それにしても下手くそだった。
ちゃんと最初から最後まで鳴けないんだ。
それどころか、森の中にたたずんでいた30~40分の間に聞こえたのはたった2回…
結局この日は待てど暮らせどそれっきり。
ついにホォ~ホケキョ~♪は聞き洩らした。
それでも、森の奥から聞こえてきた美声は相変わらずで、最初に単発ながら「ホォ~」と澄み切った高い音が森の中にこだました時は胸が高鳴るとともに、思わず立ち止まって聞き耳を立てたほどだった。
それからややあって「ケキョッ…」というお馴染みのフレーズが出て(といってもぎこちないことこの上なかったが…)、「あぁ、やっぱりウグイスだった」と、なんだかホッとした気分になった。
ホッとした…というのは、去年は2月21日、一昨年は18日に初音を聞いているのに今年は10日余り遅れていて、まだかまだかと待ちわびていたのになかなか聞くことが出来なかったためである。
例年になく寒かったのがウグイスにも伝わって、子育ての準備どころではなかったのかもしれないが、このところ暖かい日が続いたのでそろそろだろうとは思っていた。
時刻は午後2時半過ぎ。
1日の内で最も気温が高くなる時間帯で、昨日は雲の多い1日だったが15℃を超えていて、鳴き声を聞いた時は雲間から日が降り注いで森の中を明るくしてもいたのだ。
ただあの下手くそさはご愛嬌で、何せ「ホォ~ホケキョ~」と通しで鳴けないのだから、多分、初鳴きの、それも正真正銘初めて鳴いた第一声中の最初に上げた今シーズン口切りの鳴き声だったのかもしれない。
絶対そうに違いない。
だからあんなに下手くそなんだろう。
ただ想像してみるといい。
きっと、胸いっぱいに空気を吸い込んで、それから小さな口を精いっぱい大きく明けて今シーズン初めてのフレーズを口にしたんだと思う。
かの与謝蕪村も詠んでいる。
「鶯の啼くや小さき口あいて」と。
最初のひと鳴きがたどたどしく上手に行かなかったとしても、その方がかえって初々しさが際立って、ボクには好ましく感じられるね♪
これからはいたるところであの美しい鳴き声が聞けることになる。
春告鳥が鳴き始めたからには、いよいよ本物の春が足音高くやって来る♪
ウグイスの初音がこだました近所の池と森の公園