昨日の夕餉のこと、体長29cmもある見目麗しきサンマがこんがりと焼かれて目の前に出された。
作法通りに大根おろしが添えてあり、大分出身のご近所さんからいただいたカボスもついている。
ホンの4、5年前までは秋風が吹き始めると岩手県に暮らす友人がトロ箱に入ったサンマをごっそり送ってくれて、消費するのに嬉しい悲鳴を上げていたっけ。
その当たり前がパタッと途絶えてサンマは高級魚となり、年に一度口に出来ればいい方…の存在になってしまった。
今年も「サンマ漁が好調」などというニュースを耳にした覚えはないし、徳島の友人から名産のスダチが届きはしても、もっぱら焼酎に絞り入れるだけで、焼き立てのサンマが無いものだから宝の持ち腐れになっている。
そんなわけで、「サンマが食べたい」などとは敵わぬ夢も同然と思っていたところだったので、目の前に出されたびっくりしたのだった。
尖った口の先から尾びれの先まで29cmある。
魚体はややスマートで細身ではあるが、痩せているというわけではなく、言葉で表現すれば冒頭に示したように「見目麗し」ということになる立派な奴である。
おまけに…というか、ここが肝心なのだが、脂がそこそこに乗っていて、サンマサンマしていてとてもオイシイ♪
はらわたもきれいで、こいつもたっぷりのダイコンおろしとともに口に入れ、ほろ苦さを楽しませてもらった♪
どこで手に入れてきたのか聞くと、生協だという。
北海道産で1尾298円だったそうだから、まぁ数年前に比べたら考えられない値段だが、現状を考えればこれはもうお値打ちと言っていいのではないか?
まぁ、正直言えば、今年もサンマはあきらめていただけに、思わぬ形で口にできた喜びは案外大きく、満足した。
やっぱり日本人には焼いたサンマは欠かせない♪
ただ願わくば、一度に4~5尾食べたいものだ。
それが出来る食べ方が三陸のサンマ漁師たちの間に伝わっていて、ボクもそれが好物なのだが、一度に一人当たり4~5尾ものサンマを手に入れることが難しくなった今、幻の料理となってしまっているのが悲しい。
その食べ方というのが…
皮の部分だけフライパンで軽く焦げ目をつけ、直ぐにフライパンから出して一気に冷水にとって冷やし、水けをぬぐったら冷蔵庫に15分くらい寝かせた後、大葉やらミョウガ、ショウガ、ネギ…などなどの薬味野菜を細かく刻んで並べた上に置き、さらに上からも同じ薬味野菜をたっぷりかけて、酒とみりんで作ったタレをかけまわして食すのである。
船上で戦場のように忙しく立ち働く漁師がササッと食事をするのに、これほどうってつけの食べ方は無いそうで、一度にたくさん食べられるうえに美味しく、ご飯のおかずにピッタリなんだそう。
ご飯だけじゃなくて、酒の肴にもぴったりで、あ~っ、思い出しながら書くだけでよだれがにじみ出て来た。
くぅ~っ、食べたいっ!
夕空の土星に秋刀魚焼く匂い 川端茅舎
遠方の雲に暑を置き青さんま 飯田龍太
さんま焼くや煙突の影のびる頃 寺山修司
体長29cm 脂の乗った初サンマ♪ 大根おろしと大分産カボスを添えて
岩手の友人がトロ箱で送ってくれていたころは、この皿からはみ出す大きさのサンマばかりだったけれど…