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ポール・マッカートニー / ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード

2006-01-12 | Disc Review
実は、私の一番好きなアーティストと言いますか、別格扱いで不動の方がポール・マッカートニーでして、本当なら9月にこの新作『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード』が発売になった時点で取り上げたかったのですが、日本盤の発売が変則的(日本盤のみのボーナス・トラック入り通常盤が先行発売、CD+DVD初回生産限定スペシャル・パッケージ日本盤がその約2週間後に発売)で且つセキュアCDなる新たなCCCDで発売されたことから、どちらの仕様のアルバムを米国盤非CCCDで購入するか等、購入方法や選択に悩んだこともあり、そうこうしているうちに、公私の多忙等も加わり、書く機を逸してしまっていました。(CCCDに関しては、音飛びしやすいという傾向と、私自身CDデッキを壊されかけた経験があり、それ以来、余程でない限り購入を避けています。もっとも、ここではこれ以上のCCCD論議は控えますが。)

今回の新作は、プロデューサーにナイジェル・ゴドリッチを迎えていたこともあり、前評判がとても良く、アルバム自体に対する期待はかなり高いものとなっていました。しかし、先行シングル「ファイン・ライン」を初めてインターネットで聴いた時は、正直、少々期待はずれでした。1997年発売のアルバム『フレイミング・パイ』のタイトル・トラックのようで新鮮味がなく、アルバム収録曲として入っている分には申し分ないけど、先行シングル向きとは思えなかったからです。というか、個人的には、1989年発売のアルバム『フラワーズ・イン・ザ・ダート』からの先行シングル「マイ・ブレイブ・フェイス」や第2弾シングル「ディス・ワン」のような、キャッチーで万人受けしそうな曲でのシングル・チャートでの久々の成功を期待していたので、聴いた瞬間、期待していた久々の全米・全英シングル・チャートNo.1獲得はおろかTop10入りもまたおあずけだな、と感じました。ただ、アルバムとしては、今回の新作『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード』は、とてもポールらしくて、個人的には『フレイミング・パイ』以来に好きなアルバムです。(聴いた当初は越えるかとも思いましたが、『フレイミング・パイ』は色々個人的に思い入れのあるアルバムということもあり、結果的には、超えませんでした。)とはいえ、内容の充実度は『フレイミング・パイ』と互角に近い、という印象は今でも抱いています。もっとも、一般的には、ポールがドラム、ギター、ベース、キーボードからブロック・フルート、ハーモニウム、フリューゲルホルンまで、ほとんど全ての楽器を一人で演奏していることから、1970年発売のアルバム『マッカートニー』や1980年発売のアルバム『マッカートニーⅡ』を引き合いに出して語られている場合が多いですけど。とにかく、手作り感あふれる雰囲気がとても素晴らしいアルバムで、しかも、ナイジェル・ゴドリッチによって随所に程よくスパイスのように音の隠し味が散りばめられているので、聴き込むほどに味の出てくる飽きの来ない一枚です。(因みに、ビルボード誌の全米アルバム・チャートでは最高位6位、全英アルバム・チャートでは最高位10位という結果でした。)

因みに、このアルバムで特に好きな収録曲を強いてあげるなら、このアルバムからの第2弾シングルであり、ポールが「「ブラックバード」(アルバム『ザ・ビートルズ』収録)の娘」と称する佳曲「ジェニー・レン」と、ビートルズのアルバム『リボルバー』収録のポール作の佳曲「フォー・ノー・ワン」を彷彿とさせる「イングリッシュ・ティー」です。とにかく、ポールの音楽が好きなファンなら、手放しで喜びを感じるであろう、ビートルズっぽくもありポールのソロっぽくもある、ポールの”世紀のメロディ・メイカー”としての魅力がかなり集約されたアルバムであることは確かです。ただし、このアルバムに、新たなポール・ファンを獲得するような万人受けする魅力があるかというと、正直難しいと言わざるを得ません。そういう意味では、どちらかというと、ビートルズやポールの音楽のファン向けのアルバムと言えると思いますが、じっくりと腰を落ち着けて音楽を聴きたいという方には最適な一枚とも思います。


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