犬塚勉展「稜線の風の如く」（せせらぎの里美術館）

折角御岳まで行くのなら、この企画を見よう！ということで、ロープウェーに向かう前にちょっと寄り道。川沿いの遊歩道を歩いて数分、「せせらぎの里美術館」へ行ってきました。

→せせらぎの里　美術館　公式HP　

今開催中なのが、「犬塚勉展」。
山を愛し、38歳で谷川岳で遭難死した画家の回顧展です。
植物を中心とした風景、静物画。これがまた写真かと見間違うような緻密さで描き出されています。まさにスーパーリアリズム。

絶筆とそれに類する作品には、渓谷を流れ落ちる水が描かれているのですが。その水面などは、こちらで手をかざしたら自分の手がうつりこむんじゃないかと思うほど澄んだ鏡面なのですね。
徹底的にリアルさを追い求めた画家渾身の作です。

犬塚の作品を私が最初に見たのは、ポスターだったか、雑誌の企画ページだったかだと思うのですが、「（アンドリュー）ワイエスのような絵だなー」という印象でした。

印刷物は平面ですから、そのまま見ると、単なる自然写真。
でも、よーくよーく見ると、筆遣いに気づく。
実物を見るともっとその、雑草の一本一本まで描きこまれた緻密さ、というのを実感出来ます。

今回の作品を見て思ったのは、ワイエスの絵はどこか荒涼感とでもいうのか孤独とか、通り過ぎてしまう時間に対する寂寥感とか、といったものを感じさせるのと違い。犬塚の絵には、静謐さがみなぎっているということでした。
何か人間の考えだとか思いだとかをそこに込めるというのではなく。今、目の前にある自然すべてを、空気も水も、音も風も、時間すらも余すことなくキャンバスの中に閉じ込めようとする気迫、緊張感がありました。

いやぁ。ため息が出ます。