(プレジデントオンライン)
PRESIDENT 2013年12月2日号 掲載
グローバル教育の必要性が叫ばれ、文科省も英語教育の早期化を推進。しかし、日本人が世界で活躍するためには、ほかにも足りないものがある。未来のグローバルリーダーを育てるIGS(Institution for a Global Society)の福原正大代表は、「答えが1つしかない問題ばかり解かせる教育が問題」と指摘する。日本の教育が抱える課題の深層に、田原氏が切り込んだ!
■なぜ日本人は世界で通用しないのか
【田原】福原さんは元銀行マンですが、学習塾を立ち上げた。教育に興味を持ったきっかけは何ですか。
【福原】外資系の金融機関にいたとき、世界レベルのリーダーの中に日本人がまったくいないことに気づいたのです。金融業界のトップは多様です。欧米の人だけでなく、私のいたバークレイズではインド人がナンバーツーを務めていたし、中国人や韓国人もたくさん活躍していました。それに対して日本人はまったく見ない。金融業界だけではありません。産業界で世界標準を決める場面でも日本人が話すことはないし、国際機関においても、日本は出しているお金に比べて人の数が圧倒的に少ない。それはなぜかと考えたときに突き当たったのが、教育でした。
【田原】教育というと、英語教育ですか。
【福原】いや、英語も1つのファクターではありますが、それ以前にリーダーシップ教育が足りていないことを強く感じました。
【田原】G7などの国際会議で、日本の大臣は発言が非常に少ないですね。でも、僕もそれは英語ができないせいじゃないと思う。欧米では発言しない人が馬鹿にされるけど、日本では「正解を言わないとダメ」と教えられるから、正解がないことがあたりまえの国際会議で発言ができなくなってしまう。日本人は、どうも正解にこだわりすぎるところがあるけど、これは教育が原因ですか。
【福原】日本の入試は中学から大学まで、答えは1つであるという前提でつくられています。それに合わせて学校でも、答えがある問題を出して、その解き方を教えています。そういった教育を通して「答えは1つ」と植えつけられているから、答えが出ない現実の問題に対応できない面があるのではないかと。
【田原】僕は小学3年生のときに算数が嫌いになりました。算数の時間に、「円を3等分しろ」という問題を出されたの。みんな普通に3等分してたけど、僕は「違う」と手をあげて、円をやたらに小さく分けました。すると先生から「むちゃくちゃ。こんなのは愚劣だ」と怒られてしまった。でも、この話を広中平祐(数学者。日本人2人目のフィールズ賞受賞者)にしたら、「それは微分のやり方だよ」と言われました。つまり、先生が答えは1つしかないと思い込んでいて、そうではない答えは認められないんです。
【福原】日本では、中学?高校レベルの数学の知識を小学校の算数に持ち込むと怒られる。田原さんの話は、日本の教育の硬直性を示す象徴的な例だと思います。
■日本の教育には「議論」がない
【田原】福原さんはフランスに留学経験がありますが、向こうでは日本のような教え方をしないのですか。
【福原】そうですね。日本人とフランス人のハーフの友人がフランスに転校になり、日本で解いたことのある問題がテストで出たそうです。彼女は日本で習った通りの答えを書いたのですが、結果は0点。彼女の母親が「うちの娘は正しいことを書いている」と抗議にいくと、先生は「この解答には彼女の考え方がまったく入っていない。これでは世界に対する彼女の付加価値がゼロだ」と説明しました。つまりフランスでは、正しい知識を得て終わりではなく、自分が知識を使って世界にどのように貢献するのかということをつねに問われるのです。
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