goo blog サービス終了のお知らせ 

雨の記号(rain symbol)

地震6


English Version
한국어


 同僚たちはそれぞれ地震被害の余波をこうむっていた。一人は階段で足をすべらして腰を強打した。一人は高齢の母親が地震による落下物で頭を負傷した。一人は電車が動かず出勤がかなわなくなった。他の者たちも不測の事態に見舞われ、休みを報告してきた。
 仕事に出てきた一人も目を真っ赤にしていた。
 僕が会社に出てくるのにいつもの倍の時間がかかってしまったと話をすると、そんなのいい方だよ、と彼は言った。
「俺なんか、娘から電車が動かなくなって帰宅できないというから、迎えの車で千葉に向けて出かけたのはいいが、途中で車が動かなくなって立ち往生し、あきらめて戻る結果になったよ」
 娘は結局、蘇我のホテルで宿泊する憂き目に至ったという。
 千葉方面に向けて走らせた車はさっぱり動かなくなり、あきらめて家に帰りついたら夜の12時を回っていたらしい。車に備わっている最新のナビーも役に立たなかったようである。
 僕は車の最新ナビーとやらを笑い飛ばした。
「いざとなったら、当人の土地勘と経験がいちばん有効ってことだろうな」
 地震のせいでほとんどの者が出勤できなかった。
 出勤できた者で最低限の仕事をすませて帰路についた。
 千葉方面に帰っていくのは僕だけだ。来る時はいつもの倍かかった。16号線が不通のままならもう少しかかるかもしれない。
 16号線を走って行くと、前方に依然として黒い煙が立ち昇っているのが見えてくる。産業道路に接した市原バイパスの交差点では、朝と同じように警察官らによって右折誘導が行われている。下りはボートピアの陸橋交差点、上りは玉前公園そばのここの信号のところで迂回誘導が行われていた。
 自宅に帰り着くにはやっぱり二時間はかかりそうだ。そう思って右折すると道路は当然のごとく混んでいる。
 やあ、これはひどい。この先の交差点を通過するまで何回信号を待たなきゃならないのやら・・・。
 そう思ってとろとろ走っていくと、数台先の車が左折して路地に入り込んで行った。後に続く車は次々それに従った。僕もそれについて走った。車は止まっているより走っている方が楽なのだ。
 そこを走って行くと、朝走ってきた道路に出た。正解だと思って喜んでいたが、千葉方面に向う本道路に出ると車は数珠つなぎになって動かない。まるっきり動いていかない。
 車の速度より人の歩く速度の方が早い。何十台の車は追い越しただろうが、これではあまり意味はなさそうである。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事