それはパリ五輪のスポーツクライミングで安楽選手が銀メダルを手にする直前のことだった。
19:57。夕食を終えテレビ中継の画面を見ていると、いきなり家の下の方からガリガリガリッ(ボクの五感にはそう聞こえた)というような音とともに短時間だが激しい縦揺れが襲った。
いま改めて音の正体を考えると、あれは地下深く、震源域で地下の岩盤が裂けるときに出た音だったのではないか…
固唾を飲み身を固くして身構えるまでもなく、揺れはすぐに収まったが、何せ前日の8日には宮崎県の日向灘でM7級の大きな地震があり、「南海トラフ巨大地震臨時情報(巨大地震注意)」が出され、沖縄から茨城県にかけての地域で「今後1週間は巨大地震に注意するように」という呼びかけが行われたばかり。
マグニチュード(M)は5.3だったから規模はそれほどでもないが、震度が5弱で、「5」を超えればやはり家は大きく揺れる。
しかも「巨大地震に注意しろ」と言われたばかり。地震そのものの揺れに加えて心理的な揺れも加わったから、一瞬どきりとした。
震源地は何と神奈川県西部。
相模川より西側の地域のことで神奈川県の西半分を指す。
今回は厚木市などが震源地に近かったようである。
厚木方面は内陸なのでしょっちゅうというわけではないが、相模川の堤防の上を遡る場合のわがパトロールエリア内ということになる。
なんという身近さ。
そんな情緒的なことはさておき、このエリアは以前から"巨大地震の巣"と目されてきた地域で、フィリピン海プレートや北米プレートなどのプレート境界に当たり、古くは1703年の元禄地震、1923年には関東大地震を引き起こしてきた「相模トラフ」が横たわっている。
それゆえ歴史上このエリアで起きた巨大地震を総称して「相模トラフ巨大地震」と呼んでいる。
関東大地震から101年。新たな大地震のまさか余震じゃあるまいな…
西で南海トラフ巨大地震、東で相模トラフ巨大地震が襲う…なんてSFまがいのことが同時期に起きてしまったら…
人口が稠密する太平洋岸の各都市は壊滅的な被害を被ることは明らか。そうなれば日本列島沈没級の大惨事で日本は世界の最貧国に転がり落ちる。
そういう縁起でもないことを想起させる足元の揺れだったといっていい。
とにかく歴史を遡れば大地震は必ず起きている。
今の時代が例外であるはずがない。
できることは備えること。それしかないだろう。
わが身に照らせば、とりあえず1週間は湘南海岸自転車道のパトロールは自粛だ。
コース沿いの沿岸部は小山もないまっ平らなエリアである。
津波に襲われたら…