角川俳句百選 指導案
TOSS石黒塾 三浦宏和
ながながと川一筋や雪の原 野沢凡兆
【授業の展開】
野沢凡兆など、読めない漢字がないか確認した後、次のように指示する。
何回読んでも同じになるように、声に出して読んでご覧なさい。
各自声に出して遅くした後、列指名し一人ずつ読ませる。
どこで切って読みますか。
ながながと で切る子や、ながながと川 できる子がいると予想される。
必ず切るところがあります。どこですか。
や である。
「これは切れ字といって、話者の感動の中心が川一筋にあることを示しています。」と簡単に説明。
季節はいつですか。
(冬)
季節が分かる言葉は何ですか。
(雪の原)
「雪の原という言葉から、この句の季節が冬だと分かりますね。このような季節を表す言葉を季語といいます。」
なにが「ながなが」としているのですか。
(川 雪の原)
「話者が川だけがながながとしていると感じているなら、ながながと川 一筋や 雪の原 と読むのかも知れませんね。でも雪の原もとても広々としている感じがするので、ながながと 川一筋や 雪の原 と読んだ方が、どちらも 続いている、広がっている感じがしますね。」
この句に出てくるものを対比しなさい。
川 ←→ 雪
水色 ←→ 白
小 ←→ 大
動 ←→ 静
線 ←→ 面
流行 ←→ 停止
動と静の対比が出なければ、次のように発問を加える。
この句の中の川と雪を動と静で対比しなさい。
この句で強調されているのは何の何色ですか。
(川の水色)
この句で動いているものは何ですか
川
話者の感動の中心にあり、強調されているものは何ですか。
川一筋
なぜ「ながなが」はひらがななのでしょうか。「ながなが」を漢字で書くのとひらがなで書くのとではイメージはどう違いますか
(堅い、やわらかい)(ながながのほうがのんびりしている)(ながながのほうがより長く伸びている感じがする)
「野沢凡兆は江戸時代の人で、なんとあの松尾芭蕉の弟子でもあったんです。そんなすごい人だから、今みんなが考えたようなことを実は知っていたのでしょうね。江戸時代よりもずっと昔の平安時代にもながながをわざとひらがなにした有名な短歌が今でも残っていますよ。みんなも知っている百人一首の中のこの短歌です。(柿本人麿呂の短歌を詠む)(ほかにも後鳥羽院の短歌も紹介) 凡兆は当然よく勉強していて、知っていたのでしょうね。」
さあ、皆さん、この俳句の景色を絵に描いてご覧なさい。
この俳句の景色がもし目の前にあったらどんな気持ちになりますか。
(自由記述)
「今みんなが発表してくれたことをきっと凡兆も俳句に残したかったのでしょうね。」
話者が自然から感じたものは何でしょうか。自然の○○とノートに書きなさい。
(自然の美しさ、広さ 動と静 など)
資料
(「ながなが」をほかにひらがなで書いている短歌や俳句)
あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
桜さく遠山鳥のしだりをのながながし日もあかぬ色かな 後鳥羽院
路傍に犬ながながとあくびしぬ
われも真似しぬ
うらやましさに
(石川啄木『一握の砂』より)
(現代・素人の短歌・俳句)
【よみうり文芸1999/08/01】短歌(青海町・猪又久子) /〈佳作〉ながながと北陸線は貨車すぎて蛇行線路の朝日に映ゆる
暑き日の鳰ながながと潜りけり 窪田 明(太田市医師会俳句の会平成十七年八月詠草)