健康回覧板 ~よむクスリ~

◆病気・健康などテーマごとに綴ったブログ◆

摂食障害 - 診断基準と身体的徴候 ② -

2008-12-14 23:56:22 | 摂食障害に関するメモ
今日は、神経性過食症(Bulimia Nervosa:BN)の診断基準と徴候についてお話しします

まずは、もう一度神経性過食症とはどんなものであるかをお話し致します。

神経性過食症とは、自制困難な摂食の要求を生じて、短時間に大量の食物を強迫的に摂取しては、その後嘔吐や下剤の乱用、翌日の摂食制限、不食などにより体重増加を防ぎ、体重は神経性食欲不振症ほど減少せず正常範囲内で変動し、過食後に無気力感、抑うつ気分、自己卑下を伴う1つの症候群の摂食障害です。現在では、思春期から青年期女性の1~3%にみられるといわれています。

この障害の典型的な経過例としては、まずダイエットを普通に開始することから始まり、その後逆に食べすぎが始まり出します。この食べ過ぎに伴い体重増加に対する極端な恐怖が起こり、パージングを思いつき実行に移します。その後、後悔と自己嫌悪、空腹感などが襲ってきて、むちゃ食いをするようになります。このむちゃ食いがいつの日か習慣化するようになり過食症という経過をたどります。

この障害の典型的な経過例は、次に示すものです

 ①ダイエットを開始
   ↓
 ②食べ過ぎが始まる
   ↓
 ③体重増加に対する極端な恐怖
   ↓
 ④パージングを思いつく
   ↓
 ⑤後悔、自己嫌悪、空腹感などを生じる
   ↓
 ⑥むちゃ食いをしだす
   ↓
 ⑦習慣化する


では、実際に神経性過食症の診断基準と実際に現れる身体的徴候についてお話し致します
尚、日本における診断基準は現在の所BNに関してはないため、WHOの診断基準を今回は示します。

 1)診断基準
  ①持続的な摂食への没頭と食物への抗しがたい渇望
   が存在する(短期間に大量の食物を食べ尽くす過
   食のエピソードに陥る)
  ②食物を摂ることによる太る効果に、以下の1つ以
   上の方法で抵抗しようとする
   ・自ら誘発する嘔吐
   ・緩下剤の乱用
   ・交代して出現する絶食期
   ・食欲減退剤や甲状腺末、利尿剤などの薬物の使
    用
   ・糖尿病患者による大食症に伴うインスリン治療
    の非実行
  ③肥満への病的な恐れから、自ら厳しい体重制限を
   する
   ・数ヶ月から数年にわたる間隔をおいて神経性不
    振症の病歴がしばしば認められる
   ・中等度の減少が認められることがある
   ・一過性の無月経を伴うことがある

 2)身体的徴候の例
  ①自己誘発性嘔吐を伴う症例では、しばしば右手背
   の第1指、第2指の付け根に吐きだこがみられる
  ②唾液腺の腫張(耳下腺と顎下腺の腫張)
  ③齲歯(くし)が歯の裏側にみられる
   (大量の炭水化物の摂取と頻回の自己誘発性嘔吐
    による胃液の逆流による)
  ④浮腫がみられることがある
  ⑤標準体重~肥満
  ⑥過食後の微熱

以上、神経性過食症の診断基準と身体的徴候例ですが、本摂食障害の有病率はANの約10倍と非常に高く、集中力や判断力の低下や無気力感などを呈し、個人心理学的因子、生物学的因子、家族因子、社会文化的因子が相互に複雑に関連していることにより起こると考えられています。

症状としては次に示す内容を示します。

 1)神経症状
  ①やせ願望と肥満恐怖
    肥満恐怖を認めますが、やせ願望はそれほど強
   くない場合もあります。病感や病識を認める場合
   が多い。身体像の障害については、正常とあまり
   さはない場合がほとんどです。
  ②抑うつ症状
    うつ症状を生じてこれを解消するために過食に
   陥ったり、低栄養や体重減少、過食や嘔吐により
   2次的に鬱症状を生じたりすることがあります。
  ③強迫症状
    食物やカロリーへの強いとらわれや、確認や消
   毒癖などの症状を認めます。
  ④不安症状
    何事に対しても過度に心配する全般性不安障害
   やパニック障害、社会恐怖などを併発する場合も
   あります。
  ⑤失感情症
    感情の杵築と表現が抑制されることがしばしば
   認められます。
 2)行動異常
  ①摂食行動
    過食症状が認められます。また、過食と嘔吐の
   代替行動としてチューイング行為(食物を噛んで
   そのエキスを吸い残渣を吐き出す)が認められま
   す。
  ②排出行動
    過食による体重増加を防ぐため、あるいは、体
   重を減らすために自発誘発性嘔吐や下剤や利尿剤
   の乱用が認められます。長期にわたり指等で嘔吐
   をしていると吐きだこが認められます。
  ③活動性
    うつに傾きやすく、活動は低下します。
  ④問題行動
    自傷行為や自殺企画、アルコールや薬物乱用な
   どの自己破壊的行為や万引きなどの社会的逸脱行
   為がしばしば認められる。
 3)身体症状
  ①体重
   標準体重~肥満
  ②月経異常
   無月経、稀発月経、一部は過剰月経
  ③その他
   浮腫や過食後の微熱

以上が神経性過食症の症状です。

これらの摂食障害の原因については様々なことがいわれていますが、今のところ単一の病因は見つかっていないのが現状です。それは、個人心理学的因子、家族因子、社会文化的因子などが相互に複雑に関連していると理解されているためです。



次回は、特定不能の摂食障害についての診断基準と身体的徴候についてです

でわ、また。。。。。


  参考:摂食障害の診断と治療 ガイドライン2005 / マイライフ社

摂食障害 - 診断基準と身体的徴候 ① -

2008-12-12 21:38:39 | 摂食障害に関するメモ
今日は、神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa:AN)の診断基準と徴候についてお話しします

まずは、もう一度神経性食欲不振症とはどんなものであるかをお話し致します。

神経性食欲不振症(神経性無食症)とは、何らかの理由で食べられなかったり、食べなくなってやせてしまい、健康を害する病気で、若い女性によくみられるタイプの摂食障害です。

この障害の典型的な経過例は、次に示すものです

 ①ダイエットを開始
   ↓
 ②ダイエットを続けているうちに自分をコントロール
  することが出来るという過信が生まれる
   ↓
 ③体重を減らすためのさまざまな行動が加わる
   ↓
 ④健康を損なう


では、実際に神経性食欲不振症の診断基準と実際に現れる身体的徴候についてお話し致します

 1)診断基準
  ①標準体重の-20%以上のやせ
  ②食行動の異常(不食・大食・隠れ食いなど)
  ③体重や体型について歪んだ認識や過剰な影響
   (体重増加(肥満)に対する極端な恐怖など)
  ④発症年齢:30歳以下
  ⑤女性の場合は無月経
   (月経周期が連続して少なくとも3回欠如する)
  ⑥男性の場合は性欲、性的能力の減退
  ⑥やせの原因と考えられる器質がない

 2)身体的徴候の例
  ①体型が通常の範囲を超えて痩せている
  ②無月経がみられる
  ③皮膚は通常乾燥し弾力を失っている
   (時に黄染している)
  ④浮腫がみられることがある
  ⑤産毛が主に背中や四肢に密生する
  ⑥髪はもろく抜けやすいが、恥毛ろ腋毛は正常
  ⑦歯は栄養失調のため変色し、エナメル質の腐食がみられる
  ⑧低体温、徐脈、低血圧がしばしばみられる
   (収縮期血圧80mmHg以下も時にある)

以上、神経性食欲不振症の診断基準と身体的徴候例ですが、本摂食障害のタイプは、環境-精神-身体-行動の相互干渉的病態が特徴です。従って、現在は病因も多元論的に解釈されています。

症状は、患者個々の体重、病悩期間、食行動様式などにもよりますが、身体面から心理・認知・行動面まで幅広い障害を有します。

現段階では、摂食障害を直接引き起こす原因となる物質は同定されていませんが、レプチンやオレキシン、グレリンなどのホルモンをはじめ多くの生理活性物質が、低栄養や習慣性の過食・嘔吐などによって分泌や作用力の影響を受けて、食欲調整系に関与していると考えられています。

また、大脳の萎縮や側脳室の拡張と大脳の平均血流量低下、更に帯状回を中心とする前頭葉などの局所脳血流量の低下が報告されています。


次回は、神経性過食症についての診断基準と身体的徴候についてです

でわ、また。。。。。


  参考:摂食障害の診断と治療 ガイドライン2005 / マイライフ社

摂食障害 - 摂食障害の分類 -

2008-12-11 23:44:59 | 摂食障害に関するメモ
今日は、摂食障害の分類についてお話し致します

摂食障害は、現在次の3つに分類されています

1)神経性食欲不振症(神経性無食症)
  何らかの理由で食べられなかったり、食べなくなってやせてしまい、健康を害する病気である。若い女性によくみられるタイプである。この障害の典型的な経過例としては、まずダイエットを普通に開始することから始まり、ダイエットを続けているうちに自分をコントロールすることが出来るという過信が生まれてきます。この過信により、体重を減らすためのさまざまな行動が加わり、その結果自分がわからないうちに健康を損なうという経過をたどります。

2)神経性過食症
  むちゃ食いと、その後のパージング(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の乱用など)が特徴である。この障害の典型的な経過例としては、まずダイエットを普通に開始することから始まり、その後逆に食べすぎが始まり出します。この食べ過ぎに伴い体重増加に対する極端な恐怖が起こり、パージングを思いつき実行に移します。その後、後悔と自己嫌悪、空腹感などが襲ってきて、むちゃ食いをするようになります。このむちゃ食いがいつの日か習慣化するようになり過食症という経過をたどります。

3)特定不能の摂食障害
  この摂食障害は、神経性食欲不振症や神経性過食症の基準も満たさない摂食障害をいいます。


以上が、摂食障害についての分類ですが、簡単に表現すると過食症、拒食症、そのいずれも当てはまらないものの3種に区分されるのです

では次回から、それぞれの摂食障害について細かくお話ししていきましょう

でわ、また。。。。。

摂食障害 - 摂食障害とは? -

2008-12-10 23:48:17 | 摂食障害に関するメモ
みなさん。。。お久しぶりです

前回は「便秘」をテーマに約50回にわたって配信してきましたが、今日からは便秘同様いろいろと悩んでいる人がたくさんいるといわれています「摂食障害」についてお話ししていきます

摂食障害で悩んでいる人はたくさんいるかと思います
今回このブログでお話しすることにより、悩んでいる本人はもとより、本人の周りにいる人達への理解を含め、少しでも摂食障害で悩んでいる人の役に立てればと思っております

でわ、摂食障害とはどんな病気なのでしょうか

摂食障害(Eating Disorders:ED)とは、一般的に摂食行動に異常を生じる疾患のことをいいます。拒食症や過食症を主として、さまざまな病態が存在します。

以前は、主として思春期の女性に発生することが多かったのですが、近年では初経以前の小学生から結婚出産を経験した30歳代以降の女性に至るまで摂食障害にかかる年齢層が拡大する傾向にあります。

女性は常に「きれいになりたい!」という願望からダイエット(こんにゃくダイエットやマイクロダイエットなどによるダイエットブーム)に励み、食事を制限することで食行動の変調をきたす摂食障害が多かったのですが、最近では心身のストレスとコンビニエンスストアの普及により過食により摂食障害が増えてきています。これは、一つの現代病と言っていいかもしれません。

最近では、女性の人が信じられないくらい食べる大食いの人が増えてきたのもその一因なのかもしれません。。。。。

このような流れをみていくと、今後ますます摂食障害が増えていくことが懸念されます

次回から、これら現代病とも言える摂食障害について詳しくお話ししていきましょう


でわ、また。。。。。