平方録

誰かここで「壁ドン」してごらんよ


砂の壁である。湘南海岸自転車道沿いにそそり立っている。


この砂の壁の先には相模湾が広がっている。……でも見えない。


ボクの身長は173センチ。砂の壁はボクの身長より高いのだ。
路面のアスファルト舗装が現れているのは自転車や人が通れるスペースの確保を狙ってのことだろうが、半分以上は砂の下に埋もれたままである。


砂の壁は4月下旬から始まった大型連休の最中から成長し始め、大型連休が終わると同時に、自転車道を埋め、視界を遮ったまま動こうとしない。
これまでもたびたび砂の壁は出来ていた。
しかし、砂浜の先にある海が見えなくなるまで壁が高くなることはなかった。
今回のような壁が出来たのは今年の大型連休中にそれだけ強い風が吹いた証拠である。それも1日や2日ではなく、連日吹いていたように思う。特に夜になると海方向からの南西の風が結構強く吹いてわが家でも芽吹いたばかりのヤマボウシやコナラの新緑が音を立てて揺さぶられるくらいだったのが昨日のことようである。

海岸だから砂が動くことは驚きではない。
サラサラでしかも粒の小さな砂は軽いから少し強めの風が吹けばすぐに動き出すのだ。

砂が動いて陸地の住民に迷惑をかけないように飛砂防止を兼ねた防風林が湘南海岸沿いには伸びている。
国道134号線はうまいことに、この防風林の松林のど真ん中を貫いていて、その分防風林はやせてしまったわけだが、国道の両側には依然として10数メートル、場所によっては数十メートルもの幅で松林が続いているのだ。
防風林のおかげで自転車道が砂に埋まっても国道まで砂が飛ばされることは滅多にない。
かくして経済の営みは砂に邪魔されることなく、一日中活発な車の流れが絶えることのない大動脈として機能しているのである。

自転車道は砂浜のすぐ脇を走っているので、砂が動けばもろに道路が隠れてしまう。
故に自転車道わきに高さ7、80センチくらいの竹垣が設けられて道路際で砂を食い止めようとしているが、経年の積み重なりで竹垣は破れたり埋まりかけ、砂はその上を楽々と通り越して道路に流れ込んできているのである。
それが場所によってはボクの身長をはるかに超える高さまで成長してしまった。

これまで台風などが襲来した後でも、十数センチ程度動いた砂ならば小振りのブルドーザーを入れて一押しすれば全長8キロのコース上から半日程度で砂はどかされていたのだ。
それがボクの頭を超える砂をどかすとなると厄介である。
大型重機を何台も投入し、砂浜全体に砂を戻し、さらに平らにならして…


この部分の堆積がやや少ないのは砂浜の幅が狭くなっていることと、海側に少しだけれど植物が生えていて砂の飛散を押さえているためである。


辻堂海岸と茅ヶ崎海岸の境辺りでは砂浜の一部が緑に覆われている場所があって自転車道にまで砂は届いていない!
これが見た目はもちろん、費用対効果も考えれば一番良い方法だと思うのだが、真剣に取り組んでいる風には見えないのは行政の怠慢で、大風が吹くたびに税金を垂れ流しているのを納税者は知っているのだろうか。


植物の繁茂が薄れている所でもまだそれなりの効果が残っている。


一部で植物がはげかかったところに補植をした後があるが、この黄色に変色したところを見ると根付かせるのは難しいのだろうか。

カミュの小説に「シーシュポスの神話」という作品がある。
神を欺いたために神々の怒りを買ってしまったシーシュポスは大きな岩を山の上まで運び上げる罰を食らう。神々の言いつけ通り岩を担ぎ、あるいは押して山の頂まで運び上げるのだが、運び上げた途端に岩は転がり落ちてしまう。仕方なくシーシュポスは何度も何度も岩を頂まで運ぶが、その都度……
という話である。



梅雨の晴れ間。…って言ったって雨が降ったのは梅雨入り当日のたった1日だけで午後から晴れ上がったので気晴らしにやってきたら壁にぶちあったったのだ。
わが人生そのもの……なぁ~んちゃって。
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