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思いつきで書いた物語と実話のMIX

フィクションとノンフィクション。目線を変えると景色も変わる

言葉にできない3-4

2019-09-06 22:54:00 | 日記




口コミ


人から人へと伝わる伝達路だ


時としてそれは多大な影響力を及ぼし


この情報社会にとっても


驚異的な広がり方を見せる



私が退院後初めて学校へ出向くと


そこではすでに噂が蔓延していた


乱交の末 中絶した


だからあいつはヤリマンだ


あいつは誰でも受け入れる尻軽女で


狙ったターゲットがいるときには自分から向かうハンターだ


初体験は小学校の時で


今では100人切りも達成済みだ


そんな根も葉もない噂が私に伝わるのも


久しぶりに登校したその日のうちだった


教室や廊下の至る所で


女子生徒からは白い目で見られ、蔑まれ


男子生徒からはニヤニヤした下心を含んだ軽蔑の目で見られた


噂というのは怖いもので


事実無根とはこのこと


初体験が小学校だったって…


私の初体験は


あの日の事件だというのに


私の味方をしてくれる人がこんなにも居ないものかと嘆いたのは言うまでもない




あゆ美は私に


「体調が悪かったの?


「もういいの?


「連絡も取れなくて寂しかったよ


なんて


噂を知らないわけじゃないだろうに


ひとかけらも信じることなく


私の言葉だけを待ち


蔓延する私を蔑む声の中教室で


孤立していたに違いない


私はあゆ美に


「大丈夫だよ。すこし風邪が長引いて


と、初めて嘘をついた


するとあゆ美は


「そっか。じゃあしばらくは穏やかに過ごさないとね。


「また元気になったら一緒に買い物に行こうね^_^


って笑ってくれた


私はあゆ美1人の味方に救われた


何の疑いもなく私の言葉を信じて


まっすぐに確かな友情を伝えてくれた







しばらくすると飽き始めた生徒たちの口から私の陰口は薄れていった



流行りみたいなものなんだろう


何かが流行ればみんなが同じような格好をし


中には区別もつかないニコイチなんて言葉まで流行る


自分を持たない大衆に飽き飽きした




でも



しばらくすると私の耳にはまた別の噂が聞こえ始めた



私と行動を共にするあゆ美



アイツも同じなんじゃないかって



彼女を見る目は次々と悪意に満ちた目へと変貌し
ていった


彼女はそんなこと気にする様子もないが



私は罪悪感を感じ始めた



私といるばかりにあゆ美がそんな風に言われ始めた…



私にとってそれは


何よりも苦痛


堪え難いなんて生易しいものではなく


噂の発端には殺意まで芽生えたほどだ




そして私は



あゆ美を避けるようになってしまった



あゆ美を守る方法が



他にあるなら教えて欲しかった



あゆ美は時折私に視線を送った



でも私はそれを気付かないふりをして


休憩の時なんかにはわざとすぐに席を立ち


ギリギリに戻ってくる なんて


あゆ美との接触から逃げ回った


そしてしばらくすると



あゆ美の噂話もまた


徐々に薄れていった



でもまた


男の取り合いで仲違いした


などと


噂が広がり始めた



2人でその噂と戦おうと思ったときには



あゆ美からの視線を感じなくなっていた


私が避けてることを察した彼女は


廊下をうつむいて歩いていた


わざと肩をぶつける男子生徒に突き飛ばされて


転んで


教科書ばらまいて…



でもあゆ美は


何も言わずに立ち上がり


散らばったものを拾い集め


またうつむいて歩き出した



私とすれ違っても目を合わせることはなく


私が送る視線にも気付かない


顔を上げて目が合ったと思っても


そのまま目の前を曲がり


教室へと入っていった





私は自分勝手だと思いながらも


やり場のない気持ちに耐えきれず


「無視すんなよ!



って…





あゆ美




ごめんね










本当に




ごめんね





私はあゆ美の後ろの席のやつに伝えた



「私…学校辞めて大阪いくから。あゆ美のことお願いできないかな?



「なんで俺に言うの?



「だってアンタも私の時もあゆ美の時も噂に興味なかったから。アンタなら信じれると思って。


「まあ。何をお願いされたのかはよく分からんけど、まあ後ろの席だし。まあ…分かったわ。


「ありがとう。


「ま、お前も頑張れや。またいつか分かり合える日がくるって。根拠ねえけど。


「そだね。ありがとう。



私はこうして学校を辞めた。



学校を辞めた私は


大阪の親戚の元に下宿させてもらい


美容師見習いとして働き始めた


あゆ美との夢のため


来る日も来る日も一生懸命働いた








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