平方録

早春の奥羽路を行く その3

陸羽東線の堺田駅のすぐ脇、圧倒されるような高さではないが雪を被った山々に四方を囲まれた真っ平らな土地があり、その一角にそれはあった。「えっ、こんなところに!」

画面上の小さな流れがこの場所で右と左に分かれるところ…


右に流れる水は116.2キロを下って旧北上川として宮城県石巻市から太平洋へ注ぎ、左に流れ出た水は102.6キロを下って最上川となって山形県酒田市から日本海の水となる




地上に降った雨が太平洋の水になるか、それとも日本海の水となるか、その分かれ目のところを大分水界と言うのだそうだ。高い山の尾根筋にあるのが大分水嶺と呼ばれ、ボクらの耳にも馴染みのある名だが、ここ山形県最上町では人々が暮らすどこにでもあるような平地にそれが存在するという珍しい場所なのだ。
この上方の小さな流れをたどってきた水が合流地点の真ん中に存在する故意か偶然か判別のつき難い小さな石にぶつかって右と左に別れていくさまを眺めていると、不思議な気分に包まれる


この分水界のすぐ近くには芭蕉が奥の細道紀行で残した「蚤虱 馬の尿(ばり)する 枕もと」を詠んだ「封人の家」がそっくりそのまま国指定の重要文化財として保存されている。
3月いっぱいは休館中で雪囲いをされて閉まっていたが、もう少し小さくて寒々とした家を想像していたボクには、何だ、こんなに立派な役人の家だったのかと認識を新たにさせられた
古希を迎えてもなお知らないことばかりである


列車がやってきた! 乗り込んだのは画面右端に写っている地元の人らしい男性一人だけ


降りる人はなく、2分ほど止まった後発車していった。駅の時刻表を見ると2〜3時間に1本しか列車はやってこないので、偶然の出来事だった

「汽車は県境を越えたところにある堺田という高原の小駅につくと、しばらく停車した。
がらんとしたホームに降りると、掲示板で、そこは封人(関守)の家が残っている集落だとわかる」
藤沢周平は随筆「山峡の駅」でそう記している


山形市内の友人宅を出て北へ向かって走っていると村山市名取と言うところの田んぼで白鳥の群れを見かけた


落ち穂を拾いもう目前に迫った北帰行に備えているらしい


仲睦まじいこのカップルもまた北へ帰って行く


写真ではよくわからないかもしれないが、この日の宿に向かう途中の山の急斜面で、自生してるネコヤナギが柔らかそうな銀色の芽を膨らませているのを見つけた
野にも山にも春の息吹が届いていて、それを道中の至る所で感じ、東北の雪深いところにも本格的な春の訪れが近づいているのを実感する


今回の旅で2軒目の宿も秘湯。こちらは秋田県湯沢市(旧雄勝町)の鷹の湯温泉の一軒宿。この湯のことはまた改めて…
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