年にわたる間隔をおいて神経性不
振症の病歴がしばしば認められる
・中等度の減少が認められることがある
・一過性の無月経を伴うことがある
2)身体的徴候の例
①自己誘発性嘔吐を伴う症例では、しばしば右手背
の第1指、第2指の付け根に吐きだこがみられる
②唾液腺の腫張(耳下腺と顎下腺の腫張)
③齲歯(くし)が歯の裏側にみられる
(大量の炭水化物の摂取と頻回の自己誘発性嘔吐
による胃液の逆流による)
④浮腫がみられることがある
⑤標準体重~肥満
⑥過食後の微熱
以上、神経性過食症の診断基準と身体的徴候例ですが、本摂食障害の有病率はANの約10倍と非常に高く、集中力や判断力の低下や無気力感などを呈し、個人心理学的因子、生物学的因子、家族因子、社会文化的因子が相互に複雑に関連していることにより起こると考えられています。
症状としては次に示す内容を示します。
1)神経症状
①やせ願望と肥満恐怖
肥満恐怖を認めますが、やせ願望はそれほど強
くない場合もあります。病感や病識を認める場合
が多い。身体像の障害については、正常とあまり
さはない場合がほとんどです。
②抑うつ症状
うつ症状を生じてこれを解消するために過食に
陥ったり、低栄養や体重減少、過食や嘔吐により
2次的に鬱症状を生じたりすることがあります。
③強迫症状
食物やカロリーへの強いとらわれや、確認や消
毒癖などの症状を認めます。
④不安症状
何事に対しても過度に心配する全般性不安障害
やパニック障害、社会恐怖などを併発する場合も
あります。
⑤失感情症
感情の杵築と表現が抑制されることがしばしば
認められます。
2)行動異常
①摂食行動
過食症状が認められます。また、過食と嘔吐の
代替行動としてチューイング行為(食物を噛んで
そのエキスを吸い残渣を吐き出す)が認められま
す。
②排出行動
過食による体重増加を防ぐため、あるいは、体
重を減らすために自発誘発性嘔吐や下剤や利尿剤
の乱用が認められます。長期にわたり指等で嘔吐
をしていると吐きだこが認められます。
③活動性
うつに傾きやすく、活動は低下します。
④問題行動
自傷行為や自殺企画、アルコールや薬物乱用な
どの自己破壊的行為や万引きなどの社会的逸脱行
為がしばしば認められる。
3)身体症状
①体重
標準体重~肥満
②月経異常
無月経、稀発月経、一部は過剰月経
③その他
浮腫や過食後の微熱
以上が神経性過食症の症状です。
これらの摂食障害の原因については様々なことがいわれていますが、今のところ単一の病因は見つかっていないのが現状です。それは、個人心理学的因子、家族因子、社会文化的因子などが相互に複雑に関連していると理解されているためです。
次回は、特定不能の摂食障害についての診断基準と身体的徴候についてです
でわ、また。。。。。
参考:摂食障害の診断と治療 ガイドライン2005 / マイライフ社
まずは、もう一度神経性過食症とはどんなものであるかをお話し致します。
神経性過食症とは、自制困難な摂食の要求を生じて、短時間に大量の食物を強迫的に摂取しては、その後嘔吐や下剤の乱用、翌日の摂食制限、不食などにより体重増加を防ぎ、体重は神経性食欲不振症ほど減少せず正常範囲内で変動し、過食後に無気力感、抑うつ気分、自己卑下を伴う1つの症候群の摂食障害です。現在では、思春期から青年期女性の1~3%にみられるといわれています。
この障害の典型的な経過例としては、まずダイエットを普通に開始することから始まり、その後逆に食べすぎが始まり出します。この食べ過ぎに伴い体重増加に対する極端な恐怖が起こり、パージングを思いつき実行に移します。その後、後悔と自己嫌悪、空腹感などが襲ってきて、むちゃ食いをするようになります。このむちゃ食いがいつの日か習慣化するようになり過食症という経過をたどります。
この障害の典型的な経過例は、次に示すものです
①ダイエットを開始
↓
②食べ過ぎが始まる
↓
③体重増加に対する極端な恐怖
↓
④パージングを思いつく
↓
⑤後悔、自己嫌悪、空腹感などを生じる
↓
⑥むちゃ食いをしだす
↓
⑦習慣化する
では、実際に神経性過食症の診断基準と実際に現れる身体的徴候についてお話し致します
尚、日本における診断基準は現在の所BNに関してはないため、WHOの診断基準を今回は示します。
1)診断基準
①持続的な摂食への没頭と食物への抗しがたい渇望
が存在する(短期間に大量の食物を食べ尽くす過
食のエピソードに陥る)
②食物を摂ることによる太る効果に、以下の1つ以
上の方法で抵抗しようとする
・自ら誘発する嘔吐
・緩下剤の乱用
・交代して出現する絶食期
・食欲減退剤や甲状腺末、利尿剤などの薬物の使
用
・糖尿病患者による大食症に伴うインスリン治療
の非実行
③肥満への病的な恐れから、自ら厳しい体重制限を
する
・数ヶ月から数年にわたる間隔をおいて神経性不
振症の病歴がしばしば認められる
・中等度の減少が認められることがある
・一過性の無月経を伴うことがある
2)身体的徴候の例
①自己誘発性嘔吐を伴う症例では、しばしば右手背
の第1指、第2指の付け根に吐きだこがみられる
②唾液腺の腫張(耳下腺と顎下腺の腫張)
③齲歯(くし)が歯の裏側にみられる
(大量の炭水化物の摂取と頻回の自己誘発性嘔吐
による胃液の逆流による)
④浮腫がみられることがある
⑤標準体重~肥満
⑥過食後の微熱
以上、神経性過食症の診断基準と身体的徴候例ですが、本摂食障害の有病率はANの約10倍と非常に高く、集中力や判断力の低下や無気力感などを呈し、個人心理学的因子、生物学的因子、家族因子、社会文化的因子が相互に複雑に関連していることにより起こると考えられています。
症状としては次に示す内容を示します。
1)神経症状
①やせ願望と肥満恐怖
肥満恐怖を認めますが、やせ願望はそれほど強
くない場合もあります。病感や病識を認める場合
が多い。身体像の障害については、正常とあまり
さはない場合がほとんどです。
②抑うつ症状
うつ症状を生じてこれを解消するために過食に
陥ったり、低栄養や体重減少、過食や嘔吐により
2次的に鬱症状を生じたりすることがあります。
③強迫症状
食物やカロリーへの強いとらわれや、確認や消
毒癖などの症状を認めます。
④不安症状
何事に対しても過度に心配する全般性不安障害
やパニック障害、社会恐怖などを併発する場合も
あります。
⑤失感情症
感情の杵築と表現が抑制されることがしばしば
認められます。
2)行動異常
①摂食行動
過食症状が認められます。また、過食と嘔吐の
代替行動としてチューイング行為(食物を噛んで
そのエキスを吸い残渣を吐き出す)が認められま
す。
②排出行動
過食による体重増加を防ぐため、あるいは、体
重を減らすために自発誘発性嘔吐や下剤や利尿剤
の乱用が認められます。長期にわたり指等で嘔吐
をしていると吐きだこが認められます。
③活動性
うつに傾きやすく、活動は低下します。
④問題行動
自傷行為や自殺企画、アルコールや薬物乱用な
どの自己破壊的行為や万引きなどの社会的逸脱行
為がしばしば認められる。
3)身体症状
①体重
標準体重~肥満
②月経異常
無月経、稀発月経、一部は過剰月経
③その他
浮腫や過食後の微熱
以上が神経性過食症の症状です。
これらの摂食障害の原因については様々なことがいわれていますが、今のところ単一の病因は見つかっていないのが現状です。それは、個人心理学的因子、家族因子、社会文化的因子などが相互に複雑に関連していると理解されているためです。
次回は、特定不能の摂食障害についての診断基準と身体的徴候についてです
でわ、また。。。。。
参考:摂食障害の診断と治療 ガイドライン2005 / マイライフ社