雨の記号(rain symbol)

▲藤井聡太二冠  VS △野月浩貴八段から

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▲藤井聡太二冠  VS △野月浩貴八段から


第79期順位戦B級2組8回戦


 この一局は藤井二冠の7六歩に対し、野月八段は3四歩と応じて始まる。続いて先手は戦法打診の2六歩。後手は4四歩と角道を止めた。先手は2五歩とついて角を3三地点に呼び寄せる。
 先手4八銀と攻めの態勢を築きに向かう。後手、守りの銀活用で4二銀。
 先手角頭を目標に3六歩と突く。”雁木で来ますか”と訊ねている。
後手は保留して8四歩。先手様子見の6八玉。後手8五歩。攻め合いを目指して角を7七に呼び寄せる。
 7七角を見て後手は4三銀と上がる。雁木模様である。


★「雁木」は、一般的には、
①雪国の商店街等で見られる雪よけの屋根
②船着場における、階段状の構造物を指すらしい。
 一般的には以下の1図を指すらしい。




  6七の銀が下の守り金2枚に連結し、5七の銀は自由に動ける位置にある。序盤によく見かける図だ。右銀はいずれ右方に攻め上がるか、8八の角がいなくなればバックして、銀矢倉に楽に組み替えられるのが利点と言えそう。
 ずっと昔、紀ノ川の砂洲で行われていた夏祭りの船着き場で、自分は初めて雁木なる構造物を見た。祭りが終わった後、砂洲から渡し舟に乗り対岸に渡った。舟をおりて土手沿いに上ったのがその構造物だった。
―閑話休題


 将棋はここからしばし陣形の整備に入る。自陣の安定度をどのレベルにおくかが序盤の見どころだ。
 守りより攻めの強い藤井二冠と野月八段。がっちり固め合う前に戦いは始まってしまいそうである。
 先手は5八金右とひとつ締めてから、3七銀から3五歩と仕掛ける。後手も7二銀から7四歩と我が道を行く。
 先手7四歩と取りこむ。後手の同銀に先手は3筋に狙いを絞って3八飛。後手も8六歩と仕掛ける。先手同歩に後手気合の7五歩。先手それも同歩。
 先手も後手も、”これで良し”の戦いとなったようだ。
 後手、角の移動場所を問う7六歩打ち。後手は6六角を選択する。
 後手8六飛車と歩を補充する。後手8八歩打ち。各将棋でよく出るようになった歩打ちである。後でこの歩が金銀並みの働くケースが増えている。この一局はどう展開するのか。
 ここで後手は5二玉を選択する。先手7八銀。後手すかさず4五歩。先手は3三角成と応じる。後手の同桂に先手は6六に角を打ち据える。一見8八の歩を飛車成りから防いだだけのように見えるが…。
 後手8四に飛車をバックする。先手の角に間接的に睨まれてもここが最善の位置なのか? 先手8七銀と上がる。この銀が好個の位置なら一手得をしたようなものだが…。
 後手の6四歩に対し、先手は7六銀と進撃する。主戦場は左辺にあると見た手なのか? 守りの銀がいつの間にか飛車を狙う駒となっている。後手陣にはどう映っているのだろう? 3四の離れ銀を守らねばならないから不自由で辛い位置である。
 次の7八金が実現すれば前線も角と銀で制圧気味だし、先手玉の守りは安定してしまいそうである。
 後手6五歩で6六の角を追う。一見、5五に角を飛び出す手もありそうだ。銀に働きだされるのを嫌ったのだろうか…。
 グズグズしてると先手陣はどんどん安定し、じり貧になってしまいかねない。後手、4六歩と突きだす。この歩を突き出したからには後手には決行する作戦があるらしい。先手は同銀と上がって応じる。
 後手、2七角と飛車取りに打ち据える。先手は3七飛と浮く。後手6三角成りと進む。TV解説陣も予想していた手の1つだった。しかし、角が成り戻っても先手の優位はほとんど動かない。
 先手歩を払って6五に進撃する。このままでは先手にどんどん良型を築かれていってしまう。後手は馬の利きで飛車の頭を歩で叩く。後手3九飛車とバックする。後手は歩を払って2五に進んで来る。
 先手悠々と7四歩。後手陣は大駒の活躍を制御されて息苦しさが出てきた印象。6四歩と打っても6六角と角で飛車を狙われるのが見えている。果たしてその通りになった。後手8六飛と浮く。
 ここで先手は5六銀と引き上げる。駒の損得が歩以外ないながらも、歩数の差で先手はどんどん楽な戦いとなって来ている。後手も2五の角を引いて陣形を引き締めにかかるが、先手も7八金で玉の守りはほぼ鉄壁となってしまった。
 後手7六飛。先手は右銀を5五に進撃する。後手は6二玉。大きな戦いは起こらず、玉を守り合う戦いとなってきた。
 先手3三での二枚替えを狙って6四銀と進む。後手はそれを嫌って4五桂と跳ねる。先手その桂を狙って4六歩。後手は5七桂成りとする。先手同金。後手、4八に打つ銀を入手するため4三歩打ち。先手は逃げようがない銀を3三で成り捨てる。
 ここで先手は6六飛車で角をせしめる。同歩を誘って3三の銀をタだ取りする。一見、先手陣にピンチが訪れたように見える。次の4八銀打ちが痛打となるからだ。しかし、先手の7九飛車が敵玉の攻めを睨んで強烈な一着だった。
 続いて攻め続けたい後手だが、飛車の腹打ちが見えてるだけに攻めに向かえない。飛車打ちを防ぐ後手の3二金引きに、6七金上がるが先手に取って気持ちいい着手だった。7四に進んだ歩が敵玉を眼下において活き活きしている。
 攻める他なくなった後手は2七歩成りとして同桂を誘い、4八に銀を打ち据える。あわよくばの頓死狙いか? 先手は冷静に4七に狙われた金をかわす。縁台将棋の自分ならすぐ玉を寄るか金を下がるなりしてピンチを招いてしまうところだが、藤井二冠は最後まで読み切っているらしい。後手に5九角と打たせて5八玉と寄った。何だか危ない受けだと最後まで冷や冷やしたが、ここで野月八段は投了してしまった。野月八段もここで見込みがないと悟ったらしい。
 相手に一度の王手もしなかったのに、後手の攻めをことごとく切らして追い詰めた藤井二冠完勝の一局となった。
 こんな将棋も藤井将棋の一里塚なのか…。
 この対局を見てタイトルを守る将棋で藤井二冠はどんな戦い方をするのだろうと気になった。
 このように守る戦いをするのか。攻め倒す将棋をするのか。何か実験的な将棋を指すのか。…それらのバラエティーに楽しみは広がるばかりである。

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