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雨の記号(rain symbol)

ガンコレクションマニアの妻

   男のする話は、おおかたが女に係わることと信じて疑わない女がいた。
ある日、彼女の夫のところにガンコレクションの仲間が訪ねてきた。
「こういう時代物の場合、俺は昔ながらに弾を一発一発ゆっくりこめて打つのが好きだね。連発銃などより時間はかかるが俺はこいつの方に愛着があるよ。古いと言われるかもしれない。だけど、俺もそう若くない人間だし、戦争にも縁のない年頃とあってみればなおさらにね」
ドアの陰で亭主の言葉を聞きながら彼女は深々と溜め息をついた。
「俺は反対だね。まだまだ若いという気持ちを今だって捨てていない。いくら平和な時代だと言っても銃はいざという時のためにあるものじゃないか。連発銃云々はともかくとして、古い鉄砲でも少しは早く撃とうという心がけや姿勢は大事だ。そうでないと銃を扱う腕は鈍っていく一方だし、体力だって早く衰えていってしまう気がするじゃないか。それで俺はね。こいつでいい方法を最近見つけたんだ。弾を撃った後、間を切らさないで弾を素早くこめる方法だよ。俺にこの方法を試させて女房はこの頃、あなたは凄い、って感心しきりなんだ」
彼が帰って行く時、彼女は亭主に見られないように男の袖口をつかんだ。耳元でこっそり囁いた。
「あなたのその方法、今度私にお教えいただけませんこと?」
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