
韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(94)
クムスンは怒り、ジェヒを無視して歩き出す。
ジェヒはクムスンを黙って見送った。
ウンジュにはそれが不思議な光景だった。
「あれは・・・一体、どういう状況なの?」
朝、出勤する時、ソンランはシワンに言った。
「今日、一緒に外食する?」
「急にどうしたんだ」
シワンのネクタイを結んでやりながらソンランは答える。
「怒ってるからよ。もう許して」
「一応、気にしてるのか?」
「私がもっとも怖いのはあなたが怒ることなのよ」
「やれやれ、そんな調子で嘘ばかり並べる」
「本当だって。地球上で――私の感情を左右するのはあなただけなの。分かる? すごい確率の夫婦でしょ。運命といっても良いはず」
「らしくないな。超現実主義者なのに」
「そう?」
「そうさ」
ソンランはシワンの肩に両手をあてがう。
「夕食後に映画を見よう。最近、デート不足だわ」
「・・・分かった。予約しといて」
「もう・・・横柄な返事ね。何時がいい?」
「来週の月曜日よ」
食事時、ジョムスンの質問にクマは答える。
「そう。忙しくなるわね。今日、一緒にお父さんのところへ行く?」
スンジャは顔を上げた。
「今日は無理よ」クマは答えた。「約束があるから」
「なら1人で行くわ」
――阻止しなきゃ・・・秘密を知られちゃう。
スンジャは切り出した。
「今週は暑いですから、来週、私と行きましょうよ」
「もっと暑くなるわ」
「天気予報を見たら、今日は雨が降るそうです」
スンジャの意図を知らないジョムスンは気軽に頷いた。
スンジャはほっとし、帰りに1人でサンドに会い、口止めしておこうと考えた。
ジョムスンは元気のなさそうなクマを心配した。
「彼氏のせいじゃないの?」
クマはあわてて否定するが、するとスンジャが説教口調で言った。
「男に人生賭けちゃダメ。男に人生を賭けたせいで、どんなザマだか分かるでしょ。こんな私を見ても、キラキラとまぶしい青春を恋愛なんかに費やすの?」
ジョムスンはスンジャにうとましい目を向ける。
「恋愛は一瞬だけど、人生は長いのよ」
「あなたはカッコよく生きなさい。教育大学を出たのに教職を捨てたのよ。自分の望む分野で成功してキャリアウーマンになりなさい。私みたいに若い時に結婚なんかしないで」
ジョムスンは口を開けてスンジャの話を聞いている。
「私は後悔してるのよ。父さんにせがまれて仕方なく早く結婚したもんだから」
スンジャはジョムスンの怖い視線に気付いた。
「何ですか?」
「あなた――いつか罰が当たるわ。この私がいる前で――よくものうのうと嘘がつけたものね」
スンジャは黙り込んでしまった。
部屋に戻ったクマは携帯を開いた。
メールも入ってきてない。
腰をおろして腕を組んだ。一点を見つめた。
「ひどいヤツ・・・! 許さないから」
テワンはテワンで苛立っていた。
ベッドの中で身体を起こした。
「クマのヤツ、クムスンにみんな話しちまって・・・ああ、もう」
ベッドから飛び出す。ブツブツ独り言をいう。
「クマよ――俺は当分、恋愛なんかする気はないんだ。考えてみろ。無理に決ってるだろ。俺はこれで勝負賭けてる。何としても今年中に頭角を現さなきゃいけないんだ・・・若いヤツらがどんどん出てきてるのに、グズグズなんかしてられない。お前も、俺が一花も咲かせないまま終わってなんかほしくないだろ? だから、俺のことを理解してくれ。ああ――ほんとにまいった」
――私のことを覚えてない?
クムスンは母親に話しかけられたのを思い返していた。
――突然、声をかけるなんて変でしょ。ところで、ナ・クムスンという名前だったわよね。その名前――私が、この世の中で、いちばん好きな名前なの。
クムスンはこみあげるものをやっとこらえた。
「ユン室長」
ミジャの声がした。ユン室長は仕事の手を止めた。
「出発ですか?」
「そうよ。今日はパクさんたちが留守だから大変でしょう。予約は取ってないわね」
「はい。でも何とかなります」
「メーク希望の方には、おわびしてください」
ウンジュはクムスンを見た。
じっと見てるのでミジャはウンジュに訊ねた。
「彼女に話でもある?」
「いいえ、では行きましょう」
ミジャは先に立つ。ウンジュはクムスンをにらみつけるようにして後に続く。
一緒に出かけるスタッフらは出口に待機していた。
外に出て行く時、ウンジュはまたもクムスンに冷たい眼差しを送った。
ジョンシムはピルトとフィソンの眠っている姿を見ながら笑いが止まらない。
ピルトは身体を起こした。
「笑顔になるほど俺のことが好きか?」
「暑さでイライラが来るから、そんな冗談はやめて」
「なぜ、笑ったんだ」
「分からないでしょ? フィソンとあなたって寝姿が同じなの」
「ふ~ん・・・そういえば似てるな」
「そっくりよ。昔はジョンワンと同じだったのよ。でも最近、フィソンも同じなの。これは遺伝よね」
ピルトは頷いた。
「フィソンを見てると――ジョンワンの小さい頃とまったく同じみたいだな」
「気付いてないと思ってたわ」
「そうか・・・?」
「シワンとテワンも気付いてないからよ。ほら、目鼻立ちだけでなく、物を食べる時の様子が――そっくりなのよね」
「まったくの生き写しだよ」
「ええ」
何度も睡魔に見舞われ、ハエ叩きでハエを追う。
フィソンがいないので、ジョムスンは一人退屈していた。
水を飲んでつぶやく。
「にんにくもないし・・・そうだ、サンドのところへでも? 久々だし・・・それがいい」
ジョムスンはサンドに会いに出かけた。
ジョムスンの顔を見るとジョムスンはいつものように小言を並べた。
状況の好転で元気を取り戻しつつあるサンドはそれを冗談で返せるようになっている。
「年老いた母親を置いて監獄に入ってるくせに、何がそんなに嬉しいの?」
「母さん、知らないのか?」
「何の話よ。私をなめないで」
「ほんとに知らないんだな。俺は出られるんだ。聞いてないか?」
「何と言った? もう一度」
「昨日、スンジャが示談書を提出したのさ」
「そんな話は初耳よ」
「なぜ内緒に? 示談したんだよ」
「それは本当なの? 出られるってわけね」
「ええ。すぐじゃないけど、示談したから出られるよ。本当に聞いてないの?」
「なぜ黙ってるのかしら。相手の人が譲歩してくれたの?」
「そんなわけないよ。お義兄さんが貸してくれたんだ」
「スンジャのお兄さん?」
「ええ。あの人は裕福だろ。罪悪感があったみたいさ」
「何言ってるの。あの人たちは、去年、海外へ移住したわ」
「えっ? 下のお義兄さんが?」
「そうよ。去年、海外に出る時だって――何ひとつ残さず持っていくとスンジャが呆れてた。そんな人が?」
「そうなの。お義兄さんには似合わない行動だから――俺もおかしいとは思ってた。海外送金かな」
「あの人たちがそんなことするはずがない」
「だよな。なら、どこからあんな大金を?」
「私が聞きたいわよ」
家に戻ったジョムスンはスンジャの取った行動にあれこれ想像をめぐらした。考えれば考えるほど腑に落ちないことだらけだった。
キジョンは透析を終わったヨンオクを見舞った。
「顔色がいいな」
「そう? いい気分よ。ありがとう」
「行こう」
キジョンの腕につかまって歩きながらヨンオクは言った。
「さっき透析室の中で、窓際にいた男性を見た?」
「いや、なぜだ」
「移植したんだけど、ドナーは息子さんだって」
「それはよかったな」
「何がよ」
ヨンオクは足を止めた。
「老い先短いのに息子の腎臓をもらうなんて」
「・・・」
「他人事だから何だけど、私には理解できない」
「本人だってやむをえずもらったんだろ。子供としては親を見殺しにはできない」
「親の道理をわきまえなきゃ」
「・・・」
ヨンオクはキジョンの手を取った。
「退院できる?」
「・・・確認しに行こうか」
病院にやってきたジョムスンは横から誰かに身体をぶつけられた。転びそうになったジョムスンを支えたのはぶつかったジェヒだった。
「すみません」
ジョムスンは腕を離してジェヒを見た。
「あら、芸能人顔負けのハンサム先生じゃないの」
「・・・」
「ほんと美男子だわ」
「こんにちは」
「礼儀も正しい」
「・・・」
「聞きたいんだけど、病院の食堂は?」
「食堂ですか?」
ジェヒは右手を指差した。
「植木鉢があるでしょ」
「ええ、見えるわ」
「その奥に非常階段があります。そこを降りたら右側に食堂の入り口があります。右ですよ」
「ええ、ありがとう」
歩いていくジェヒの後姿を見てジョムスンは惚れ惚れした顔になった。
「何て美男子なのかしら。礼儀正しいし、あんな息子がいたら胸がいっぱいになるわ」
ジョムスンは歩き出すが、前方から歩いてきた二人を見て我が目を疑った。キジョンとヨンオクが何事か話を交わしながら連れ立っていたからだ。
その姿にショックを受けたジョムスンは這うように外に出てきて息をついた。
「今日だけだからな。明朝は早く来い」
ドクタールームに戻ってきたジェヒは研修医らを早く帰した。
ジェヒもすぐ車で美容室に向かった。
店はスタッフらが帰途につこうとしている。
「それじゃ、お疲れ」
「明日、早く来いよ」
見るとクムスンは店内にまだ残っている。
ジェヒは車を降りた。クムスンのところに向かった。
ジェヒを見るとクムスンは立ち上がった。ジェヒは言った。
「話がある」
クムスンは無視してジェヒの横を通り過ぎる。
「話があるんだ」
クムスンは振り向かずに訊ねる。
「何の話。私はありません」
「確かに・・・まだ興味がある」
「私にはありません」
クムスンは振り返る。
礼をして行こうとする。ジェヒは叫んだ。
「しかし、移植は断れ」
クムスンは足を止める。
「ダメだ」
「・・・」
「やめろ」
「なぜ、それを?」
「興味があるから」
「そうじゃなく、どこで知ったんですか?」
「怖い顔されたら話せないだろ」
「話して」
「・・・偶然知った。俺は先生の教え子だから」
「どこまで知ったの?」
「俺には分からないさ。分かってる分を話そうか?」
「ええ」
「お前は・・・奥様の娘だろ」
「・・・」
「お前はその事実を最近知った」
「・・・」
「住所を聞きに来たのもそれが理由だろう」
「・・・」
「改めて謝るよ。あのことを」
「・・・」
ジェヒはクムスンの横に立った。
「あとのことは外で話そう」
そう言って先に立った。
クムスンは店の鍵を閉め、ジェヒについて歩いた。
やってきた主治医にヨンオクは訊ねた。
「私は心臓まで悪化したんですか?」
「・・・」
「少し前ぐらいから胸が締め付けられる気が・・・」
「狭心症の兆候です。ストレスを受けず、気を楽にしてください」
「はい。では――あらかじめ、身辺整理をした方が?」
主治医は笑う。
「何をいうんですか。チャン先生が倒れますよ」
「私の勘です。ショックも多いでしょ。腎不全患者に狭心症は危険なはず――先生・・・透析を受けてる時にショックが来たら――意識が戻らないことも?」
「そんな弱気は禁物です」
「長い闘病で――死を考えたせいでしょう。死ぬことは怖くありません。それより怖いのは・・・ある日、突然――何の準備もしないまま死ぬことです」
ジョムスンはスンジャに会わず家に帰ってきた。
「夫婦だったってわけ? あの二人が・・・」
クムスンに連れられてキジョンに会いに行ったことを思い出した。
ジョムスンは胸を押さえた。
「私はそうとも知らず、言葉に甘えたわ」
部屋を這いずっているうち、スンジャの言葉を思い出した。
――あそこにあった木の箱はどうしました?
――クムスンに持っていかせた。
――お義母さん。私が反対したのにクムスンに渡すなんて。
――何度頼んでも聞かないからじゃないの。
「このことを知ってたわけね。スンジャったら・・・だから私を止めたんだわ。いったい何てことなのよ。今すぐにでも・・・」
ジョムスンは立ち上がった。すぐにしゃがみ込んだ。
「まさか・・・あのお金は・・・?」
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