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雨の記号(rain symbol)

 「その冬、風が吹く」から



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 誰とも本気で向き合えないまま、夢も目標も失い大人になってしまった荒んだ人生がある。
 多様で膨大で複雑な社会において、その人間たちを個々に拾い、あぶり出していくのは至難だが、ここでは人生の基本的な道しるべをなす自分の親にはぐれ、もしくは願うようなコミュニケーションを取れないまま、見かけだけは一人前の大人になったオ・ス(樹)と、幼い頃、両親の離別に加え、病気のため失明までしてしまったせいで周囲の者たちを信じられなくなったオ・ヨンの出会いを通し、人が人と本気で向き合うことがどういうことなのかが丹念に描かれていく。

 タイトルの「その冬、風が吹く」はそこから与えられている。

 ただ、自分の都合だけで他者と触れ合ってきたオ・ス。幼年時の不幸に加え視力まで失い、周囲の者たちから聞く耳まで閉ざしてしまったオ・ヨンが尋常な形で出会えるはずもない。
 
 ギャンブラーとしてスリリングな日々を送るオ・スはある日、同じ施設出身の仲間で姓名も同じオ・スが某一流会社の御曹司だと知る。それを利用してヨンに近づくことなど思いも寄らないことだったが、ヨンの兄はオ・スを助けようとして逃げる途中、車にはねられて死んでしまう。
 自分を助けようとして目の前で車にはねられたヨンの兄。オ・スは彼を理不尽な死に巻き込んでしまったことに大きな負い目を抱え込んでしまう。

 そうした中、オ・スはやくざのボスがゾッコンの女(チン・ソラ)から一方的に愛され、愛情の過ぎた彼女のせいで罠にはめられ、多大の借金を抱え込む。チンピラに追い回され、警察からも追われた彼はとっさの機転でヨンの兄、オ・スを名乗ってしまう。

 母親は離婚して兄だけを連れて家を出て行った。ヨンはそんな兄に対し、母親の愛情を一身に浴びた羨ましさとともに妬ましい感情も抱いていた。
 目の前に登場した兄のオ・スを信じられないのは当然だった。しかし、金が必要となってやってきたと知らされ、それはすぐ納得ができた。
 自分の周囲にいるのはみんなそんな人間たち。彼女が心を許しているのは唯一、弁護士のチャン・ソンだけだった。
 兄は金目当てでこの家にやってきた。それを信じることでヨンの疑り深さは一面鈍った。他人かもしれないと思いつつ、それを疑う心は他の者より弱かった。
 他の者たちは明らかに疑いだしている。ヨンもその影響を受け出している。疑念を払いのけるためには当のヨンを信じこませるしかない。二人だけの思い出でヨンに謎かけをされたオ・スは、その謎を必死で解こうとする中、ヨンに思い出の部屋があることを知る。
 その部屋に入り、ヨンの子供時代を調べだすオ・ス。それらの記憶にひとつひとつ触れていく過程で浮かび上がってくる彼女の少女時代。何の苦労もない大富豪の一人娘のはずの彼女も大きな孤独の闇を背負っていた。
 ”誰も信じず生きることが自分を捨てた親へのせめてもの復讐”とばかり自分勝手な生き方を続けてきたオ・スは、そこに自分とは逆に行動の自由を失い孤独の闇を背負って囚人のように暮らしている彼女を見たのだ。それゆえ、彼女は死への願望が強かった。
 これまで死なないできたのは、自分を捨てていった母と兄に会う希望を残していたからだった。
 しかし、自分を捨てた母は死に、生きていた兄は金だけが目当てで戻ってきたと知り、些細なつっかい棒さえ外れてしまった。


 オ・スを兄と信じて疑わないヨンは周囲の反対を押し切り、自分が死んだ後オ・スにも遺産を残す遺書をしたためる。
 オ・スはそれを素直に喜べなかった。彼女が死ぬことを決意したと読み取れるからだった。


 ある日、二人は鉄道駅のホームに立っていた。
「私を殺せばお金が手に入るわ」
 とオ・スに話しかけるヨン。
 ホーム上に急行列車が迫ってくる。
 ヨンは一歩前に進み出た。
「やるなら今よ」
 皮肉や冗談と思っていたオ・スはあわててヨンの身体を止めに入った。急行列車が直前に来ても線路上に進むのをやめなかったからだ。
 オ・スはギリギリでヨンの身体を自分に引き寄せた。
 この瞬間、オ・スはヨンに愛を覚えていた。彼女は自分を痛めつけることで孤独を癒していた。わがままが自身の体に向かう孤独。好きなように生きてきた自分とは真逆の痛みを背負った彼女。オ・スは強くヨンを抱きしめていた。
 ここからオ・スは彼女にこの世のいろんな世界を見せてやりたいと決意する。


 チョ・インソンとソン・へギョの演技がすばらしく叙情性豊かなドラマに仕上がっている。
やくざ、博打、大富豪、愛人、会社の利権をめぐる争い等、韓ドラ特有の筋立てだが、執拗さを抑制してのさじ加減が程よい印象である。ゴタゴタを4話ほど引き伸ばせるところをサラッとした着地に誘導したのが好印象を残した。
 この終わり方だとオ・スは何ら禍根を絶っていない感じも抱くが、二人の前にもう恐れるものはないってことなのだろう。
 ラストはヨンの内面世界が外に向かって開かれていくところでラストだが、欲を言えば、オ・スにもう少し現実の力強さが欲しかったところだ。
 ジンソンカップルの墓参りでオ・ス(樹)が死んでいないことはわかるが、見る人にとってはヨンの願望の世界が開いているだけの印象もある。
 よくあるラストの光景だが、あと少しだけ外へ踏み出してほしかったところだ。





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