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雨の記号(rain symbol)

変態ナンバーワン

慰安旅行地の酒場の片隅で、男たちが変態自慢を始めていた。
一人が言った。
「俺は酔っ払ってしまうと、胸がこうムラムラしてきて、回りにいる女たちのおっぱいを片っ端からもんでやりたくなるんだ。場面を思い浮かべる程度ですめばいいのに、実行に及んでしまうからタチが悪いよなあ。今夜も逃げ回る女の子らにずいぶん嫌みを言われたっけ。うちの会社内で変態ナンバーワンと言えば、何と言ってもこの俺だろうなあ」
「そんなの何でもないよ」
 もう一人が言った。
「俺なんか旅先で酔っ払うと、旅館の仲居をつい口説いてしまうんだ。それも年寄りが好みらしい。いつかこんなことがあったよ。薄闇の中で目が覚めたら、すぐそばに誰やら寝ている。明かりをつけたら、顔は皺くちゃで、おっぱいを靴下みたいに伸びきらせたばあさんがあられもない姿で横たわっていた。ああ、まただ、と思ったよ。変態ナンバーワンはこの俺さ」
「何だその程度か……!幸せな奴らだ」
 別の一人が言った。
「俺はそんなものじゃないよ。飲みたいくせに、いつもどうして酒が出るんだ、と嘆くくらいさ」
「何言ってるんだ。そのための慰安会じゃないか。飲みたければ好きなだけ飲めばいいじゃないか」
「そうだ、そうだ。そんなの何でもないことじゃないか」
二人は呆れたように頷きあった。
「まあ聞いてくれ」と彼は吐き捨てるように言い返した。「だから飲むわけだ。だけど、それで飲むだろう。へべれけに酔うだろう。あげくにどうなると思う?」
「そんなの知るわけないじゃないか」
「女房の奴を抱きたくなるんだ」
「はあっ……?」
「だから女房をだよ。それも無性にだ。慰安の旅先だというのに、他の女はまるで目に入らなくなる。ただただ女房の身体を裸にひんむいて犯してやりたくなるんだ」
二人は目を合わせた。次の瞬間、ハハアーッ、と彼の前にひれ伏した。口をそろえて言った。
「恐れ入った。お前が変態ナンバーワンだ」
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